KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2006年12月07日

「舟が来たら乗る」 八塩圭子さん

ワタクシゴトで恐縮ですが、土曜日の朝は『めざましどうようび』で八塩さんの顔を拝見することから始まります。
愛犬の散歩から戻ると、八塩さんの修士論文研究通りの計画的・習慣的視聴行動が身についた娘達が、かならず8チャンにスイッチを入れていて、賑やかなメンバーに囲まれて、お姉さん的な仕切りをみせる八塩さんの笑顔を拝見しながら朝食をとるのが毎週の習慣になっています。
とはいえ、きょうの講演を聞くと、爽やかな笑顔の裏では、多忙な一週間乗り切ったうえに、ほぼ徹夜状態で早朝生番組に臨む隠れたご苦労があるということがよく分かりました。きょうの夕学もよくお受けいただいたと感謝しております。
生「八塩圭子」さんは、テレビのままに、いえテレビ以上に素晴らしい女性でした。古い言葉で言えば「八頭身美人」。スラリとした長身に小さな顔がちょんと乗っていて、「さすがテレビの人は違う」という感じです。
さて、そんな八塩さんが「自分で稼いだ金をつぎ込んでつらい思いをするマゾ的生活」を覚悟して、夜間のビジネススクールに進んだ理由は何なのか、そしてそこで得たものは何だったのかをお聞きするのがきょうの夕学でした。


八塩さんのお話を伺って思い浮かんだのは、キャリア論でよく言及される二つの理論です。
ひとつは「トランジッション」という考え方です。
仕事や人生に迷いを感じた時、先行きへの不安や悩みに包まれた時に、いきなり新しい道を選択したり、違うことを始めるのではなく、まずニュートラルな中間の時間を作ることが重要だという考え方です。そのニュートラルな時期に、自分を見つめ直し、内なる声に耳を傾けることで、何を捨てるべきか、何をはじめるべきかが見えてくると言われています。
八塩さんにとって、ビジネススクールはニュートラルな場であったようです。
結果的に在学中にフリーになり、結婚をされてはいますが、仕事と勉強の両立に苦労しながら過ごしたビジネススクール一年目の月日が、ワンクッションとして、自分を見つめ直す時間に相当しました。もし、すぐにフリーになっていたり、留学していたら、その後の選択も違ったものになっていたのかもしれません。
新しい知識や理論に出会えたことや苦労を共有できる多くの仲間達と出会えたことも、自分を相対化し理解する手助けになったともおしゃっていました。
もうひとつは、何度かこのブログでもご紹介したことにある「プランドハップンスタンス(Planned happenstance) 」という理論です。
「計画的偶然性」という固い訳で説明されますが、キャリアの転機の多くは、精緻に練られた計画に基づくのではなく、偶然によってもたらされるという考え方です。
たまにこれを「果報は寝て待て」と同じ意味で理解している人がいますが、似て非なるもので、偶然を引き起こすのは当人による意図的な行動であると考えるところが最も重要な含意です。
後述しますが、講演で語られた八塩さんの「生きるうえでの流儀」のいくつかは、偶然のチャンスを起こす確率を高めるのに必要な意図的な行動に繋がっていたことは、きょうお聴きになった皆さんが気づいたことだと思います。
11月9日の夕学では、神戸大の金井先生が「持論アプローチ」の重要性についてお話されました。

-実務家にとって必要なのは、理論や理屈をそのままの形で丸ごと受け止めることでも、いたずらに実践を繰り返すことでもない。経験をベースにした内省を繰り返すことで、自分なりの「持論(やり方やコツ)」を形成することだ。実践家の持論の多くは、実は実証的な先行理論が存在しているもので、実務家の持論を補強・補完したり、他者に説明したりする時こそ「理論」は役に立つ-

八塩さんの選択と行動は、キャリア論で語られる先行理論が有益であることを、はからずも実証してくれたのかもしれません。
最後に、八塩さんが講演の中で披露してくれた「持論」をいくつかご紹介します。
「壮大な夢を描くのではなく、舟が来たら乗ってみる」
「いつも種をまいておく。やりたいことを公言していれば、いつか誰かに伝わる」

そしてこれは、キャリアウーマンを目指す妻を持つダンナ族へ
「ダンナの協力がなくってもやれる!?(ただし邪魔はするな)」
そうそう、忘れてはいけない種まきも。
「八塩さん、ダンナさんへの夕学依頼もよろしくお願いします!!」

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