KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2015年12月11日

何をアウトソーシングしているのか、そしてすべきなのか

突然ですが、「ビジネスモデル」とは何でしょう?
辞書には「企業が行う事業の仕組みや方法」などと説明されていますが、なにかピンとこないですよね。
また、「儲ける仕組み」という言い方もしますが、個人的にはビジネスには継続性が必要なので、「儲け続ける仕組み」という定義がしっくりきます。
さて、マーケティングの研修や、新規事業創造のワークショップの中で、この「ビジネスモデル」に触れるとき、私が必ず使うフレーズがあります。
それが「すべてのビジネスはアウトソーシングビジネス」です。






クレイトン・クリステンセンはこう言いました。
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消費者は製品・サービスを「購入する」のではなく、自分の「用事」を片づけるために製品・サービスを「雇う」のだ。
———————————
もう少しわかりやすくしてみましょう。
ビジネスは、顧客(法人/個人)に対して何らかの「価値」を提供し、顧客からその価値に対する「対価」いただくことで成立します。
この「対価を得る」行為が、「儲ける」こと。
そしてこの「価値」を提供する手段が製品やサービスなわけですね。
では、顧客が得られる「価値」とは何なのか?
クリステンセンは、それを「用事を片づけること」と表現しました。
顧客には用事、つまり「やらなくてはならないこと」や「やりたいこと」がある。
しかし能力も含めた自身のリソースではそれができない。
また、できなくはないが時間がかかったり、実はやりたくないことであったりする。
だから製品・サービスを、お金を払って「雇う」ことで、自分に変わってその用事を片づけてもらうのです。
私たちは、なぜ米や野菜、肉や魚といった食材を買うのか?
それは、自分でお米を育てたり、魚を海まで捕りに行くことができないからですよね。
だからスーパーにその用事をお願いし、スーパーは農家や漁師に自分の代わりにお願いしているわけです。
また私たちは、自分で髪を切り、セットするのが難しいから、その用事を美容室に変わりにやってもらっているのです。
これはB2Bも同じ。
アップルは、自社より低コスト高品質が可能となる専門会社に製造を委託している、自社工場を持たない「ファブレス」のメーカーです。
これも本来は自社でやる「製造する」という用事を、変わりにやってもらっていることになります。
また、「人材を育成する」という用事を、自社のノウハウと人材だけでやるのが難しいから、企業は慶應MCCのような会社に「変わりにやってもらう」わけです。
いかがでしょう。
「すべてのビジネスはアウトソーシングビジネス」の意味がおわかりいただけたでしょうか。
私がこのブログで「顧客への提供価値」について何度か述べた、
◆ 顧客はそれで「何ができるようになる」のか?
とは、「(顕在的・潜在的に)やりたいけどできなかった」ことをアウトソーシングすることであり、
◆ 顧客はそれで「何をしなくてよくなる」のか?
が、「やらなくてはならないけど、本当はやりたくない」、あるいは「やらなくてはならないけど、もっと効果的・効率的にやりたい」ことをアウトソーシングすることなのです。


さて、あなたの会社のビジネスは、「誰のどのような用事」をアウトソーシングしているのか、ぜひ考えてみてください。
本当にそれは顧客の「代わりにやってもらいたいこと」を高いレベルで実現できていますか?
こう考えれば、ビジネスを変革するヒントが見えてきます。
たとえば、チャネル変更の必要性や、製品・サービスを改良するアイデアが見つかるかもしれません。
また、この「アウトソーシング」というコンセプトで顧客を見ることで、新たな事業や製品・サービスのヒントも見えてきます。
◆ この顧客は何を「やらなきゃいけない」あるいは「やりたい」のか?
◆ そして何を「やりたくない」とか「面倒くさい」と思っているのか?
◆ そしてそれは、我が社が「代わりにやってあげる」ことはできないか?
こうして、「何をアウトソーシングで請け負うと、我が社は儲かるのか?」を考えてみましょう。

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