ファカルティズ・コラム
2012年06月30日
考えさせ方のマトリクス
このブログでも何度も言っていることですが、「考える」ことは重要です。
「わかりません」で済ませるのはとても簡単ですが、「知らない」ことと「わからない」ことは違います。
知らなくても、少なくとも考えることはできるはずなのです。
特にビジネスにおける”答”の選択肢は必ず複数存在し、そこに唯一の正解などありません。
ですから、心ある上司は部下によく考えさせます。
しかし、「自分で一度考えてみろ」と言っても、それで答が返って来るとは限らないのもまた事実。
実際私も「「その原因はなんだと思う?」と聞いても「なんででしょうねえ?」しか返って来なくて困るんですよねえ」という相談を受けたことが何度もあります。
でもこれ、実は聞き方にも問題があるのです。
当たり前ですが、思考力には個人差があります。
そしてこの個人差とは、単に思考力のレベル(高い/低い)だけではありません。
個人の思考特性(傾向)も関係します。
そう、思考停止せずに自分の頭で考えて答を出してほしいと思ったら、その相手に応じて『考えさせ方』、つまり聞き方を使い分けるべきなのです。
ではどう使い分けるのか。
その問いに対する私の答が、「マトリクスを使った4通りの考えさせ方を使い分ける」です。
人にはある問題や課題をとことん突き詰めて考える、つまり「深く考えるのが得意」なタイプと、次から次にアイデアが浮かぶ「広く考えるのが得意」なタイプがいます。
もちろんどちらもOKなタイプ、そしてどちらも苦手タイプも。
こうして思考特性を『哲学者』『クリエイター』『優等生』『コドモ』の4つに分類したのが、以下のマトリクスです。(画像クリックで拡大します)
あなたの部下をこのマトリクスに当てはめるとどのタイプでしょうか。
では、早速タイプ別の考えさせ方を解説します。
まず、広く・深く考えることのできる『優等生』タイプはあまり困りません。
「○○の原因ってなんだと思う?」とか「××するにはどうしたらいいと思う?」といった明確なイシュー、つまり「今考えるべきこと」さえきちんと与えてあげれば良いのです。
イシューが明確なことがここでのポイントですから、「○○の件だけど、どうかなあ?」のような曖昧な聞き方はNGです。
5W2Hを明確にして問いかけましょう。
そして深く考えるのが得意な『哲学者』タイプ。
このタイプは突き詰めて考えるだけに、一本道の拡がりのない思考をしてしまうのがウィークポイント。
ですからポイントは「強制的に広く考えさせる」ことです。
「○○の原因として考えられるものを明日までに20個考えてこい」といった、『明確な定量的ハードル』を与えて考えさせましょう。もちろんこのタイプに対してもイシューの明確化は大前提です。
これを続けていると、徐々に広く考えることに慣れてきます。
次に広く考えるのが得意な『クリエイター』タイプ。
このタイプは『哲学者』タイプの対極に位置付きますから、アイデアマンではあってもリスクなどについて深く考えることに慣れていません。
よってこのタイプにはイシューの明確化に加え、『切り口』も与えて考えさせましょう。
「○○の原因を内部要因と外部要因に分けて考えてごらん」とか、「今度はウチの競合の立場で、ウチがどういうことをやると困るかを考えろ」といった感じです。
こうして様々な切り口や視点で「一段深く」考えることに慣れてくれば、彼のウイークポイントも薄れていきます。
そして最後の『コドモ』タイプ。
もうおわかりですね。
このタイプには先の3つのタイプに対する考えさせ方を全て駆使すれば良いのです。
「なぜ?」や「どうしたら?」のような5W2Hでイシューを明確化し、
「明日までに△△個のアイデア」のように定量的ハードルを与え、
「ヒト・モノ・カネの3つの視点で考えてみろ」といった切り口も併せて問いかける。
しかしこのタイプはそれでも難しい場合があります。
だから定量的ハードルは少し低めに設定しましょう。
「明日までに10個のアイデア」なら出せるかもしれません。
そしてもうひとつ。
あなたが「たとえば□□とかな」と”例”を挙げてください。
ただ、その時に注意してほしいのは、「良い例を挙げない」ことです。
経験に乏しく考えることに慣れていない彼が、経験豊富で思考停止も少ないあなたと同じような良い答は出せません。
だからできれば突拍子もないような例を挙げましょう。
「たとえば□□とか・・・ま、これはありえないけどな(笑) でも、こういうのでも良いんだよ。とにかく良い考えかどうかよりたくさん出すことを心がけてみてよ」
彼はこれでずいぶん気が楽になるはずです。
さて、”考えさせ方のマトリクス”いかがでしょうか。
もちろんこの分類が思考タイプの分類の正解ではありません。
他にも様々な切り口で思考特性をタイプ分けし、タイプ別の考えさせ方を考えることができるでしょう。
とにかく私が言いたいのは、
「相手に合った考えさせ方をしてください」なのです。
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