夕学レポート
2010年09月18日
「論語」に興味があれば「大学」から
「論語」がブームだと言われている
アマゾンで「論語」をキーワードにして検索すると、なんと1339冊がヒットした。その中で、岩波文庫の『論語』(金谷治著)や渋沢栄一の『論語と算盤』といったロングセラーや、渡邊美樹氏(ワタミ社長)や斎藤孝(明治大教授)などのビッグネームの書いた論語本を抑えて、売れ行きNo1に座るのが田口佳史先生の『論語の一言』である。(2010年9/17現在)
何度かこのブログでもご紹介したが、昨年秋MCCで開催した田口先生の講義を書籍化したのが、この本である。
夕学プレミアムagora 田口佳史さんに問う【論語に学ぶ人間力】
今春は、田口先生に「老子・荘子」を講義していただき、こちらも書籍化が進んでいるが、第三弾の今秋は、『大学』を取り上げる。
夕学プレミアムagora 田口佳史さんに問う中国古典【大学の道】
「大学」と聞いてお分かりになる方は、教養人といってよい。論語や孔子、孟子の名前はほとんどの方がご存じだろうが、「大学」を知っている方は多くはいない。私も2年前までは知らなかった。
『論語』を含む「四書五経」と呼ばれるものが、儒家思想の基本教典である。かの有名な科挙の試験も、「四書五経」から出題された(四書全部と五経から一つを選択)。
『大学』は、四書のうちの入門編とされ、その後論語、中庸、孟子と進んでいくのが通常だったという。
入門編とはいえ、簡単というわけではなく、他の書に比して短いだけある。言わば、儒家思想のエッセンスを凝縮したモルトウィスキーのようなものだ。
田口先生によれば、『大学』の魅力は、その汎用性にあるとのこと。
いくつになっても、誰が読んでも深く学ぶことができる。
江戸期の人々は、町の寺子屋に入ったばかりの七歳の童も読めば、昌平坂学問所(幕府直轄の教学機関、その系譜は東京大学文学部へ連なる)に学ぶ当時の知的エリート集団の教材でもあった。その総長を務めた佐藤一斎(江戸期を代表する儒学者)も座右の書として繰り返し読んだと聞く。
現代でいえば、小学校一年生から東大総長までもが読む、恐るべき教典であった。
普遍の原理というのは、誰が、いつ読んでも、その人が直面する問題に応じた示唆や気づきを与えてくれる力強さがある。
『大学』は、その最たるものといえるだろう。
「論語」や「孔子・荘子」は、長文ゆえに、6回の講座では、その抜粋を学ぶことしかできなかったが、『大学』は、6回で一冊丸ごと学ぶことができる。
『論語の一言』がヒットしている所以も、田口先生の恐るべき汎用的対応力にあると思う。
大企業の社長にも、シリコンバレーのIT技術者(外国人)にも、教師を目指す若者にも、政治家にも、小学生にも、どんな人の、どんな質問・疑問に対しても、中国古典の教えを繙きながら、相手の状況に応じた言葉と文脈で語り説くことが出来る。
田口さん自身が、中国古典における『大学』的存在と言えるのかもしれない。
上質のシングルモルトをじっくりと味わうように、噛みしめながら中国古典を読み、考えてみたい方に、是非お奨めしたい。
夕学プレミアムagora 田口佳史さんに問う中国古典【大学の道】
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