KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2007年10月19日

「のめり込める仕事を作ること」 川上真史さん

「ひと言でいうと “もう、どうでもいいよ”という結果がでているのです」
川上真史さんは、ワトソンワイアット社が実施した日・中・韓リーダシップサーベイの結果から、日本の社員のリーダーシップへの期待を、中国、韓国のそれと比較しながら、ショッキングな事実を紹介しました。
川上さんの解釈では、この結果は、大きな期待と現実とのギャップの大きさの裏返しだということです。
リーダーへの期待は、実はもの凄く大きく高い。
しかし、そんな人はほとんどいない。
だから期待しても無駄だろう。
そんな解釈が成り立つそうです。
では、どんなリーダーシップが期待されているのか。
川上さんは、“エンゲージメント”というキーコンセプトを解説されました。
“エンゲージメント”とは、「のめり込み感」とでも言えるものです。楽しくて面白くて仕方ない、思わず我を忘れ、時間が経つのを忘れてしまう、そんな感覚です。
エンゲージメントできるような、仕事を与えてくれる、作ってくれる人。
それが、期待されるリーダーであり、そのために発揮すべきものがリーダーシップであるということです。


“エンゲージメント”が注目される背景には、人間の欲求が、より高い次元に移行していることがあげられるそうです。
何かが欲しい、認めて欲しいといった欠乏動機に基づく欲求から、より自分を成長させたい、プラスアルファを積み上げたいという成長動機への移行です。
欠乏動機を埋めてくれるのは、金銭、地位、賞賛といった外的報酬です。
成長動機に対応するのは、ここでやっている仕事そのものが興味深く、自分の成長につながると実感できるといった内的報酬です。
この内的報酬が重視される環境にあって、リーダーシップは、この成長動機をくすぐり、自分が成長できる仕事、我を忘れて飲める込めるやりがいのある仕事を与えたり、作り上げたり、意味づけたりすることへと質を変えているはずだと川上さんは言います。
では、エンゲージメント=仕事への「のめり込み」はどうすれば生まれるのか。
川上さんは、3つの要素を掲げました。
・自己効力感=自分で達成できたという喜び
この達成は、物理的な概念ではなく、「自分は確かにやった!」と実感できる認知のこと
・ シナジー=他者とのつながり感(異質性)
自分と違ったものを持った人々とのチーム活動(エクスターナルチーム)によって得られる
・ プライベート
心の奥に憂いがあっては、仕事に邁進することは難しい
リーダーは、上記の3つの要素を提供し、気配りすることが求められます。
「仕事を作る、意味づける」ことについては、前述通りですが、シナジー、プライベートに対応するためには、ダイバーシティやワークライフバランスが必要になります。
これまで夕学では、ダイバーシティについて、谷口真美先生内永ゆか子さんらお話になりました。
いずれも「ダイバーシティは、ヒューマニズムで理解するのではなく、企業のパフォーマンス向上を目的にした戦略的な取り組みである」というのが論旨でした。
これに、付け加えるとすれば、企業のパフォーマンス向上の前提として、個人のパフォーマンス向上にもつながるはずだという視点かもしれません。
川上さんの提唱される「新時代のリーダーシップ」
スケールの大きな提言だけに、1時間半の夕学では、全体像をさらりとなぞることしかできません。
じっくりと考えてみたいという方には、下記のプログラムもありますので、是非ご検討ください。
慶應MCCプログラム「個を活かす人材マネジメント」

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