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夕学レポート

2011年06月29日

プロセスにこだわる経営 辻井隆行さん

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パタゴニア社の創業者イヴォン・シュイナードは、ユニークな経営者である。
経営者としてのモットーは「MBA」。といっても”Master of Administration”ではない。
イヴォンの場合は、”Management By Absence(不在による経営)”
1年の半分は会社を留守にし、世界中の自然を渡り歩き、サーフィン、フライフィッシング、クライミングを楽しみながら、使用者の立場から自社製品への意見フィードバックをしているという。
「いい経営者は社員を見張らない」が口癖だと言う。
日本支社長の辻井隆行さんのキャリアもイヴォンに負けないくらいにユニークである。
大卒で就職した大企業を二年で退職。早稲田の大学院で「日本人の自然観」を研究した。
修了後は、シーカヤック専門店の店員やスキー場のパトロール、シーカヤックガイドで暮らしの糧を稼ぎながら、アウトドアースポーツにどっぷりと浸かる生活を送った。
パタゴニアに入ったのは三十歳を過ぎてから、パートタイムスタッフとして渋谷の店で働き始めたのがきっかけだったという。
二人とも、経営者になろうと思ってなった人ではない。好きなことにのめり込み、こだわっているうちに、いつのまにか経営者になっていた。
そんな感じであろうか。


パタゴニアは、理念追究型の企業である。
その徹底度がコーポレイトブランドの確立につながっている。
その点では、スカンジナビア航空やリッツカールトンと同じで、米国企業のひとつの類型と言えるだろう。
パタゴニアの場合は、理念そのものが、「環境」という地球規模の社会問題と合致していた。
それが、けっして大企業ではない同社が、大きな社会的影響力を発揮する企業になった理由でもあった。
例えば、パタゴニアが、オーガニックコットン素材しか使わないと宣言し、その通りに実行したことで、ナイキやリーバイスとったビックカンパニーが追随し、ついには巨人ウォルマートまでがオーガニックコットンにシフトを始めたという。
年間売上高300億円の非公開企業の行動が、年商40兆円の世界一の小売業の購買方針を変えるインパクトを持つのだ。
最高の製品をつくり、
環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。
そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する

パタゴニアのミッションステートメントは、このように謳いあげる。
辻井さんによれば、ひとつひとつの言葉には深い意味があるという。
「最高の製品」とは、プロのアウトドアアスリートの生命を守ることが出来る品質を意味する。従って、パタゴニアのウェアは、タウン向け商品であっても、プロ仕様の素材と縫製にこだわる。
「環境に与える不必要な悪影響を抑える」ために、素材生産国の労働条件にも気を配り、すべての直営店舗の電源はグリーン電力でまかなう。
「ビジネスという手段を用いた」から、社会への影響力が保てる。
コーポレイトブランドを確立したパタゴニアがオーガニックコットンにシフトしたから、ナイキもリーバイスも追随した。ウォルマートも動かすことが出来た。
辻井さんは、イヴォンの口癖であり、自らのマネジメントポリシーを紹介してくれた。
「アウトカム(結果)にはこだわるな! プロセスには徹底的にこだわれ!」
私は、中学校時代の恩師の教えを思い出した。
「人間の価値は結果ではなく、過程にある」
人間も、企業も、たとえ小さくともキラリと光る存在でありたい。
この講演に寄せられた「明日への一言」はこちらです。
http://sekigaku.jimdo.com/みんなの-明日への一言-ギャラリー/6月29日-辻井-隆行/
この講演に寄せられた「感想レポート」です。
・理念に基づく組織運営について(セリカ/会社員/50代/男性)

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