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夕学レポート

2016年07月04日

科学の伝道師 鎌田浩毅先生

photo_instructor_810.jpg赤のストライプのジャケットを纏い登場した鎌田浩毅先生は、開口一番こうおっしゃった。「これはマグマの赤です」。一瞬で火山学者であると、みんなに理解してもらうための工夫である。
今回は「日本列島に迫り来る火山と地震の危機」という演題であったが、さらに「人を動かす」というテーマについてもかなり時間を割いてお話ししてくださった。その中でも、特に興味深かった話と、現在私自身が直面し、解決したい問題と絡めて紹介していく。

3.11は99%予測出来ていた

この言葉を聴いた瞬間、「マジかよ」と思った。なんで教えてくれなかったのよと。鎌田先生によると、「過去は未来を解くカギ」であり、歴史を紐解くと、ある程度は予測可能である。例えば、次のように分析する。


2011年3月11日の東日本大震災を、869年の貞観地震に当てはめてみる。この地震も東北沖で起きており、マグニチュードは9、東日本大震災に近い地震である。この事実は『日本三代実録』で確認できる。その後、関東では878年に相模・武蔵地震というものが起きた。と、ここまで読んでお気づきだろうか?えーっと、2011年が869年に当てはめるから、その9年後ということで、2020年に地震が起こるという予測になる。オリンピックイヤーに首都直下地震なんて、考えるだけでも恐ろしい。

西日本大震災

さて、怖い話をもうひとつ。先生は、2035年(±5年)に「西日本大震災」が起こると予測していると話してくれた。もうちょっと厳密に言うと「南海トラフ巨大地震」である。この地震の被害は、死者32万人(東日本大震災は死者2万人弱)、経済被害220兆円~300、400兆円ともいう経済学者もいる。なんせ、静岡から宮崎までの太平洋ベルト地帯が津波被害にあうのだ。今から約20年後のことである。自分はいくつになっているだろうか。どんな生活をしているだろうか。家族はいるか。
「ぜひ、2035年を手帳に書いてください。そして、まわりの人に教えてあげてください」と鎌田先生はおっしゃった。うーん、まさか地震予測から自分の将来を考えるなんて、思ってもみなかった。新しい視点である。

科学の伝道師として

大学生として授業を受けていると、教授によって講義のスタイルの違いに気づく。例えば、板書する先生、しない先生がいる。しかし、これは昔からのスタイルで、現在の主流はパワポである。こないだなんて、スライドの調子が悪くて休講になり、おいおいこっちは授業料払ってるんだから、クラシカルでもいいからやってよ(ボソッ)と思った。
まぁ、私の話はどうでもよいとして、鎌田先生は、パワポを使わずに紙に直接書き込めるようにしている。そこには「伝えると伝わるは違う」「目の前にいる人に伝えることが大事」という気持ちがある。
例えば、鎌倉仏教の一遍という僧侶は、「南無阿弥陀仏を唱えましょう」と、様々な地域に行き、言葉で伝えた。決してパワポは使っていない。相手に伝わるには、このライブ感が大事であり、伝道師としての役割を強く意識しているそうだ。後半の質問タイムで「普段はどんな防災対策をしていますか?」と聞かれて、「目の前の人に地震が起こる可能性、地震の恐ろしさを伝えることが一番の防災対策です」と答えていらして、なるほどと思った。おかげで今回の講演でも伝わることが多く、この原稿も滞ることなくスムーズに書けているので、ホント感謝している。

相手の関心に関心を持つ

ここで間違えてはいけないのは「相手に関心を持つ」のではなく、「相手の関心に関心を持つ」ということである。現在、京都大学で名物教授である鎌田先生も、最初から人気だったわけではない。冒頭に書いたファッションもそうだし、講義に多くの工夫を凝らして現在がある。
一番初めの講義にはだいたい400人もの学生が参加するが、次には200人に減少する(これを半減期と呼ぶそう)。そこで始めたのが質問シートをあらかじめ配布しておいて、授業の途中で回収していくやり方だ。この方法は、今回の講演でも取り入れられていて、2時間の講演時間の中、1時間は講義、もう1時間は質疑応答に時間を割いて頂いた。
この質問シートを読むことで、学生たちの関心が何かわかる。根本には「相手にどうやって動いてもらうか」という鎌田先生にとっての課題がある。そして、これは私にとっても課題であるし、多くの人にとっても同じであると思う。そして、この質問シートはさっそく使ってみようと思った。
 
しかし、残念なことに、私が書いた以下の質問は、読み上げられませんでした…
質問:大学生はおとなしく、授業中に質問もしなければ、自分で考え主体的に動くということが難しいようです。彼らを動かすにはいったいどうしたらよいでしょうか?
鎌田先生へ、これを読んだら、ぜひお返事ください。かなり困っています。

ほり屋飯盛

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