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夕学レポート

2009年11月13日

正しい努力を積み重ねる! 小宮一慶さん

15社の経営顧問と200回/年の講演をこなし、年に4~5冊の本を出しているスーパーコンサルタントの小宮一慶さん。
きっと何かの極意を身につけているはずである。それは何かを考えてみる。
小宮さんの言葉を借りていえば、「正しい努力を、積み重ねていること」ではないか。
「普遍の真理・原理を、繰り返し説くこと」とも言えるかも知れない。
シンプルで分かり易い。それでいて深い。聴く人の言葉で、時代の文脈に載せて伝えてくれる講演であった。
予定を15分オーバーした1時間45分の講演であったが、講演内容は、『社長力養成講座』の冒頭33ページ分、取り上げたテーマは「3つ」であった。
文字を目と頭で追うだけであれば10分で済むコンテンツでありながら、2時間の講演で満腹に近い満足感を与えることができる。
これも小宮さんの言葉を借りれば「頭で理解するのではなく、ハートで受け止める」講演であった証左であろう。
2時間の講演で、人間がハートで受け止め、持ち帰ることができる内容は「3つ」が限界であることを見極めているとも言える。


さて、「頭で理解している」というご批判を受けることは覚悟しながら、あえて講演内容を整理すると下記のようになる。
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経営とは、
1)企業の方向付けをして、
2)資源の最適配分を行い、
3)人を動かすことである。
なかでも重要なことは、「方向付け」であり、そのためには「お客さま志向」を徹底することが不可欠である。
社内の会議で「お客さま」と呼んでいるか、お客さまからの電話を「会議中」という理由で断っていないか、そんな基本行動を徹底することで「お客さま志向」は浸透していくものだ。
さらには、お客さまの背後にある経済動向を見極めること重要である。
そのためには「毎日、新聞に目を通すこと、しかも前から順番に読んでいくこと」が一番であろう。新聞は、世の中の人に知って欲しいことの順に並んでいるという原理がある。
加えるならば、日々の生活の中で、観察力を高める工夫も必要だろう。
「7-ELEVEn」のロゴの最後のnが小文字であることを知っているだろうか。
「ローソン」の看板の下にはどんな文字が書かれているか知っているだろうか。
無意識に見過ごしているものに注意を向けることから、観察は始まる。
観察力とセットになるが、仮説を持って物事を見ることも重要である。
はじめての会社を訪問するとき、お店の良し悪しを判断するとき「お客さま本位であれば、こうであるはずだ」という仮説を持つと見えてくるものがある。
「御社のメインクライアントはどこですか」という質問に、「○○社さま」ですと言うか、「○○です」と呼び捨てるかで会社の姿勢はすぐにわかる。
「御社のビジョンは何ですか」という問いに、手帳をめくって答えるようであれば、企業目的の共有化は難しい。
仕事はお金を稼ぐ手段ではない。よい仕事をした結果としてお金が入るだけだ。
目的と手段を混同するから、おかしなことが起きる。
イチローの姿勢に学ぶことは大いにあるのではないか。彼は結果を求めているのではない、自らが理想とするプレーを追究する結果が数字になっているだけである。
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小宮さんのキャリアを見ると、「何かを探しながら」さまざまな道を試してきたことがわかる。
米国の一流大学でMBAを取得し、バンカーとしてM&A業務に従事、UNTACでカンボジアに滞在し、福祉の仕事もしている。
世界の知的エリートと交流し、国際紛争のドロ沼を身体で体験し、介護・福祉の現場も見ている。
さまざまな世界を歩きながら、あらゆる人間社会で通用する「原理」を掴んできたのではないだろうか。
それは企業経営という小さな世界であっても、ど真ん中を貫く普遍原理でもあった。

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