KEIO MCC

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夕学レポート

2017年04月18日

サテライト会場からのご質問に安部さんからお返事が届きました

安部修仁さんの講演での質疑応答において、時間の関係で読み上げられなかったサテライト会場からのご質問に、安部さんから当日お返事できなかったことへのお詫びとお返事が届きました。
このリフレクションの場を借りて、サテライト会場からいただいた7件のご質問と、それにたいする安部さんのお返事を掲載いたします。ぜひご覧ください。


Ⅰ 伊丹でお聴きのMさんから
(質問) 
急成期の星と言われた人材の資質(スピード感、レスポンスの良さ、ハードワークに対応できるマンパワー)と、現在~未来の星と思われる人材の素質に違いはありますか?
前者は軍隊的な感じがして現代的には失格者続出するように思えます。私は完全にアウトです。閃きや発想はスピード感と反比例するときに開花すると思うのが持論です。
「早い・安い・うまい」の次は何でしょう?
(返事)
(1)昔と今と基本的な違いはありません。店や工場の現場に於ける、日々のルーティンワークは標準化されたやり方取り決めへの遵守性が求められます。 
①お客様は、いつもの味・いつものサービスを求められるので、それにお応えすることが第一義です。
②無駄を発生させない最も合理的と思われる手法が、今のやり方。という前提に立っています(これも日進月歩で改善には不断の努力を続けなければなりませんが)。
つまり「お客様の為に」「利益向上」の為に、一人一人のその場アイデアでの創意工夫の刹那的実践は、お客様も会社も迷惑なことになります。「本来の味の再現性」「本来のサービスの実践」こそが望まれることだからです。その上で、新しいマーケットの創造(顧客創造=利用動機や利用シーンの創造)の為に、専門機関の商品開発部や業態開発部が活動し、現場からの新しいアイデアを吸収する「改善提案委員会」や「改善提案報奨制度」等があります。
よって、軍隊的というネガティブな響きとは別に、昔も現代も我々の理念である《FOR THE PEOPLE》の理念や精神を共有できる人とそうでない人は居るので、共有できずに、かつ人に教えられたり命じられるのは嫌だと思う人は、自営で個人的に仕事をするのが幸せだと思います。
(2)元来、優れた閃きや発想は、過ぎるほど充分な基本と溢れるほどの蓄積の上に、頭が痺れるほど考え抜いた末にフッと現れます。  
時間との関係で言うと、無期限の中で思考するより、期限の制限があったほうが頭は高速回転して働くと思われます。革新的なことや、緊急対応等をやりきった後、解ることは、普段は如何に「細胞を眠らせてるか、活用させてないか」が解ります。殆どの人が、殆どの時間サボっています。自らのポテンシャルを活かしていません。自らの反省です。
(3)「うまい・安い・早い」は吉野家にとっては普遍的価値の3要素ですから、変わりません。
ただ、時代と共に3要素の優先順位やシェア配分は変わりますし、商品やサービススタイルに伴いながら店造りデザイン機材等の道具立ては変わります。
因みに、弊社のうまい・安い・早いは、提供バリュウを言ってるに留まらない、仕事の仕方/進め方の教えでもあります。
・うまい=正しくクオリティの高い出来栄えを求めなさい。
・安い=ムダを慎み、最も合理的な手法を突き詰めなさい。
・早い=スピーディに 手際良く進め、時間を惜しみなさい。
 
Ⅱ 伊丹でお聴きの(無記名)の方から
(質問)
できる社員は放っておいてもできる。できない社員を引き上げてレベルを合わせることを求める会社の考えはどう思われますか?
(返事)
賛成です、同感です。
特に、部下への技能訓練レベルは、如何に自分のレベルまで引き上げるか、が第一目標です。したがって、あらゆる組織は「長の人格/能力を超えることはできない」、だから、自らを啓発し成長し続けないと部下と組織は成長しなくなります。
Ⅲ 伊丹でお聴きのKさんから
(質問)
「経営チーム層」の人材がリスクテイクを行い、失敗した場合、その対処方法や評価はどうされるのですか?
(返事)
失敗した人の、その後の評価は落ちます。が、降格することはありません。
善意の失敗(挑戦)は許されます。但し、自らの責を認め、原因をしっかり分析することが学習効果として次に繋がりますので、ここが大事です。基本的に、人は失敗する動物です。ただ、第一感は、他人のせいにします。第二感は、運が悪かったと思います。
その後、第三感に辿り着く人は、自分に原因を帰結させます(自分があの時こうしとけば)。これが糧になる失敗の学習効果です。
問題を起こすことは問題ではありません。問題は、①放置すること②他人のせいにすること③隠ぺいすること、が悪なのです。
成功者は、誰よりも失敗の数は多いはずです。誰よりもチャレンジしてるからです(確率的に数は多くなる)。その結果、例えば医者でいうと、沢山の症例を重ねた結果「名医」になるのです。病理原因を正しくつきとめる、よって正しい治療を施せる。だから影響の小さい若いうちに沢山失敗も重ねて、沢山落ち込んで反省もして、年齢を重ねて重要な仕事を任されたときにパフォーマンスを発揮して、大きな成功が期待でき、失敗は未然に防ぐ(或いは極小化)ができます。
勝負は55歳からです。その為に40代があり、その為の30代があり20代があると思いましょう。
Ⅳ 伊丹でお聴きのUさんから
(質問)
お客様個別のニーズを短時間のオペレーションに反映させる事とサービスの均一化は矛盾しないのか?
そのような職人技をなぜアルバイトができるのか?
(返事)
(1)メニュー的に表現すると、日常のルーティンは常連さん(ヘビーユーザー)の既存定番メニューですから、いつもの味とサービスを期待通りに提供することです。
(2)新しい顧客ニーズに応える為に(新しいマーケットを創造する為に)新商品を開発する。
新商品も、その後「価値」を高めていく為に、派生する問題解決や改善向上を継続することでオリジナリティのある価値が産まれる。
(3)職人芸にならないように、仕組みを「標準化・単純化・専門化」という3S主義の技術と訓練を欠かさず、教育訓練システムとします。
Ⅴ 岡山でお聴きのIさんから
(質問)
牛丼のチェーン店の中で競合他社があると思いますが、他との差別化を図るために大切にしている事があれば教えてください。
(返事)
牛丼チェーンの他社を意識して、何かをやることはありません。
他社は、吉野家がやると、新商品であれ価格であれ、すぐ真似たり追随されるところがありますが、弊社は、マーケット(即ち、お客様)と向き合い、何を求めておられるか、どーゆー期待をお持ちか、に応え続けるのが、全てです。
その意味で、リーディングカンパニーと自負するところです。規模の大きさ以上に牽引者でありたい、イノベーターでありたいと思っています。
Ⅵ 岡山でお聴きのSさんから
(質問)
人口が減り、需要が減る時代の中でどういう対策をしたらいいと思いますか?
(返事)
①継続して事業を営んでいるところと、②今から起業するところとで、問題意識は異なりますが、①それなりの歴史と規模をお持ちのところの現業でみると、共通して抱える点は「オーバースペックの是正」があるかもしれません。かつての適正規模からは、時代とともに、市場は停滞しつつサプライサイドは拡大し、オーバーサプライ/オーバーストア現象は様々な分野で起こっています。その為の対策の一つは 自社のオーバースペックを身の丈にアジャストしなければなりません。
つまり、損益分岐点を低くする「構造改革」が必要です。レイオフを伴うリストラをやろうという事ではなく適正規模や適正スペックを理論的に企画して、カテゴリー別に、いつまでに収斂させるかを画き、3年計画、5年計画、物によっては10年計画かもしれないが、それはディフェンシブな押さえとして、必要です。
一方でオフェンシブな、活性プランも必須ですし、そのチャンスは、どこも、いつでも潜在してあります。この後も、業界ごとの勢力分布は、変わり続けることでしょう。
それは②の起業するところと同じマインドにたって 新しいマーケット創造への情熱と、あきらめない執着心さえあれば、技術や才能は、後からどうにでもなる筈です。
それらが、マクロマーケット変化への適応と、成長への挑戦だと思います。
Ⅶ 大阪でお聴きのKさんから
(質問)
リーダー候補となる人材は、「持ちうる限りの時間のハードワークを」というお話がありました。私も、ハードワークの中でこそ、優先順位のつけ方や創意工夫が生まれると思うのですが、ゆとり世代の新入社員になかなか通じない世の中の流れがあると思います。
うまく「嬉々としたハードワーク」を啓蒙していくためのアドバイスがあればお願いします。
(返事)
僕は世代的特徴の先入観は持たないようにしています。昔も今も、しらけてる奴と、向上心旺盛な奴は、常に混在しています。基本的に人は幸せになりたいし、面白い仕事、充実できる仕事や生活を営みたいと思ってるが、様々な心の壁を作ってるのだろうと思います。
ですから、面白いと思えたり、気付けば、心は動く。例えば、
(1) 課題を与える
①今できていることでも、更に高い水準のレベルに目標を設定して、可及的速やかなる期限を定める。
②今はやってない(やれてない)新しい課題を、その達成目標と速やかなる期限を以て、据える。
出来栄えは8割水準で充分合格です(つまり、期限より1.2倍過ぎてもOKです)。それはチャレンジです。必ず達成の喜びや、スキルUPを伴って、活性できる筈です。
(2)課題を設けさせる
上記(1)の二項目を、今度は自ら立てさせて、挑戦してもらう。ポイントは全力で臨まないとできない水準とスピードです。でないとチャレンジになりません。全力です!
そーしていると、余計なことを考えなくなります。そんな暇はなくなります。暇だから、余計なことばかり考えてしまいます。
海外で組織ワークするときも、基本的には人間同士だ!がキーワードです。これらのメカニズムは古今東西の普遍的な原理と思いますよ。
以上。

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