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ピックアップレポート

2007年07月10日

情報通信技術を基盤としたe-ケア型社会システムの形成とその応用の融合研究

慶應義塾大学SFC研究所

慶應義塾大学SFC研究所では、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業ハイテク・リサーチ・センター整備事業による私学助成を得て、 2005~2009年度の5カ年計画で、情報通信技術を介護福祉分野に活かし、e-ケア型社会システムの形成とその応用の融合研究を進めます。
本研究は、少子高齢化社会に対応した新たな社会システムの探求であり、看護学・医療福祉工学・情報通信技術をはじめとした先端的基盤技術の積極的な活用を背景に、多様なコミュニケーションによる情報流通を発展させ、個人―個人間、個人―組織間、組織―組織間の相互支援による密接な関係が形成できる情報システムおよびアプリケーションを構築し、それを基に社会が本質的に持つ「ケア力」の向上に関する応用研究を実施するものです。
さらに、形成された「e-ケア型社会システム」を実証的に検証し、本開発システムを広く社会へ展開していくことを目指しています。

1.e-ケア・エンティティに関する研究プロジェクト

<概要>
「e-ケア・エンティティに関する研究プロジェクト」は、本構想で実現を目指す e-ケア型社会システムのうち、その構成要素となる様々な「個」=「エンティティ」を研究対象と位置づけ、社会のケア力向上を目指すためにそれぞれがどのような存在であるべきか、またその環境がどうあるべきかを探求します。
具体的には、高齢者や障害者をはじめとして健康な人々や社会一般に対する広義の「ケア」を対象とし、それに対して医学・看護学などの医療・福祉分野と情報工学や福祉工学のような工学分野を組み合わせた学際的融合研究を目指します。これら複数の領域が密接に影響しあい、相互作用しながら研究を進めることで、それぞれが単独で研究する場合に比べてはるかに高度で有益な結果が得られると期待されています。
例えば、高齢者の加齢に伴う変化に対応した社会システムを創出するジェロンテクノロジー、障害者に対するアダプテーションテクノロジーやバリアフリー・デザイン、看護・介護に用いられる用品のユニバーサル・デザイン、子育てをする母親や家族に対するエンパワーメントと社会がもつ「ケア力の発掘」などがあります。
一方、これらの社会的要素が「e-ケア・エンティティ」として充実し高度化するためには、社会システムとの親和性や整合性について十分な議論と検討、そしてそれに対する具体的な施策が必要となります。たとえば、子育てをする母親や家族に対して様々なコミュニケーションチャネルを与えることは、「助け合いの機会」が増えケア力の向上に繋がることになるが、その反面、情報の信憑性や正確性を確認また取捨選択する能力、プライバシーに対する考慮など、e -ケア・エンティティに課される役割や責任も大きく変化します。そこで、本研究プロジェクトでは、柱としてe-ケア・エンティティの探求を進める一方で、その社会システムとの整合についても総合的な観点で研究を進め、より実践的な具体的な研究とその展開を進めていきます。
初年度は,基礎調査や基礎実験が中心で,研究者が個々に研究テーマを設定して進行中です。
<研究テーマ>
●流産、死産体験者の相互支援に関する研究
流産、死産体験者同士のインターネットを利用した相互支援とエンパワメントを目指す実践的研究を行います。
●e-ケア型社会システムの市民・専門家・施設に関する社会学的調査に関する研究
少子高齢化社会におけるe-ケア型社会における情報通信技術の利用のあり方や実態と課題などについての調査研究を行います。
●看護用具・用品開発に関するケア提供者支援に関する研究
看護用具・用品開発に関するニーズ調査と、それをもとにした用具・用品開発を行います。
●知的障害・自閉症者の健康支援プログラムに関する研究
知的障害や自閉症の人に健康上の問題が発生した際に、受診がスムーズに行えるよう、そのプロセスを支援するシステムの開発と評価を行います。 今年度は歯科受診を取り上げています。
●日常生活における高齢者の情報受容と行動の関係に関する研究
高齢者が日常生活の中で外界からの情報をどのように受け取りそれをどう処理し、行動に結びつけるのか、また、そのプロセスでどう感じるかについて、目の動きや各種生体信号の変化を手がかりにして明らかにします。
●RF-IDを利用した視覚障害者のための生活支援に関する研究
視覚障害者がRF-IDと呼ばれる認証システムやデータベースなどの情報通信技術を利用することによって生活しやすくなり、よりよく生きることを目指す研究を行います。

2.e-ケア・リレーションシップに関する研究プロジェクト

<概要>
e-ケア型社会システムでは、社会の「ケア力」向上には、人と人、人と組織、人と環境などの良好な関係性と信頼、それらを基盤とした断続的な情報の流通(コミュニケーション)が必要不可欠です。そのため、ここでの研究は、「ケア関連情報の流通」、「被ケア者のセルフケアへの介入」「子供と親の関係を形成するペアレンティング・エデュケーション」等の観点から、それらの望ましいあり方を追求します。
本研究プロジェクトでは、個人・組織の間に様々な形で形成される関係に着目、地域看護学・老年看護学・医療情報学・公衆衛生学・情報工学などの観点から、e-ケア型社会形成に必要不可欠となる情報システム・アプリケーションの構築を目指します。
<研究テーマ>
●施設と在宅を結ぶケアシステムの開発に関する研究
病弱な高齢者の日常生活行動活性化をめざした施設と在宅を結ぶケアシステムの開発および施設と在宅間におけるモニタリングシステム開発の可能性を探ります。
●e-ケア・リレーションシップにおける行政と地域社会のガバナンスに関する研究
ガバナンス論的観点から、行政と地域社会の関係形成に関する調査研究を行い、少子高齢化社会における行政と地域社会の新しい関係性の考察と提言を行っていきます。
●子育て体験学習システムに関する研究
子育て体験プログラム案およびインターネットの配信内容案に関する研究を行います。思春期の人々に対して子育て体験学習をどのように情報配信したら良いかを検討し、配信内容を考察していきます。
●地域包括ケアシステムの構築に関する研究
地域に密着したケアシステムのあり方を研究すると同時に、地域に飛び込んで、実際のケア処方と効果を検証していきます。病院、自宅、施設間で必要な介護情報の整備を検討し、施設・病院間、をまたいでも情報が途切れない連携システムのあり方についての提言を行っていきます。

3.e-ケア・インフラストラクチャに関する研究プロジェクト

<概要>
本研究プロジェクトでは、e-ケア型社会システムの実現のために必須となるインフラストラクチャの構築を目指します。
e-ケア型社会システムのインフラストラクチャとは、通信回線やハードウェアといった従来の狭い意味での「情報インフラ」の枠にとどまらず、「情報通信技術を活用した人間生活の支援」を目的とした技術群のことを示します。インターネットを中心としたコンピュータネットワークに関する研究、ユビキタスコンピューティングに関する研究、さらにはこれらの技術を活用した、人間の行動や身体能力の計測に関する研究、社会の基盤であるコミュニティの構築に関する研究、健康な生活を支えるための疾病管理・予防に関する研究などがe-ケア・インフラストラクチャのカバーする領域です。
<研究テーマ>
●インターネットを活用した「健康コミュニティ」づくりに関する研究
健康に関する情報をインターネットを利用して市民へと発信し、長期にわたる健康習慣の改善・維持を実現する「健康コミュニティ」の構築を目指します。
●ユビキタスコンピューティング技術のヘルスケア分野への応用に関する研究
情報家電・携帯型端末・センサなどが遍在する知的コンピューティング環境を活用し、場面に応じたヘルスケア情報の収集と活用のためのスキームを探求していきます。
●電子コミュニティ通貨を利用したヒューマンサービスの活性化に関する研究
インターネットを利用した電子コミュニティ通貨に基づいたコンテンツ配信機構を構築し、育児・介護等のヒューマンサービス分野におけるスキルアップおよびキャリア開発の支援および複数のNPOの連携を支援するシステムの実現を目指します。
●運動モニタリングシステムの開発と応用に関する研究
運動者の動作観察のために用いる加速度センサやジャイロセンサなどの慣性センサを無線化し、簡便にかつ運動者の負担なく長時間の動作観察を行うためのシステムを構築していきます。
●ヘルスケア分野へのインターネットの応用に関する研究
インターネットをヘルスケア分野で利用するためには、セキュリティや堅牢性などを十分に確保しつつ、その一方で利便性を損ねないような配慮が必要となります。本研究では具体的な利用を見越した技術開発と運用を進めていきます。
●一生涯を対象とした健康情報蓄積・流通システムの研究
生まれてから死ぬまで、生涯にわたる健康情報を管理するための分散型の情報管理システムを設計し、それを用いたアプリケーション・サービスを実現していきます。

4.お問い合わせ

本プロジェクトに関するお問い合わせは、
info@e-care-project.jp
までご連絡ください。

慶應義塾大学「e-ケア型社会システム形成」Webサイト より編集転載

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