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夕学レポート

2016年05月02日

なぜあの人はプロと呼ばれるのか 山根 節先生

moto_takashi_yamane.jpg プロフェッショナルに求められる条件とは3つあり、それらは(1)体系的理論の素養、(2)教育訓練により蓄積した経験値、(3)高邁な理念である。そして、経営には経営戦略が必要であると山根 節先生は説く。
 早稲田大学ビジネススクールの山根先生は多くの経営者との交流や、コンサルタントとしての実務を踏まえた経営に関する経験に基づき、先生がプロ経営者と思う8人の経営者のうち、選りすぐりの4人の実績を紹介してくれた。


 その4人とは、ソフトバンクグループ株式会社代表取締役社長の孫正義氏、元LIXILグループ代表取締役社長兼CEOの藤森義明氏、元株式会社ローソン取締役会長の新浪剛史氏、伊藤忠商事取締役社長の岡藤正広氏。
 例えば、孫氏であれば、「IT革命のインフラの提供者」になるという理念をソフトバンク創業当初から一貫して掲げてきた。そして、IT市場の発展に欠かせないベンチャー企業にインフラとなる資金を提供し、教育することで、革命を推進してきた。
 LIXILを取り巻く建材・住宅関連業界は35ものサブコンが入り乱れる多重構造。この効率化を目指して4社が合併してできた大連合会社がLIXILである。業界のダブつきを打破するため、慣習の異なる4社の統合後の運営を任されたのがGEでPMI(Post Merger Integration)の豊富な経験を積んだ藤森氏である。彼の戦略は女性や海外子会社の役員をLIXIL全体の重要なポジションに抜擢する等の大胆人事で社員の出身会社の文化をリセットし、共有文化を再構築することであった。
 三菱商事での実務とハーバードビジネススクールでの吸収を通じて経営のノウハウを身に着けた新浪氏は、ローソンの経営に手を挙げる。セブンイレブンの戦略に自社の戦略の答えを求めた操業当初の自身の経営に反省し一転。ローソン独自の挑戦を支援する「やってみなはれ」の精神を賞賛するようになり、株価の向上に寄与した。
 同じく商社の岡藤氏は「わかりやすく、人の記憶に残るようにせなあかん」を経営理念の一つとして、数多くの戦略を標語化して社員に伝えてきた。自身が二度大病を患った経験から酒は1種類、飲み会は1次会まで、午後10時にはお開きという「110運動」や朝型勤務を推進してきた。
 山根先生のプロ経営者像は確かにこの4人に当てはまる。彼らには理論、経験値、理念が備わっており、戦略があるのだ。日本の経営層にはこのようなプロ意識を持っている人が増えているのだろう。いち会社員として、やはり理念や自身の戦略がある経営者にはついていこうと思う。
 さらに私は、より下級の管理職層や平社員の間にも少しずつ増加しているのではないかと思う。「プロ経営者」が増加しているとすればそれは、年功序列で終身雇用であった日本社会の変革がまずは現在のプロ経営者から始まったことにすぎないのではないか。理論、経験値、理念、戦略は、社員であっても各個人の与えられた裁量の中で大切にすべき価値観にするとよいと思う。社員一人ひとりが、高い視座に立ち、与えられたミッションの背景や企業の業界構造を理論的に理解し、苦労してかき集めた経験に基づく判断を、自分が大切にする理念に基づき下していくことで企業に貢献していく社会が来るような気がする。
 目の前の仕事に追われないゴールデンウィーク中くらいは、自分だったらどんな行動をとるか、プロ経営者の気分で考えてみようと思う。

沙織

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