KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2016年09月13日

『イノベーション思考』Session5-6

白澤 健志

Session5:短時間で発想を跳ばす

セッション5。金曜の夕方、今日も教室に参加者が三々五々、集まってきた。
…と書きたいところだが、実はこの日、急な仕事が入ってしまい、出席できなかった。
しかし慶應MCCでは、欠席者のために当日のセッションを撮影したビデオ補講の機会が用意されている。これは、慶應MCCに足を運んで専用の視聴室で見てもよいし、ウェブを介して自宅等のPCから視聴することもできる。
私は少しでも当日の教室の雰囲気に近づきたいと思い、慶應MCC内でのビデオ補講を受けることにした。

今回、桑畑講師によるウォーミングアップの課題は「スマホの新アプリのアイデアをAP法で発想する」であった。早速、A・Bのグループに分かれて、ホワイトボードを前にディスカッションが始まる。
いつもなら他の参加者とともに脳をヒートアップさせて思考を巡らせるところであるが、さすがに録画ビデオの画面にそこまでのめりこむことはない。見慣れた仲間たちがあれこれ思案する様を、半ば傍観的に見ている自分がいる。といって完全に受け身の「視聴者」の立場という気分でもない。もはや顔なじみの彼らのやり取り、その思考過程は気になるし、なかなかアイデアが出ない様子を見ているとそのモヤモヤした感覚はこちらにも共有されてくる。だから、やり取りの中から不意に絶好のアイデアが飛び出した時には、こちらも画面の中のみんなと同じ笑顔を浮かべてしまう。

続く場面でも、参加者相互のやり取りの面白さ、絶妙さに自然と目が向いた。Leapした思考を生み出す隠し味は仲間とのやり取りではないか、という意味のことを以前のレポートで書いたが、こうしてビデオを見ているとそのことを実感できる。いつもは自分がいるはずの場面をこうして一歩引いて見るのは、新鮮な、発見に満ち溢れた体験であった。

それでもやはり自分があの「笑い」や「驚き」や「達成感」に満ちた輪の中にいない、ということには一抹の淋しさを覚えた。次回は最終回。何としても都合をつけて、あの輪の中に加わるぞという想いを強くして録画視聴を終えた。

 

Session6:Leap思考の実践

前回のレポートはビデオ補講の話に終始してしまい、セッションの中身にはほとんど触れられなかった。以下に概要だけでも記しておきたい。

セッション5では新たに「NM法」が提示された。これは「メタファーから類推する課題解決策検討ツール」である。課題設定後、そこからイメージされるキーワード(動詞と形容詞)を挙げる。ここでいったん本来の課題を忘れ、そのキーワードから「メタファーの探索」をし、さらに「メタファーの背景の探索」をする。そして本来の「課題解決策の発想」を行う。

…うーん、これだけ読んでも何のことかさっぱりわからないだろう。ただ、このプログラムで取り上げられる他の技法と同様、この技法も「ムチャクチャ楽しい」思考ツールであることは保証しておく。なおセッションではNM法のほか、「対極」からNM法を扱う「NM‐AP法」もクチャーされた。
「メタファーやAPを思いつくには経験やセンスが必要。それに対し、敷居が低く間口の広いメソッドとしてNM法とNM-AP法がある」というのがこの日のまとめだった。

さらにセッション5では次のような宿題が出た。
「課題の具体的実現・解決策を、異なる発想ツール(メタファー/AP/NM/NM-AP)を用いて幅広く考えてください。課題毎にA4一枚でまとめ、最終セッション当日までにメールで事務局へ提出すること」
このとき、各参加者には2つずつ課題が与えられた。ひとつは自身のニーズから始まるテーマ、もうひとつは他の参加者(のうちの一名)のニーズに即したテーマだ。前者は当然ながら自分の仕事に関連が深いものだが、後者は自身の仕事とは縁遠いものとなる。

私にあてがわれたテーマは次の2つ。

  • 『差別化された「ロシア観光ツアー」とは?』<白澤のニーズから出発したテーマ>
  • 『ICTで営業の役割はどう変わるか?』<参加者Hさんに即したテーマ>

ここでは後者のHさんのテーマ(『ICTで…』)に対して私が最終的に提出した答え(アイデア)の一部だけでも記してみよう(なぜ前者のテーマのほうのアイデアを記さないかと言えば、それが私にとって大事な商売ネタになりうるからだ。笑)。使用ツールはNM法とNM-AP法。「」内は探索されたメタファー、→以下がそこから発想されたアイデアの例である。

  • 「サーキットブレーカー」→損益分岐点の計算が容易になり価格管理がより動的になる
  • 「冬はホットで夏はアイスで」→季節外れの利用法を募集・精査・周知・提案していく
  • 「跡目争い」→使用中の商品の故障を察知して即座に後継商品を素早く届け売り込む
  • 「夜型生活」→時差のある海外の取引先や消費者が寝ている間の業務代行サービス

どうだろうか。雰囲気だけでも感じてもらえただろうか。
えっ?メタファーから先だけいきなり提示されても何のことかさっぱりわからない?
そうかもしれない。でも、テーマと直に「つながらない」メタファーやアイデアが並んだとすれば、それだけ、この思考ツール(NM法やNM-AP法)が発想をLeapさせることに成功していることの証である、といえるかもしれない。

最終回であるセッション6では、これまで出てきた思考ツールを振り返りながら、演習課題を通じでそれらをもう一回駆使し、グループで思い切り発想をLeapさせまくった。

そして修了証の授与式。桑畑講師から参加者一人一人に大判の修了証が手渡される。この仲間とこの教室でともに知恵を振り絞る機会が終わってしまうのは寂しい。しかし、ここで身につけた思考法によって、それぞれの職場でまだ見ぬ新しいアイデアが次々と生み出されることを想像すると、これからへの期待感のほうが大きい。

「思考ツールの『使い分けと組み合わせ』を工夫し、『恐れずに跳ぶ』こと、そして何よりも『面白がる』こと!」
桑畑講師が最後に発したそんな言葉で、全6日間のプログラムは幕を閉じた。

人は、いくつもの小さな跳躍を積み重ねるうち、思いがけないほどの高みに達しうる。
無限のLeapを繰り返すことによって、いつか自分もそんな高みからの眺望を手に入れられるかもしれない。
そんな予感を与えてくれた、桑畑講師、慶應MCCスタッフ、そして仲間たちに感謝してレポートを了としたい。

 

講座詳細:イノベーション思考』  講師:桑畑 幸博

白澤 健志(しらさわ・たけし)
1969年東京都生まれ。会社員。夕学リフレクションでは、金井真介氏、甲野善紀氏、土井香苗氏、紗幸氏、武田双雲氏、西村佳哲氏、中村和彦氏、遠藤功氏、松本晃氏、川村隆氏、他多数のレビューを担当。

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