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夕学レポート

2018年06月04日

2020年後のTOKYOを考えてみよう 梅澤高明さん

photo_instructor_926.jpgそろそろ2020年以降の東京のことも考えようと思ってきたけれど、重い腰が上がらなかった。オリンピック・パラリンピックが東京にやってくるまでにまだ3年あるのに、気が早いと思うかもしれないけれど、一大イベントが終わった2025年ごろには、建設業の需要は落ち込み、景気に影を落とすという説は今や通説に近いと思う。この際、日本の建設業のあり方や東京の開発コンセプト自体を見直そうと思った人も絶対いるはずだけれど、じゃあどのように変更したらよいのかイメージを具体化できない、そんな考える時間ない、えーっと誰か教えてほしい、、、というジレンマを抱えた人もいたと思う。
A.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明さんは、11人の有志の方とともにプロボノ集団『NEXTOKYO Project』を立ちあげ、新しい東京創生のプロジェクトアイデアの実現に向けて取り組んでいらっしゃる。
NEXTOKYOの問題意識はこうだ。

  • 今後は地方のみならず東京も含めて人口減少するため、オフィスや住宅の新規需要がそんなに大量にあるのか。
  • そもそも成熟都市・東京の街づくりはハコものありきではなく、そこに根付く産業・文化・ライフサイクルをどう作るかを重視して計画を立てるべきではないか。
  • 再開発プロジェクトの多くが似たようなコンセプトになっているため、東京内のそれぞれの街が差別化された「オンリーワンの街」を目指すべきなのではないか。

そこで、2020年以降を見据えて、以下のようなビジョン設計の基本構想を掲げた。下線部分は、NEXTOKYO Projectが推奨する新しいコンセプト。新しい街づくりは人のライフスタイルに寄り添い、ボトムアップに作ることで未来の世代・移住者・企業にとってよりよいものにできればいい。

  • スコープ:都市インフラ+ライフスタイル・文化、産業、社会システムの構築
  • アプローチ:
    • トップダウン+ボトムアップのクリエイティビティ
    • 新しい建物+既存建物の価値再創造
  • ターゲット:今日の生活者・企業+未来の世代・移住者・企業

海外の人は東京の魅力を「ハイテクだけれども、伝統的でご近所づきあいの残る文化」、「低層で、緑あふれており、歩行者にとって優しい街」に見ている。欧州の雑誌Monocleではこれらの要素が高評価を得て、TOKYOはもっとも質の高い生活ランキングで1位となった。また、森記念財団の都市のイメージ調査によれば、東京はテクノロジーや現代的な風土と、文化やおいしい食事のミックスがある都市というイメージが強い。そこで、NEXTOKYOでは、これらの要素を3つのコンセプトに集約しなおしている。
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例えば、Fitness Cityとしての東京では、湾岸地域にプールやバーを併設した水上商業施設を作ることや、首都高速が地中化された後に使われなくなった地上道路の上で、マラソン大会を開くこと等、健康や自然に触れるライフスタイルを創造するコンセプトを打ち出している。また、Creative Cityとしての東京では、渋谷を中心としたナイトライフを解禁したり、池袋での腐女子文化、原宿のKawaii文化のさらなる発信力や独自性の深化による集客力の向上を目指す。最後のTech Cityコンセプト実現に向けては、世界最高峰の大学の研究施設を誘致したり、スタートアップや起業がしやすくなるようなイベントやコミュニティ形成ツールを盛りだくさんにする施策が紹介された。
NEXTOKYOはプロボノ集団ではあるものの、ナイトタイムエコノミー推進議員連盟の設立に関与し、渋谷のナイトライフ振興の促進を行う等、様々なアイデアを具体化できるように働きかけを行っている。東京の街のあり方を真剣に考え、自分たちが面白いと思う要素を欠かすことなく、それを少しでも実現に近づける努力をしていることがNEXTOKYOの称賛されるべき、全うな部分なのだと思う。
私が考える東京の街の魅力は、非常に独特で伝統的な日本の芸術が深く根付いているところである。例えば、歌舞伎、新劇、落語に能などを行う劇場が集まっていること。これだけ多くの劇場型の芸術文化が多様に存在する国はそもそもあるだろうか。他方、私が東京の惜しいなと思うところは、オフィスが集積する東京の一部地域は休日に人がほぼ誰も歩いていないこと。海外の都市の中でも、金融やその他オフィスが集積する一区画だけは、休日にはゴーストタウンの様相を見せ、むしろ治安の悪い区画になる場合もある。東京の場合は、そこまで治安の心配はないものの、都市としての広がりが大きい分、複数のオフィス街で同じ現象が見られる。東銀座や新橋や汐留周辺の一部も通りによってはその現象が見られると思っている。
東銀座、新橋、汐留周辺には非常においしい昔ながらの喫茶店や人情味あふれる食事処がたくさんある。湾岸地域に住んで5年以上になるのだが、休日になると、銀座の外縁地区には歌舞伎座や新橋演舞場に訪れるお客さんを除き、平日の慌しさや激しい往来はなくなる。飲食店の8割はひっそり営業しているか、休日になるとお店を閉めてしまう。
この辺りを周遊するエコな乗り物を走らせて複数の劇場を周遊して、複数の劇場を結ぶ足を作り、一日中いろんな観劇をするプランを提案したい(想定ルートは以下の地図を参照)。私のおススメモデルコースは、歌舞伎座で歌舞伎午前の部を幕見席(当日券を購入した人(一幕1,000円~)のための4階席。200席くらいはある。)から観覧したのち、新橋演舞場前のCafe Ericaでカレーランチをする。そうこうしているうちに、新橋演舞場で宝塚のスターの歌謡舞台が始まるので、3階B席で鑑賞する。最後は、汐留まで送迎されて岐路につくというコース。もしくは、朝一に浜離宮(ヨガイベントや展示会、青空を寄席やってもよいと思う)でお散歩し、その後汐留の劇団四季劇場でミュージカルを観覧。最後に歌舞伎座の幕見席に戻り、女形のうっとりするような踊りを一幕30分だけ観覧し、帰路につくというプランでもいい。
大の歌舞伎好きである私は、殺伐とした平日から抜け出すには、休日に文化的なものをシャワーのように浴びて英気を養う日を過ごしたいと思うのだが、毎週末に上質な劇場の席を予約するほどお金に余裕はない。昔の映画館では、各回入れ替え制ではなく、一度切符を買ったら終日何本でも好きな映画を見ることができた。同じように、一日中舞台の上で繰り広げられる躍動を眺め、笑ったり泣いたりできる一日券があったらいいなと思う。
乗り物のイメージはe-com10。時速20km未満で走る10人乗りの小型バスのような乗り物で、ゆっくり走るからこそ景色を眺めることに向いている。車体を自由にペイントして、観劇バスであることが一目でわかるようにしたい。座席が向かい合っており、移動中に観劇した内容を同じ便に乗車した人同士で会話することもできる。せっかくならば走らせる乗り物は環境にやさしく、先進的なものがよい。
Ericaでおいしい紅茶をいただきながら、ここまでのんびり考えてみた。次は賛同する仲間が欲しい。NEXTOKYOのプロジェクトが斬新で、彼らがプランの具体化に向けた行動に出ることができる最大のポイントは思いを同じく共有する仲間がいることだと思う。歌舞伎や演劇が好きだというそこのあなた!アイデアに賛同してくれる方は慶應丸の内シティキャンパスまでご連絡ください。
(沙織)

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