ファカルティズ・コラム
2022年01月26日
「気さくな人」と「図々しい人」
自己判断するに、私は「気さくな人」ではありません。
コミュ障とまでは言わないものの、基本的にひとりでいることが大好き。自分から人の輪に入っていくことは苦手な方です。
それでも年齢を重ねるにつれ、そして公私において人付き合いを重ねるにつれ、少しずつ他人と気軽なコミュニケーションがとれるようになりました。
以前の私は「気さくな人」に憧れながら、そうした人が苦手でもありました。
しかし、この「気さくな人」とはどういう人なのでしょうか。
私が考える「気さくな人」とは「コミュ力が高い人」、もうちょっと具体的な事実としての特性で説明すると「誰にでも臆せず話しかけることができる人」です。
ああ、本当にうらやましい(笑)
さて、この「誰にでも臆せず話しかけることができる」という特性をポジティブにとらえると、その人は「気さくな人」となります。
しかし話しかけられた人がみんな「ああ、気さくな人だ」と感じるわけではありません。過去の私がそうした人を苦手に感じていたということは、まさに私が「気さく」とは感じていなかったからです。
いきなり話しかけられたり、自分たちの話の輪に加わろうとする。
そこで「誰だよオマエ」とか「聞いてねーし」とか「邪魔すんな」と感じられたら?
はい、それは「図々しい」と見なしたということです。
このように「図々しいヤツだなあ」と相手から思われるのか、それとも「気さくな人だ」と好感を持たれるのか、それはケースバイケースです。
だからXという人物が、あるときは「気さく」あるときは「図々しい」と思われることもありえますし、ある場においてAさんはX氏を「気さくな人」と受け止め、Aさんと一緒にいたBさんは「図々しい人」と感じてしまうということも起きます。
「誰にでも臆せず話しかけることができる」という事実は同じでも、相手や場面、また話しかけた内容によって、「認識」が異なってくるわけですね。
「認識=捉え方」は実に多面的です。「気さく/図々しい」という単純な二面性だけでなく、他にも「多弁」「社交的」「うざい」「なれなれしい」など、この特性だけでも様々な解釈ができます。
新型コロナウイルスも、ある人にとっては「恐怖の対象」とか「余計な仕事を増やすもの」ですが、ある人にとっては「ビジネスチャンス」ですよね。
と、ここまで考えると「どうしたら『図々しい人』にならずに済むか」も見えてきます。たとえば「初対面でタメ口はやめる」とか「矢継ぎ早の質問はしない」とか「人の話を遮らない」とか…工夫はいろいろできるはずです。
また反対に「自分は口下手で…」とか「いつも『暗いヤツ』って言われる」ということを気にしている人も、単に「人に話しかけるのが苦手」(以前の私ですね)という特性があり、それをネガティブに解釈しているに過ぎないことも見えてきます。
「暗い」ではなく「寡黙」と受け取ってもらうためにはどうしたら良いのか。
たとえば「とにかく頷きながら聞き役に徹する」とか「メモを取りながら話を聞く」とか、これもまた考えれば様々な工夫が思いつくはずです。
ABXモデルを提唱した対人心理学者のニューカムは、「好感度を高めるためには『賞賛』『尊敬』『返報性』が重要である」と言いました。
自分の特性を事実として認識し、それを相手にポジティブに受け取ってもらう。今回のお話はニューカムの言う『賞賛』、わかりやすく言うと「好ましい人だと感じる」のことです。
人は皆「個性」を持っています。
今回の「臆せず話しかけることが得意/苦手」だけでなく、外面では「背が高い/低い」や「感情が顔に出る/出ない」、内面では「リスクを厭わない/回避したい」や「○○が好き/嫌い」など、様々な事実としての個性・特性があります。
それらは努力によって克服できるものもありますが、なかなか変えられないものもあるでしょう。
であれば、まずは自分の個性を認識する。
そうしてそれを他人に「ポジティブに受け取ってもらう」工夫、最低でも「ネガティブに受け取られない」ための工夫をする。
それが人から好かれる、少なくとも嫌われずに、良好な人間関係を築くためのテクニックです。
…とは言え、それもまた簡単で無いのも事実。
私も家族から「普通にしてても表情が怖いから、意識してニコニコしなさい」と言われています(笑)
あと、「別に誰とでも良好な人間関係を求めているわけじゃないし」という人もいるでしょう。
でも、人はひとりでは生きていけません。
だから「この人との関係は大切にしたい」という相手に対しては、今回ご紹介したテクニックを使ってみませんか。
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