夕学レポート
2005年12月13日
秋元 康 「秋元流プロデュース論~答えは自分の中にある~」
秋元 康 作詞家 >>講師紹介
講演日時:2005年10月19日(水) PM6:30-PM8:30
『夕学五十講』、2005年後期のトップバッターとして登壇されたのは、作詞家の秋元康氏でした。高校生の頃に、放送作家としてデビューした秋元氏は、「ザ・ベストテン」などの人気番組の制作に携わり、また作詞家としては、美空ひばり『川の流れのように』をはじめとする、数々のヒット曲を生み出してきました。
秋元氏は、長年にわたって大衆の心をつかんできた方だけに、『夕学五十講』を受講されている方の心をたちまち虜にし、最後まで興味の尽きない講演でした。
さて、今回の秋元氏のテーマは「セルフプロデュース」でした。では、「プロデュース」とは何でしょうか。秋元氏は、一言で言えば「客観性」だそうです。たとえば、自分が作りたいものを作るというレストランの料理人は、アーティストです。そこにプロデュースが入ると、そのレストランはどこにあるのか、またどんなお客さんが来てくれるのか、ということを考えます。つまり、お客さんにどうしたら受けるのかという客観的な視点が入るのがプロデュースなのだそうです。
そして、自分自身をプロデュースするのはなかなか難しいと秋元氏は言います。なぜなら、自分の背中は見えないからです。どうしても自分の経験だけで勝負してしまうからです。では、どのように「セルフプロデュース」をやったらいいのでしょうか。秋元氏は、セルフプロデュースがうまく出来るたくさんのヒントを教えてくれたのですが、その中からいくつか紹介します。
ひとつには、「あの何々・・・」と言われるような特徴を持つことです。
秋元氏の行くある日本料理店は、座敷の入り口が低くなっています。最初のうちは注意しているのですが、そのうち、必ず頭をぶつけてしまうそうです。そのため、その店のことが話題に上ると、「あの、頭をぶつける店ね」と言われるようになっています。こうした、ひとつ印象に残る何かがあるというのが大切だそうです。
また、伝えたいことをどう伝えるかというのも重要です。ベストセラーになった「さおだけやはなぜ潰れないのか」という本は、内容は会計の話ですが、タイトルが絶妙でした。秋元氏は、この本が売れた理由について、こんな説明をしてくれました。人参嫌いの人に人参を食べてもらうためには、りんごジュースに人参を入れると食べやすくなります。にんじんがいわば伝えたい内容(会計)で、それをうまく伝えるために、魅力的なネーミングのようなりんごジュース(さおだけ屋・・・)が必要であるということです。
秋元氏は、大衆にうけようとして時代に合わせようとするのはうまくいかないと考えています。流行っているものを後から追うのは、常に遅れてしまうことになるからです。むしろ、自分の信じることをやっていれば、やがて時代がそこに戻ってくるのだそうです。人ごみの中で待ち合わせる時、お互いが動き回っていたのでは出会いにくくなります。自分がじっと待っている方がいいのです。つまり、自分の「軸足」をずらさないということが大切なのだそうです。
情報収集についての秋元氏の考え方も独特です。情報を集めようとして新聞を切り抜き、スクラップブックを作成してもあまり役に立つことはない。むしろ、情報は、街の中にもたくさんあります。そうしたたくさんの情報の中から、自分が面白いと思ったもの、気に入ったものをキャッチするようにすることで、自分の中に情報が自然に溜まっていくものだそうです。そうしておけば、いつかその情報が使える時が来るのです。
同様に、「人脈」も作ろうとして作ることはできないと秋元氏は考えています。面白い人に会って、思わず他の人に紹介したくなる。秋元氏は「人脈はドミノ倒し」であり、自分の一番身近な人が、誰かに紹介してくれて、その人がまた別の人に紹介して・・・というドミノ倒しのような連鎖によって人脈が広がるという説明をしてくれました。そして、そのために重要なことは、自分が魅力的な人間であることなのです!
秋元氏は、秋元流の幸福論についても語ってくれました。その中で最も心に響いたお話は、「冷蔵庫の残りもの」だったように思います。幸福な人は、冷蔵庫の残り物でどんなものが作れるか、という発想をします。不幸な人は、食べたいものがあるのに、この残り物では作れないと考えてしまうのです。つまり、ないものねだりをしてしまっているのです。当講演の副題は「答えは自分の中にある」でしたが、「幸せは自分の中にある」ということなのかもしれません。
そして、幸せになるための具体的な方法として、「日記を書くこと」を受講された方にお勧めされていました。1行でいいので、1日の中で良かったことや印象にのこったことを書く。日記は一日を振り返ることができるということに加えて、日記をつけていることで、なんにもない平凡な日でも、日記に書けるような何かをしようと思うようになる、という効用があるそうです。
わかりやすいお話の中に、実に深い人生論が垣間みえた秋元氏のご講演でした。
主要図書
『“コロンブスの卵”の見つけ方』PHP研究所、2000年
『人生には好きなことしかやる時間がない』青春出版社、2000年
『趣味力』NHK出版(生活人新書)、2003年
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