夕学レポート
2006年05月23日
「我、東大阪を愛す」 青木豊彦さん
「きょうは寄せてもうて、おおきに!」
青木さんは控室に入るなり、満面の笑顔を向けながら手を差し出してくれました。肉厚の大きな手で、それこそ万力のような力強い握手を交わします。
「儲かりまっか」と振ったわけではないのですが、大阪人らしく商売の話題から入ります。「おかげさんで大忙しですわ!」ボーイング社の仕事に触れながら、青木さんは元気一杯に話を進めます。そんなこんなで、あっという間に開始時間がやってきました。
講演は、青木さんが1年前に東大阪宇宙開発協同組合の理事長を解任になった話から始まりました。いきなり自分がクビになった逸話を何のてらいもなく紹介するところが青木社長の真骨頂です。
昨春の夕学で神戸大の加護野忠男先生は、「東大阪の中小製造業には、力のない企業がつぶれる一方で、細胞分裂のように新興企業が発生する健全な競争原理が機能してきた」とお話になりました。一度や二度の失敗が致命傷にならず、技術さえあれば何度でも再チャレンジが出来る許容性が東大阪の特徴だそうです。青木さんもまさにその通りです。組合のトップという調整業務には向かなかったかもしれませんが、東大阪を世界に知らしめるための広告塔として、彼ほどの適任者はいないでしょう。そしてご自身もその重要性を強く認識し、東大阪の素晴らしさを世界に発信するという役割に強固な使命感を感じていることがよく分かりました。
講演の中でも、「まいど一号」プロジェクトは人工衛星を打ち上げることが目的ではなく東大阪の技術を世に知らしめること、東大阪を若い人達が集まる街にすること、誇りをもって紹介できる街にすることが目的だとお話になりました。冒頭で紹介したように、株式会社アオキの商売は、ボーイング社認定工場として順風満帆です。自分が儲かることだけを考えるのであれば、いまのままで十分なはず。あえて大きな夢を描いて周囲を巻き込みながら、時にはそれゆえに軋轢を産みながらも夢を語りつづけるには、何よりも「志」が必要です。それを感じさせてくれる人でした。
また、青木社長がおっしゃった「アホになれる人がいない」という言葉も印象的でした。
全国の地域開発・街おこしの現場には、美しいプランを描く構想家はたくさんいるけれど、無茶を承知で突き進む人が少ないという指摘です。昔から商売には「運・鈍・根」が必要だという戒めもあって、「ばかになれ」「愚直であれ」という意味で使われますが、「アホになれ」というのはちょっとニュアンスが違うような気がします。強いて言えば「突き抜ける」とでも言えばよいのでしょうか。普通の人の間尺に合わないようなことを楽しんでやってしまうスケールの大きさのようなものかもしれません。
青木さんは、正真正銘「突き抜けた人」であることは間違いないようです。
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