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ファカルティズ・コラム

2011年10月28日

ブレインライティングのススメ

会議やワークショップのファシリテーターの重要なミッションのひとつに、「全参加者から意見を引き出す」があります。そしてここでのポイントは「全ての」参加者から引き出すこと。
そもそもその場に参加している以上、会議やワークショップに貢献するのは参加者の使命。
逆から見れば、「全員に貢献させる」ファシリテーションが、ファシリテーターには求められます。
会議に出席はしていても、ヒトコトも話さない人がいます。こういう人はその場に何も貢献していません。
「いや、自分がその場で目を光らせているから、ちゃんと会議が進むんだ」と宣う偉い人もいますが、「あなたがいるから(そしてそうして目を光らせているから)意見が出ない」と言ってやりたいくらいです(笑)
2時間何も言わずに座っているだけなら、職場で別の仕事をやってもらった方がよっぽど生産性が上がります。
このように、「全参加者から意見を引き出す」ことはファシリテーターとしての最低限の役目とも言えるわけですが、これが口で言うほど簡単ではありません。

では、どのようにすればこの「全参加者から意見を引き出す」ことができるのでしょうか。
ここでの考え方として『会議の前できること』と『会議の最中にできること』の2つに分けて考えることができます。
前者の具体例としては宿題を出す、つまり意見を事前に考えさせる方法があります。
また、事前の情報提供や根回しなどでテーマに関する問題意識や当事者意識を持たせるというやり方もあるでしょう。
次に後者の『会議の最中にできること』としては、意見を考えやすい問いかけを工夫し、何でも言える雰囲気を作る、などがあるでしょう。
所謂ブレインストーミングなどはそのためにあるわけです。
そしてその時の工夫として、付箋紙などに「書かせる」というやり方があります。
「はい今から5分間で、付箋紙一枚につきひとつ、計5つの意見を書いてください」というものです。
こうして「書かせる」ことで、
◆強制的に考えさせることで結果的に全員参加になる。
◆人の意見に左右されないので、自分なりの意見が結果的に言えたことになる。
◆ファシリテーターが回収して読み上げることで誰の意見かわからなくなる。
などの効果が生まれます。
ただ、この手法には「個人の意見の集約であり、他者の意見に触発された意見が出ていない」という弱点もあります。
この段階ではコラボレーションは実現できていないわけです。
そこで今回皆さんにお勧めしたいのが、『ブレインライティング』と呼ばれる手法です。
これ、沈黙のブレインストーミングとも呼ばれており、日本人同様あまり「俺が俺が」でない国民性を持つドイツで開発された手法です。
「あれ? それが付箋紙に書かせるというやり方では?」と思われた方。ちょっと違うのです。
そのやり方の弱点である「触発が起きない」を克服するのが、このブレインライティングなのです。


では、そのやり方をご説明しましょう。
まず、付箋紙でなくA4程度の紙を用意します。が、これは白紙ではありません。
一番上には考えてほしいこと、つまりテーマに対する問いかけがかかれています。その横には氏名を書く欄を設けますが、まあ氏名欄は無くても良いでしょう。
その下には縦に人数分の行、横に3~5程度の例で構成された表を書きます。
人数分とは言っても、4~7行程度が適切でしょう。もし会議の参加者が多い場合には、最初からグループ分けをしておき(会議室も島をいくつか作っておく)、1グループの人数を行数にすることをお勧めします。
これでブレインライティングのフォーマットができました。人数分コピーして用意してください。
ではブレインライティングのスタートです。
ファシリテーターであるあなたは、考えてほしいこと(問いかけ)を説明し、このフォーマットを配布します。
そして次のように考え方と書き方を説明してください。
「まず、表の最上段の3つのマス(表が3列の場合)に、あなたなりの意見を1マスに必ずひとつ、つまり計3つ書いてください。ではそれを3分でお願いします」
3分経ったら作業を止め、次にこう説明します。
「では、それを右隣(左隣でも可)の方に回してください」
「回しましたね。今皆さんの前には左隣の方の意見が3つあるはずです。では今度は、その3つの意見の下に、それを膨らませた、あるいは改良した、あるいはもっと具体化した、要するにその意見に触発されて思いついた意見を上の意見から下向きの矢印を引いて書いてください」
「ただ、どうしても前の方の意見から何も思いつかないこともあるでしょう。その場合は、前の意見が書かれたマスの下に赤で横線を引き、新しい自分の意見をその下に書き込んでください。では今度は読んで考える時間も必要でしょうから、5分間でお願いします」

これを一周して自分が最初に書いた紙が手元に戻ってくるまでやります。
それを見てみると…
強引に他者の意見から発想させますから、「なんだこりゃ」という突拍子もない、あるいはなんのことやらわからない意見も出ては来ますが、まず間違いなく『斬新』な意見がそこにはあります。
その後はそれをファシリテーターが回収して読み上げてもいいでしょうし、グループを作っているならその中でそれをシェアし、いくつか自信作を決めて全体でそれを発表して議論する、というやり方もできます。
これ、参加者にとってもゲーム感覚で取り組むことができますからなかなか盛り上がります。
結果的に全員参加になりますし、今までには出てこなかった意見が出ますから、私が定義する”良い会議”、つまり「成果とプロセス双方に満足できる会議」も実現しやすくなります。
ぜひ一度やってみてください。

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