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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2019年06月27日

「プロ野球の生観戦」が提供する顧客価値

最近のマイブーム、という我が家の話題の中心は「野球」です。
元々ムスメが3年ほど前に高校野球にハマり始めたのですが、話題を集めた高校球児はその後プロ入りする人も多いため、自然な流れでプロ野球にも…というプロセス。
私自身、そして妻も子供の頃から父親の影響で巨人戦を毎晩のようにテレビ観戦していたクチでした。
私としてもムスメにルールや戦術、そしてウンチクを語るのが楽しくなり、今や家族で巨人ファンに(笑)
ネットでチケットを取り、東京ドームにムスメと2人で出かける(妻は出不精なのでパス)のが、今の最大の楽しみとなってしまいました。
しかし悩みはなかなかチケットが取れないこと。
特に日曜日のチケットの先行発売の抽選ではことごとく外れ、人気のミュージカルやお芝居のチケットと同じプレミア化しているのを実感します。
当然スタジアムは満員で、ひとつひとつのプレーに大歓声。
「ん? プロ野球人気は落ちているのではなかったのか?」
いいえ、今やプロ野球は過去最高の観客動員数をたたき出す、「超人気コンテンツ」となっているのです。
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確かに昔に比べると、地上波でのプロ野球中継は激減しました。
理由は当然、視聴率が取れなくなったからであり、ここだけを見るとプロ野球人気は低迷しているように感じます。
しかし各球場における観客動員数からは別の事実が見えてきます。
12球団合の計観客動員数は、6年連続増加と好調で、昨年(2018年)はついに史上最多を更新する2,555万719人となりました。
1試合当たりの観客動員数を見ても、12球団の平均は昨年が29,800人、今年はここまでで30,500人と、増え続けています。
サッカーの人気は相変わらず高いですし、最近はバスケットボールやテニスも日本人選手の活躍もあり、やはり観客動員数を伸ばしているようです。
しかしこうした「生観戦の競合」が増えているにも関わらず、プロ野球の動員力は伸びている。それはなぜなのでしょう。
もちろん様々な識者やメディアが分析しているように、球団・球場、そして自治体という組織の努力が実を結んでいることは確かです。
具体的には、
◆自治体との連携による「地域密着」の推進
◆「ターゲット顧客」の明確化(横浜スタジアムの「アクティブサラリーマン」など)
◆ターゲットに合わせたグッズの開発
◆スタジアム内飲食の充実
◆他のエンターテインメントとの連動など、「ボールパーク」化の推進
◆選手の協力によるファンサービスの充実
◆試合毎に異なる「イベント感」の創出(限定ユニフォーム全員配布など)
などが挙げられるでしょう。
しかしそれだけではなく、『顧客(観客)が「プロ野球の生観戦でなくては得られない価値」を求めてリピーター化している』ことが大きいと私は考えます。
ここでちょっと我が家の話しをさせてください。


ムスメと私が初めて2人で生観戦したのが、今年3月の東京ドーム。「巨人×ロッテ」のオープン戦でした。
オープン戦と言うこともあってドーム内も和やかで少しゆるい雰囲気でしたが、それでも試合が始まれば、応援は熱を帯びます。(観客数は4万6千人でした)
私たちは1塁側内野席、つまり巨人ファンがほとんどの席でしたが、周りには「ガチ」な巨人ファンの推しの選手のユニフォーム姿も多い。
そういう「ガチファン」は選手の応援歌や応援のタイミングも熟知しており、それを真似しながら一緒に盛り上がれるのです。
点が入ればオレンジのタオルを振り回し(電光掲示板にも「SWING!」と出る)、大声で歌う。
たまらずムスメも「ちょっとタオル買ってくる!」。
ムスメは普段ほとんどお酒を飲まないのですが、この日ばかりはレモンサワーをおかわりしていました。
試合にも勝ち、ムスメに「また行く?」と聞くと、「行く行く! タオルも買ったし」とのこと。
やはり「生観戦」でないと得られない価値があったわけです。
それは『非日常の共有体験』
周りの見知らぬ人々とともに大声を張り上げ、タオルを振る。そこには恥ずかしさを感じる空気はなく、「同じ阿呆なら踊らにゃソンソン」の世界観があります。
ロックコンサートなどと同様の「ライブ感」とも言えるでしょう。
まさにCDの売上は低迷していても、ライプの集客は伸びている音楽業界も同じでしょう。
スマホにSNSと、ネット全盛の時代だからこそ、消費者は一方でこうした「リアルな共有体験」に価値を感じているのではないでしょうか。
しかしそれだけなら、野球以外の他のスポーツ観戦でも同じです。
では、「プロ野球の生観戦ならでは」の提供価値とは?
私は『行動の自由度の高さ』だと考えます。
そもそもプロ野球がテレビのコンテンツとして優れていた点のひとつとして「コマーシャルの入れやすさ」があります。
攻守の交代や投手交代には一定の時間が必要なため、そこでCMを流すことができたわけですね。
これは生観戦でも同様で、たとえばサッカーなら45分間はトイレに立てませんが、野球なら問題ありません。
また、「次は相手チームの下位打線だから」という理由で席を立ち、球場内で飲食・買い物・喫煙なども可能です。
この適度な「ゆるさ」、行動の自由度の高さも、野球観戦ならでは。
観客としてもストレスなく、気持ちの切り替えもしながら「自分なりの楽しみ方」ができる。
それこそプロ野球の生観戦の、最大の魅力ではないでしょうか。


さて、今回挙げた『非日常の共有体験』と『行動の自由度の高さ』というプロ野球の生観戦というコンテンツの提供価値は、他の分野に応用できないでしょうか。
それもスポーツエンターテインメントだけでなく、たとえば「飲食業」や「ネット上のサービス」など、様々な分野でも価値提供と差別化のキーワードになり得ると思うのです。
あなたの会社では、これらをどう応用できるでしょう。
ぜひ一度考えてみてください。




ペナントレースも交流戦が終わり、いよいよ激しさを増してきます。
セ・パ両リーグとも、どこが優勝するか、全く予想が付きません。
私も既に何試合かのチケットを手に入れました。
ひとりで行く試合もあれば、ムスメと行く試合も。そこでまた一緒にタオルを振り、盛り上がれることでしょう。
「誰より強く、さらなる高みへ。この大歓声が君の味方だ。さあ、我らとゆこう、丸佳浩~! かっとばせー! よ・し・ひろ!!」

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