2015年04月14日
マンハッタンで家を買う<3>(オファーを入れる)
その後、エリアをアッパーイーストよりもう少し南に絞り込み、いくつもの物件を見て回りました。
こぢんまりとしてブティックホテルのような素敵なマンション、エージェントが「ここは働いている人”も”住んでいます」と説明してくれますが、意味がちょっとわからず。
つまり、セカンドハウスとして、だったり、若くして働かなくてもいい人たちなどもこのマンションには結構いるようで、普通に働いて、生活している人も、いるにはいる、という意味だそうです。ニューヨークでは全然珍しい話ではないそう。確かに、ロビーですれ違ったご夫人、連れているマルチーズと同じくらいツヤツヤの白髪を美しくカールさせてものすごくエレガントな雰囲気でした。
近所付き合いが難しそう or なさそう and 我が家はめちゃめちゃ浮きそう。パス・・・
また、別のところは、内装も素敵で良かったのですが、推定年齢70代のおじいちゃんがジムで、こちらが心配になるような前屈みフォームで、トレーニングマシーンの上を走っていましたが、マンション全体が本当に静かすぎて、人が住んでいるのかと思うくらいです。
かなりお年寄り比率が高そう。
そうすると、管理費もあがりやすいっていうし、ベビーカーで遊びに来てとか友達にめちゃめちゃ言い難いわ、ここ。ないな・・・
そうこうして、十数件程見たところで、突如うちのダンナ「ここにするか」と、ある物件にオファー(購入の意志表示)を入れると言うではありませんか。
はい、でたー
いつもの時間軸のズレ。
結婚すると決まってから式まで3ヶ月。アメリカ行くと言った2ヶ月後には渡米。
「え?ちょっ、、早くない?」と、毎度このスピード感に驚かされ、それでも近頃はだいぶ耐性がついてきたかと思っていましたがまだまだです。
今回の家探しも1年がかりと意気込んでいた私は、またしてもこのズレについていけず、「え?まだ見始めたばっかでしょ。もう決めるわけ?」と思わず、声が大きくなります。
ダンナ:「え?なんで、ここじゃだめ?なんか不安要素ある?」
私:「いやー、そういわれると別にないけど・・・でも早くない?」
ダンナ:「ないなら、いいんじゃないか?こういうのはタイミングだしな。」
私:「だけど、もっと見ればもっと安くていいのが出てくるかもよ。」
ダンナ:「1平方フィートあたりあれ以上安くて、管理費も予算内で、ソフト面も安定してる。ああいう物件があのエリアでそうそう出ると思う?まあ、出るかもしれないけど、いつかわからないし」
私:「まあ、そうだけど・・・・・・(理詰めでこられると困る)」
と、こうして今回もまた、こちらが度肝を抜かれる早さで、拍子抜けする間もなく、あっさりオファーを入れることに決まりました。
もっとじっくりいろいろ見て、ああでもない、こうでもない、と作戦会議しながら、ようやく出会えた「これだ!」というところに満を持してオファーを入れる。という長ったらしいシナリオを描いていた私としては、かなりのズッコケ感です。
でもまあ、オファーを入れるといっても、そもそもこちらの希望額で通るかわかりません。オールキャッシュで横取りされてしまうケースがあるとも聞くし、高い金額でビットしてきた人に負けるかもしれません。
まあ、オファー入れるだけならいいか。
と、売値より$100,000(約1,000万円)近く、低い金額でオファーを入れ、売り手側のセラーズエージェントから来た回答は、
「あなた方、なめるのも、いい加減にして下さいよ」かと思いきや、「あと少し金額を上げてくれたらオーナーはあなた方に即決しても良い、と言っています」とのこと。そして、どれだけ背伸びしても、もうこれ以上絶対ムリ、というこちらが出せる上限ギリギリの額が提示されました。
「いくか。」覚悟を決めたダンナ。
とはいえ、さすがに、いつもの能天気さはなく、過去の似た物件の売買履歴のリサーチ、将来予測のシミュレーションなどいつになくPCに向かう目は真剣です。そうこうして、最後は石橋を叩きながらも、大丈夫だろうと判断して前に進むことになりました。
そうと決まったら、これからいろいろ手続きが始まります。買えるかどうかわかりませんが、買うためのペーパーワークが山ほどあり、この作業を経て、実際に購入できるまでに約半年かかると言われています。
ところでニューヨークでマンションを買おうと思うと、コンドかコープか、ということになるのですが、通常、外国人が投資目的などで買うタイプのものは、コンドがほとんどです。しかし、今回、我が家はコンドより安く、選択肢の多いコープの方に手を出そうとしているので、手続きが非常にややこしいのです。
コープについては、以下サイトの説明がわかりやすいので抜粋しますと、
(cf: Brooklyn Time 「コンドvsコープ」)
例えば50世帯のビルがあると想像してください。そのビルを所有する会社があり、あなたはその会社の株式を購入することで、そのビル内の部屋に住む権利を得ることが出来る・・・これがコープです。
つまりあなたはその会社の株主になることで、その部屋に住む権利が出来るだけであり、あなたが購入したものは、そのコープの株式(シェア: share)であり、不動産ではありません・・・・
というわけで、その建物に住むに相応しい人物かどうか、収入はもちろん資産状況も詳細に、ファイナンス面を厳しく見られます。もちろん、職業、人物、過去の職歴、収入、全てを書類で、そして面接で証明しなければいけないのがコープです。
うう、、、これは大変そう。
まずは、エージェントから弁護士を雇うよう言われました。
家買うのに、弁護士って・・・。買えるかどうかもわからないのに数十万の出費、痛い。
それから、事前にローンを組むための承認レターは銀行から入手していたものの、いよいよ本当に借りるとなると、書類上の手続きの他に、いろいろ面倒なこともわかりました。
こちらにいくら以上の資産がないといけない、という厳しい制限もあったりして、急いで日本の預金をこちらに移そうとすると、折しも急激な円安・・・あと1日遅かったら数百万円損していた、、とヘンな汗をかきながらダンナは疲労困憊です。
次から次へと届く英文の契約書(極小文字)に、辞書を片手に目を通して、記入して、サインして。必要書類を取り寄せて。修正箇所や追加書類があれば、大至急加筆修正して、という目まぐるしい毎日がはじまりました。
推薦状はなんとダンナと私で3通ずつ必要とのこと。
家買うのに夫婦で、推薦状6通って・・・。どれだけ信用されてないんだか。
さらには、ここまで手続きを進めておきながら、ある日突然、やっぱりグリーンカード(永住権)がないとコープは買えない、という情報に狼狽したり、残念ながらローンの承認がおりませんでした、という銀行からのレターが届いて動揺したり、といろんなことがありました。結局、どれも杞憂に終わりましたが。
はぁーー
ニューヨークで家を買うって本当に大変。
これらのペーパーワークをダンナの時間軸で、1ヶ月ちょっとでゴリゴリやって、分厚い契約書のファイルが3冊完成しました。
そんな苦労の末にようやく先日「In Contract(成約済み)」となりましたが、でも、これで買えたわけではありません。この後、書類が通ればボードメンバーとのインタビューがあり、最後クロージングと呼ばれる締結が終わって初めて「買えた」ということになるそうです。
長い・・・・
当面は、書類審査の結果を待って、インタビューの連絡がくることを祈るばかりです。
どうなることやら。
- 寺尾 美香(てらお・みか)
- 慶應丸の内シティキャンパスで4年9カ月間ラーニングファシリテーターとして多くのプログラムを担当。2014年4月よりNY在住。
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