ファカルティズ・コラム
2016年02月19日
ちょっと苦手なあの人との距離を縮める
「返報性」という言葉をご存じでしょうか。
これは心理学用語で、「悪意の返報性」や「好意の返報性」といった使い方をされるのですが、要するに「人は自分を好きな人を好きになりやすく、同様に自分を嫌いな人は嫌いになりやすい」ということです。
異性から「好きです!」と告白され、今までなんとも思っていなかった相手のことを、自分も好きになる。そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
人はこのように、返報性、つまり相手からの好意や悪意に対して「お返し」しようとする意識が働きます。
人として、というよりも、「自分に好意を持つ、少なくとも悪意を持っていない相手を仲間にしたい」という動物的カン、と言っても良いかもしれません。
さて、あなたにもひとりやふたり、「この人、ちょっと苦手なんだよなあ」と感じる人がいるはずです。
それは上司であったり、あるいは部下かもしれません。
また、お客様や他部署の誰か、あるいはご近所の人だったり。
そうした苦手な人に対して、こちらから距離を取り、できるだけ接触しないようにする。
それで何も問題のない場合もあるでしょう。
しかし、それが仕事上、付き合わざるを得ない人だったら?
そればかりか、良い関係を築いておかないと、今後何かと支障の出る相手だったら?
やはり、どんな苦手な人であっても、なんとか距離を縮める努力が必要となります。
そして、そんな「ちょっと苦手なあの人との距離を縮める」ために有効なのが、この「返報性」を利用することなのです。
ちょっと苦手な人。
その人の前では、私たちはどうしてもその苦手意識が態度や言葉に出てしまいます。
相手の目を見なかったり、少しおどおどしたり、またキツいことを言ってしまったり…
そうした言動によって、私たちの「相手に対するマイナスの感情」は相手にも伝わります。
悪意を初めとしたマイナスの感情が伝われば、そこで返報性が働き、相手も私たちに対してマイナスの感情を持ってしまう。
まさに返報性の悪循環。
これでは、いつまで経っても距離を縮めることなどできません。
であれば、相手のどこか良いところを見つけ、それを認める。時には「すごいですね」や「いいですね」と褒める。
つまり今度は「相手に対する正の感情」を言動で表せば、反対に返報性の好循環が生まれ、相手のとの距離は徐々に縮まります。
まずは「自分から相手の良いところを探し、それを好きになる」。
これを心がけてみてはどうでしょうか。
とはいえ、どう頑張っても生理的に好きになれない人もいるでしょう。かといって、「好きに見せかける」演技力に磨きをかけるのもあざと過ぎます。
そこで思い出してみてください。あなた自身が好感を持っている、上司や同僚、他部門の人やお客様に対して、あなたはどのような接し方をしていますか?
…たぶん、その人に様々なことを「教えてください」という接し方をしているはずです。
たとえば「~についてはどうしましょうか?」であったり、「どんな本を読むべきでしょう?」のように。
私たちは、好感を抱く相手に対しては、心を開いて接しますから、その結果として相手に「教えを請う」形で頼る傾向があります。
「教えを請う」とは、なかば「自分の弱みをさらけ出す」行為でもあります。
「私はここが弱い。だからあなたに助けてほしい」からこそ「教えて」となるわけです。
そして「相手が教えを請うている」→「つまり自分に弱みを見せている」→「弱みをさらけ出せるのは心を開いている相手に対して」→「とすると自分に好意を持っている」
という思考プロセスの後、「なら自分も」と返報性が働く。
「教えて」と言ってくる人に対して、よっぽど嫌な相手でもなければ、そこで嫌な気分になる人はいません。
これは自分の得意分野のような「強み」を相手が認めてくれたことになりますから、「承認欲求」を満たすことにもなるからです。
「ちょっと苦手な人」の得意分野や詳しい知識、あるいは関心の高いことは何か。
それを情報収集しましょう。
Facebookのプロフィールや本人の投稿が見られるのであれば、そこから推察することもできるはずです。
そして「教えてください」とやってみるのです。
これは上司やお客様など、自分より立場が上の相手だけにしか使えないわけではありません。
部下に対してでも、「~に詳しいんだってな。ちょっと教えてほしいんだけど」とやればいいのです。
最近よそよそしい態度の、自分の子供に対しても同じです。
立場や年齢に関係なく、誰もが誰かの師匠であり、弟子なのですから。
ぜひこの「教えを請う」テクニックで、ちょっと苦手なあの人との距離を縮めてみてください。
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