2013年11月29日
東京モーターショーから見えてくる「トレンド」と「戦略」
今週、時間を作って『東京モーターショー2013』に行ってきました。
個人的にクルマが好き、というのもあるのですが、わが国の基幹産業である自動車業界の動向をチェックすることは、いくつかの意味で重要なのです。
当然自分自身の仕事として、各社のマーケティングや技術動向を見ることで、普遍的および最新の戦略論における知見を高めることができます。
また、他業界も含めた日本経済全体の動向についても見えてくるものがあります。
そこで、ショーのレポートという形で、いくつか感じたことを描いてみることにします。
さて、このショーは隔年で開催されており、リーマンショック翌年の前々回(2009年)は、業界全体の冷え込みで、海外メーカーはほとんど参加せず、約61万人と、ピーク時の半分以下の来場者数でした。
そして前回の2011年は、ご存じの通り震災の影響はあったものの、会場を利便性の高い東京ビックサイトに変更したことも奏功し、来場者数は約84万人まで回復しました。
そして今年は今週末までの会期で、90万人前後の来場者数が見込まれているとのこと。
この数字からも、日本経済の回復の足音が聞こえてきそうです。
ただ、それでもピーク時の来場者数には遠く及びませんから、これはやはり消費者がクルマに対する興味を失ってきていることの表れと言えます。
では、次にその内容から見えるトレンドについて。
ここ何回かは、「エコカーショー」とも言える展示内容でしたが、今回は少々違っていました。
もちろん「低燃費」や「低CO2」は相変わらず重要なキーワードであり、商用車メーカーや部品メーカーも、そのアピールに大きな時間を割いています。
しかし今回はそれに加え、「安全」と「スマートモビリティ」に各社が注力しています。
スバルのアイサイトに代表される「ぶつからないクルマ」とともに、ドライバーに対する各種アラームや、人間工学的に脇見運転をしにくくなる工夫など、様々な安全技術を見ることができます。
そしてこの流れは、もうひとつのキーワードである「スマートモビリティ」とも深い関係があります。
スマートモビリティとは、クルマを独立した移動手段としてだけ考えるのではなく、都市開発や私たちの快適かつ安全・安心な生活インフラの一部としてとらえる概念です。
そこでは当然無線ネットワークや情報処理といったITCが不可欠であり、またエネルギーの生成・蓄積・供給の技術、そして環境・安全技術との連携が鍵になります。
いわゆる、スマートシティ構想の一部が、このスマートモビリティです。
その意味では、何社もがデモンストレーションを行っていた自動運転システムも、このスマートモビリティの中核技術でしょう。
ですから今回、たとえばホンダが東芝とセキスイハウスと組んだ展示を行っていたように、業界の枠を超えたコラボレーションが活発になることは確実です。
どの会社がどこと組むか。
そしてどのようなソリューションを提案し、どれがデファクトとなるのか。
今後ともそれを注視していきたいと思います。
最後に、個々のメーカーブースの比較から考察してみます。
各ブースの賑わいを比較すれば、当然マーケットからの注目度の違いが見えてきます。
そしてそこから、メーカーとしての「勢いの差とその理由」も。
今回、米国メーカーからの参加がなかったのは、なかば日本市場を諦めたと言えるでしょう。
また、ヨーロッパ勢も、メルセデスやアウディ、フォルクスワーゲン等ドイツ勢が大きなブースを構えていたのに比べ、イタリアやフランスメーカーは本当に「ほそぼそ」という状況でした。
日本の自動車マーケットは、日本とドイツという二極化が定着したようです。
国内メーカーに目を移してみると、ブースの大きさは大差ないのに、日産の勢いが弱いのが気がかりです。
ライバルであるトヨタの「ハイブリッド技術」や、ホンダの「新型フィット」という「売り」が今回は無いのがその要因でしょうが、フォレスターが絶好調で、それに続く新車も目白押しのスバル、予約好調の新型アクセラだけで6台も展示しているマツダにも、ブースの賑わいが負けているのは問題です。
当然スマートモビリティの中核として、電気自動車であるリーフに力を入れるのはわかりますが、いかんせん目新しさがありません。
また、ゴーン社長は「EV(電気自動車)の普及は充電インフラがポイント」と言っていますが、個人的には半分正解で半分不正解なのではないかと考えています。
というのも、EVがスマートモビリティの本命であることは確かだと思いますが、充電施設はEVのニーズが高い都市部から普及させていくことになりますから、長距離の移動は、どうしてもエンジンが載ったクルマが今後とも中心となります。
そうすると、やはり低燃費のコンバクトカーや軽自動車、そしてハイブリッドとディーゼルが、消費者のニーズにあったクルマとなります。
その分野の「どこかの」リーダーでなく、「ハイブリッドは所詮EVまでの繋ぎ」と考え、積極的にEVにシフトしたのが裏目に出たと言えるかもしれません。
とは言え、EVは「どこかがやらなければならない」分野ですから、日産の取り組みには拍手を贈り、10年後に花を咲かせるのを期待したいと思います。
さて、オマケとして一枚の写真を。
これはヤマハが出展していた、北米専売のオフロードビークルです。
なんかSF映画に出てきそうな、オトコノコの心をくすぐるクルマですね!
よく見ると、外装はほとんどが樹脂製で、どんな泥んこのフィールドでも錆び知らず。
価格は、なんと日本円換算で約110万円とのことで、安いですよねえ。(あくまでも一般のクルマとの比較であって、私が買えるほど安いという意味ではありません(笑))
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