ファカルティズ・コラム
2019年07月22日
選挙とはネガティブな感情に訴えることか
参院選が終わりました。
私も昨日投票してきましたが、結果はみなさんご存じの通り。
投票率はまたも低く、過激な政策を掲げる2つの新党が議席を確保した以外は、ほぼ戦前の予想通りと言えるでしょう。
「改憲や消費増税の信任が得られた」と与党は言います。
そして野党の代表も「次に向けての土台は築けた」と言っています。
本当にそうでしょうか?
投票率の低さ。
その最大の原因は、有権者が「投票しても変わらない」と感じているからです。
自分たちの生活に大きく関わる「消費税」や「年金」が論点であっても。
これはどういうことでしょう。
私はそこに、有権者の政治家たちの発言とやり取りに対する『不快感』があるように思います。
与党は「これまでの実績」と「過去の民主党政権の失政」を声高に述べていました。
そして野党は「政権のゴマカシ」や「このままではさらに悪化する暮らし」について強く訴えていました。
確かにそうした「訴え方」が選挙に勝つための「ひとつの手段」であることは確かです。
しかし与党の「過去の実績」は、言ってしまえば「自慢話」です。
他人の自慢話を聞いて、「良かったね。頑張ったね」となる場合はもちろんありますが、多くの場合「はいはい、褒めてほしいの?」となるはずです。
そして与党の「過去の政権叩き」や野党の「現政権のゴマカシ批判」は、両方とも要するに「他人の悪口」です。
他人の悪口聞いてスカッとしたりニヤリとする場合もあるでしょうが、その時の顔はたぶんかなりの悪人顔になっています。
…さて、ここで考えてみてください。
与野党のこうした選挙戦での主張を聞かされた私たちには、「どのような感情」がわき上がってくるでしょうか。
たとえ演説に対して「そうだそうだ!」と快哉を叫んだとしても、そこでわき上がる感情は『怒り』や『悲しみ』、そして『危機感』や『嫉妬』といった「ネガティブな感情」ではありませんか?
私はここに、与野党関係なく、今の政治の最大の問題を見ています。
有権者は政治家の発言とやり取りに対して、ネガティブな感情しかわいてこないのです。
野党は「もっと危機感を持ってくれ!」と言いたいのでしょう。
企業のトップも、しばしば「社員と危機感を共有したい」と言います。
しかし、進んでネガティブな感情を持ちたい人がいるでしょうか。
確かに怒りや嫉妬は行動の原動力になります。
「それってオカシイ!」「そんなのズルい!」で人は「やってやる!」となることがあります。
しかし残念ながら、犯罪の多くはこうしたネガティブな感情がベースとなっています。
もちろん、危機感でよりよい行動をとる人と場面も少なくありませんから、この手法が間違っているわけではないのです。
しかし、政治がほとんどそれで良いのでしょうか。
イギリスのEU離脱やトランプ政権の誕生にしても、どちらもこの「ネガティブな感情」を煽った結果です。
なぜ、政治家たちは私たちの『期待感』や『高揚感』『安心感』に『充実感』といった「ポジティブな感情」を刺激してくれないのでしょう。
「こういう政策をやります。そうすると暮らしは5年後にはこうなる。どうですか? ワクワクしませんか?」
と、なぜ未来に対する希望や期待を持たせてくれないのか。
もちろん候補者によっては、そして演説の一節ではそうしたこともやっているのは知っています。しかしどうしても中心は「ネガティブな感情の刺激」になっている。
私はそれが残念でなりません。
ただ、れいわの山本太郎代表だけは違っていました。
彼の政策は実現性という点では首を傾げざるを得ませんが、少なくとも訴え方においては、かなりの部分で「期待感」というポジティブな感情を刺激していました。
私はそれも2議席取れた要因だと考えています。
一口に「政治不信」と言うのは簡単です。
しかし実のところ、有権者は「政治を信じていない」というよりも、彼らの言動でネガティブな感情を抱くことに「げんなりしている」のではないでしょうか。
その意味では、れいわの「ポジティブな感情を煽る」戦い方は、今後の参考になるはずです。
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