ファカルティズ・コラム
2015年05月01日
価値観を書き換える
今回は前回の続き、「価値観」について、もう少し考えてみたいと思います。
少々哲学的な考察になりますが、あなたにとって少しは役立つ内容になるかと思いますので、しばしお付き合いください。
前回のエントリーの前半で、価値観の形成には2つのパターンがあることをお話ししました。
1. 絶対評価型価値観
→様々なモノゴトに対して「好き/嫌い/どうでもいい」のように、ひとつひとつを感覚的に評価することで形作られた、『個々の評価の集合体としての価値観』。
2. 相対評価型価値観
→様々なモノゴトを、分野別に、「関心の度合い」や「好きさの度合い」で比較し、並べることで形作られた、『優先順位付けで構成された価値観』。
このどちらの価値観を使っているのかは、人によって、また分野によっても違うでしょう。
そして、これを踏まえた上で今回考えてみたいのが、
「価値観はどうしたら変えられるのか?」
です。
先に述べたように、私たちはひとりひとり、異なる価値観を有しています。
また、それは分野によっても異なります。
さらに言えば、国や地域、宗教などによっても価値観は異なりますし、時代によっても価値観は変わる、つまり変遷します。
「他人に迷惑をかけてはいけない」
この価値観が最も共有されているのは日本人だ、とは多くの人が語っていますが、過去の資料などをあたれば、昔は決してそうではなかったことがわかります。
価値観は変化するのです。
もちろん「変えるべき価値観」もあれば、「変えるべきではない価値観」もあります。
「変える必要がない価値観」もあるでしょう。
そもそも、世の中に「正しい価値観」などないと私は考えています。
しかし、時代や状況に合わせて「適切な価値観」と「不適切な価値観」がある。
だから「正しい価値観」とは、時代や場に応じた「求められる価値観」と表現した方がよいのかもしれません。
だから時には、自分の価値観を「思い切って変える」ことも必要です。
では、その価値観は、どうやったら変えることができるのでしょうか。
「求められる価値観」が認識できたとしても、それをすんなり変えるのは口で言うほど簡単ではありません。
価値観とは、今までの経験を通して「染みついた」、ひとりひとりの「鮮やかな個性の地色」のようなものですから、その地色を塗り替えるのはかなり大変です。
さて、私は価値観とは、パソコンのフォルダのようなものだと思います。
「相対評価型価値観」の持ち主であれば、その心の中では、価値観がキレイに整理されたフォルダになっています。
分野ごとにフォルダが分かれ、さらにその下位のディレクトリでは、個々のモノゴトがナンバリングされ、(優先)順位付けができています。
対して「絶対評価型価値観」の持ち主のフォルダ構造は、ランダム、しかしある意味シンプルです。
ひとつの大きな「価値観」フォルダの中に個々のモノゴトのフォルダがランダムに並んでいますが、個々のフォルダの数は圧倒的に「相対評価型価値観」の持ち主より少なくなっています。
なぜならば、フォルダの有る無しが価値観そのものを表している、つまり「嫌い/どうでもいい」モノゴトのフォルダは存在しないからです。
こう考えていくと、「価値観の変え方」もまた、相対評価型価値観と絶対評価型価値観では異なることが見えてきます。
相対評価型価値観であれば、「フォルダの並びを変える」ことが、価値観を書き換えることになります。
分野別のフォルダの順位を変える、たとえば「この分野への関心度をもう少し上げよう」などと考えたり、ある分野の中でも「これより今はこっちを優先しよう」などと考えるのです。
そしてそれをことある毎に意識するすることで、優先順位の変更が定着する。
これが相対評価型価値観の持ち主が、価値観を変えるプロセスです。
では、絶対評価型価値観の持ち主は、どのようにして自身の価値観を変えるのか。
これはまさに、フォルダを削除し、新たなフォルダを作ることに他なりません。
たとえばあるリスクに敏感だった(つまりそのリスクは重要ということでフォルダが存在した)が、それを「もうこんなリスクどうでもいいや」と割り切る。
この「どうでもいいと割り切る」ことが、フォルダを削除する行為です。
場合によっては、その代わりに「どうでもよくない」ことが、新たなフォルダとして作成させることもあるでしょう。
絶対評価型価値観の持ち主の「価値観の変え方」とは、この「どうでもいいと割り切る」ことでフォルダを削除したり、新たなフォルダを作ることなのです。
私は前回お話しした通り、相対評価型価値観の持ち主です。
そして実は今、この「フォルダの並べ替え」、つまり価値観の書き換えの真っ最中です。
詳細はここでは言いたくありません(笑)が、いくつかの分野別フォルダの下位のフォルダの優先順位を変えようとしています。
もちろんこれにしても口で言うほど簡単ではありません。
しかし、少しずつ自分の価値観が変化していることは実感できます。
さて、あなたが「求められる価値観」、そしてそのために「変えるべき価値観」は何でしょうか。
そしてあなたは、相対評価型価値観と絶対評価型価値観、どちらの持ち主でしょうか。
ただ、「求められる価値観」に、絶対応えなければならないわけではありません。
「洗脳」とは、まさに「価値観を不適切な方向に書き換える」ことですから、求められる価値観が全て適切ではないのです。
あたかも「社畜養成システム」のような新入社員研修なども同じです。
しかし、私たちはひとりひとり、必ず「変えるべき価値観」があるのも事実。
変えるべき価値観は、フォルダを並び替えたり、あるいは削除・新規作成するように、書き換えていってください。
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