私をつくった一冊
2024年05月14日
杦岡 充宏(慶應MCC客員コンサルタント 、米国PMI認定PMP(Project Management Professional)、元PMI東京支部国際委員会委員)
慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。
- 杦岡 充宏(すぎおか・みつひろ)
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- 慶應MCC客員コンサルタント
- 米国PMI認定PMP(Project Management Professional)
- 元PMI東京支部 国際委員会 委員
- 慶應MCC担当プログラム
1.私(先生)をつくった一冊をご紹介ください
2.どのような内容ですか?
この本は副題に実用企業小説とあるように大手ITベンダーでの筆者の実体験に基づいた実話性の高いストーリーで、プロジェクトの発足から崩壊、そして立て直しと成功までが小説として描かれており、その中にプロジェクトを成功に導くノウハウが述べられている本です。
3.その本には、いつ、どのように出会いましたか?
今から20年ほど前、大規模プロジェクトの現場のプロジェクトマネージャーを第一線でやっていた頃、上手くいかず苦しんでいたプロジェクトがあり、「プロジェクトをもっとうまく進めるにはどうすればよいのか」と模索しているときに出会いました。
4.それは先生にとってどんな出会いでしたか?
当時の私はプロジェクトで定めたスコープと成果物を定められた期限を何としてでも達成することが最優先で、そのためには過度なハードワークも厭わず、そこに関わるメンバーやパートナーにも同じスタンスで接していました。
その一方、よりよいプロジェクトマネジメントのあり方を求めて、ベストプラクティスやフレームワークなどの知見を体系的にまとめたPMBOK(ピンボック)やリーダシップ論に触れて学びを深めていましたが、この本は実体験に基づく小説で説得力のあったこと、私自身が類似のプロジェクト経験を有していたことから、共感できる部分も多く一気に読了し、何度も読み返したことが記憶に残っています。
本書では、例えば問題処理票(=課題管理)を用いた進捗管理のように具体的な手法も紹介されていますが、まえがきに「プロジェクトメンバー一人ひとりのモチベーションを高め、維持していくことがプロジェクトを活性化し成功に導く」とあるように、特徴的なことは成功法則の根本は「人」や「チーム」にあるとしている点です。
このことは漠然と問題意識があった私にとって、この本はプロジェクトマネジメントに対してだけでなく、ビジネスパーソンとしての考え方や行動に変化をもたらすきっかけになりました。
今回の寄稿の依頼をうけて本書を改めて読み返してみたところ、企業での働き方やプロジェクト環境が当時とは変わっているのでストーリー部分は懐旧の念に駆られる部分もありましたが、成功の法則として述べられている内容については、20年以上経った今日のプロジェクトでも通用する本質的、普遍的な内容であることを再認識しました。
また、コロナ禍以降、リモートワークの普及などにより人とのつながりが希薄になってきていると感じることも多い昨今、本書のより重要性が増しているとも感じました。
5.この作品をおすすめするとしたら?
プロジェクトマネジメントに関心のある方にとどまらず、組織やチームのリーダーとしてリーダーシップやチームビルディングの在り方を模索されている方にも幅広く有益な内容になっています。特に現在苦労されている方にとっては成功に向けた示唆に加えて、前に進む元気ももらえる内容だと思います。
- 杦岡 充宏(すぎおか・みつひろ)
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- 慶應MCC客員コンサルタント
- 米国PMI認定PMP(Project Management Professional)
- 元PMI東京支部 国際委員会 委員
- 慶應MCC担当プログラム
- 外資系コンサルティングファームを中心に、30年以上にわたり経営・ITコンサルティングに従事。その間、アクセンチュア株式会社マネジング・ディレクター、KPMGマネジメントコンサルティング株式会社の執行役員等を歴任。近年では、企業のM&Aおよびグローバル化支援を手がける中で、大規模かつ困難なプロジェクトマネジメントに携わるとともに、「プロジェクトマネジメント」の普及・啓蒙活動にも注力している。
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