夕学レポート
2009年01月08日
半藤一利氏 『幕末史』
昨年の3月から12回に渡って開催した夕学プレミアム半藤一利史観『海舟がみた幕末・明治』の講義が本になりました。
『幕末史』新潮社
半藤さんの人柄が滲み出るような言い回しまで、そのまま紙上に再現されていて、講義を思い出しながら、一気に読ませていただきました。
今回の講義=この本の主旨は、幕末~明治の歴史を語る時に、暗黙の前提として刷り込まれている「薩長史観」に一石を投じ、「反薩長史観」で歴史を読み解こうということでした。明治維新などと言うと、聞こえは良いが、その実態は、薩長による「哲学なき暴力革命」で、新しい国を作ろうなどという高邁な理想は誰一人として有してはいなかった、と半藤さんは喝破しています。
東京生まれで、長岡に疎開し、高校までを過ごした半藤さんならではの視点ですが、けっして親幕府に偏った歴史観というわけではなく、極めてニュートラルな内容です。孝明天皇毒殺説、坂本龍馬暗殺説などにも、「自分はこう思う」という見解をきちと明言されていて、歴史学者には、けっして書けない分かり易い内容です。
日本の近代史全般について造詣が深く、大ベストセラー『昭和史』も著した半藤先生にとっては、日本を軍事国家に引きずり込む引力のような働きをした「皇国史観」や「統帥権問題」が、なぜ、どのように生まれたのかを語りたいという意志もおありだったようです。
近代日本の国づくりのための思想的な基軸に天皇を据えようという明確な意思が登場するのはもう少し先のこと、統帥権については、山県有朋によってその萌芽が生まれ始めた、というところでこの本は終わっています。
その続きをぜひ、ぜひぜひ聞きたい&読みたいと思います。
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