夕学レポート
2018年02月06日
戦略的PRの6つの法則 本田哲也さん
今回は戦略PRプランナーでありブルーカレント・ジャパン代表の本田哲也さんのお話を伺った。本田さんがいう、戦略的PRの6つの法則を聞いて、その世界がとても深く、広い世界につながっているものだと感じることができた。
PRの効果や目的は3段階に分かれている。第一段階はパブリシティの向上、第二段階はパーセプション・チェンジ、さらに第三段階はビヘイビア・チェンジである。社会的関心に訴求する商品やサービスの特性を、PRしたいものとして深く掘り下げて戦略的なPRをすることで、第三段階のビヘイビア・チェンジを促すことが、企業には求められる。第一段階のみ(広報の段階だと思う)を達成することで満足している日本企業は多いそうだが、戦略的PRの最終ゴールは第三段階の達成である。
戦略的PRの法則は、以下の6つである。
- 「おおやけ」:世の中のニーズや社会課題と商品や自社を結びつけるようなPR手法。講演では、アリエールがインドの男性にも洗濯を手伝うよう呼び掛けたキャンペーンを通じて、男女平等社会という課題と自社を結びつけたCMを事例として挙げた。
https://www.youtube.com/watch?v=AIr5btESyNA - 「ばったり」:データ解析技術の発展により、市民は自分の関心があることしかPRされていない世の中において、偶然出会ったと思えるような新鮮な情報提供を通じてPRすること。講演では、ニュージーランドのSPCAがシェルタードッグの里親探しのため、出身犬が車の運転を見せるCMが事例として挙げられた。
https://www.youtube.com/watch?v=BWAK0J8Uhzk - 「おすみつき」:インフルエンサーのお墨付きが得られているということを訴えるPR手法のこと。インフルエンサーには、商品の差別化要因を検証もしくは裏書する事実系インフルエンサーと、セレブリティ等の共感系インフルエンサーがいる。講演では、pigionのベビーカーが段差を乗り越えるときに振動が少ないことを科学的に立証したPRが例に挙げられた。
https://www.youtube.com/watch?v=8Hjbi573ZPw - 「そもそも」:普遍的であるけれども、潜在的で時流に忘れられた価値に訴えかけること。講演ではmomondoという旅行会社が、人は元来はるか先祖まで遡ればほぼ混血であるにも関わらず、愛国心や民族に縛られすぎていることをDNA検査を通じて訴えたCMが事例として挙がった。
https://www.youtube.com/watch?v=tyaEQEmt5ls - 「しみじみ」:見ている人の情緒に訴え、当事者意識を持たせること。「自分ゴト化」させるようなPRを指す。講演ではPhillipsの呼吸器疾患患者の合唱団に着目した医療用チューブのCMが紹介された。
https://www.youtube.com/watch?v=tvWadbj4huY - 「かけてとく」:ウィットや頓知にみられる機知とリアルタイム性に富んだコミュニケーションのこと。見た後に「やられた!一本取られた!」という感覚に陥るようなウィットにとんだものである。講演ではBerger Kingのハンバーガーを通じたLGBT応援CMが紹介された。
https://www.youtube.com/watch?v=KLao1_JA2uE
この講演を通じて最も印象的だったのは、本田さんが説明されるときに「広報」という言葉を一度も使わなかったこと。あえて、PR(Public Relations)という言葉を使っているのだと想定している。
「広報」の意味は「広く一般の人に知らせること」であるのに対して、「public relations」の意味は、組織や社会と良好な関係を保つことである。良好な関係を構築し、継続させることのほうが、広く人に知らせることよりも努力と戦略を要する。PRという言葉はむしろ「広報」という言葉と同様のニュアンスで使われているように思うけれど、PRはもっと奥が深くて、社会を動かすドライバーとして機能するのではないか。消費者の買い物促進を目的とする場合以外にも、さまざまな場面で「組織や社会と良好な関係を保た」なくてはならない場面は多くある。すごく広がりのある話だなと思った。
特に、自分を売り込みたい面接のときにも応用できる戦略だなぁ。特に、「おおやけ」や「しみじみ」は私自身が自分の面接で多用してきた。普段の職場では、アウトプットや成長というPRとは別のものが自分の評価を決めることがある。6つの法則すべてを自分で前もって用意しておくことは面接の質疑を考えると難しい気がする。一方で、私が多用している「おおやけ」や「しみじみ」は結構簡単に準備して戦略的に面接を進めることができないだろうか。
例えば、会社が抱える課題と思うものや、応募する部署に足りないと思う部分を自分がどのように解決することができるのかという「おおやけ」の視点は、うまく説明すれば面接官に響くと思う。さらに、自分が経験したことについて、面接官が自分ゴト化できれば、発言の説得力は一気に高まる。重要なのは、自分が面接を突破するには、面接先で自分の認知度を上げることでも、面接官の自分に対する印象を変えるだけでも足りないということ。面接官のビヘイビア・チェンジを促すことができて初めて内定の通知をもらえるのではないか。自分を「広報」することではなく、「PR」することができるよう、6つの法則を心に留めておくと、今後の面接が楽になるのかもしれない。
PRは胡散臭くアピールすることではなくて、思っていることを効果的に伝える術といえばよいだろうか。ちょっとした日常のコミュニケーションや親子間の会話なんかにも応用できそう。
沙織
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