2016年12月13日
お寺 is Wonderland!
今年もあと半月。仕事に限らずイベントごとも増える時期ですね。
日頃忙しい皆様も、年末年始は参詣を予定されているのではないでしょうか。
パリならノートルダム大聖堂。
フィレンツェならドゥオモ。
私たち日本人が海外旅行で定番スポットを訪れるのを楽しむように、海外からの旅行者にとっても、日本にせっかく来たのなら有名な神社仏閣に訪れてみるのは定番なようです。
今回は、外国人観光客の目線で、浅草寺を巡ってみたいと思います。
* * * * *
「ここがガイドブックに載っていた Red Lantern か」
Matt さんは、昨日初めて来日したばかりのイギリス人。まずは東京の定番スポットを、ということで私 Kimmy と一緒に都内最古の寺院、浅草寺を訪れてみました。
「あの漢字はなんて書いてあるんですか?」
「雷門、と書いてあります。Thunder Gate の意味です。雷門というのはニックネームで、正式には風雷神門というんですよ。門の両側にいらっしゃるのが Wind God と Thunder God です」
「なるほど。彼らはこの門の Guardian なのですね。ヒンズー教の神様に似てますね」
「雷門を守っているのはこの二対だけではありません。提灯の底を覗いてみてください。何か見えますか?」
「Dragon がいますね。中国の影響ですか?」
「それもあるかもしれませんが、一番大きな理由は、Dragon というのは水の神様だということです。日本のお寺や神社は、木と紙でできているでしょう?そのため、火事に大変弱いのです。ここ浅草寺も、何度も火事で焼失しながら、その度に建て直されているんですよ。今の雷門は、パナソニックの創業者である松下幸之助氏の寄付によって戦後再建されたものです。よく見ると提灯の下に「松下電器産業」の文字が書かれているんですよ」
「Panasonic!「松下」という漢字はそういう意味なんですね」
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「これからお寺の本堂に向かいますが、仏様と会う前にここで身を清める purify ourselves します。お作法はお寺も神社も一緒ですから覚えてくださいね。まず右手に柄杓を持って・・・、口をすすぐ Rinse my mouth 時には、柄杓に直接口をつけないで、手で小さなティーカップを作って、そこに水を入れて口に入れてくださいね」
「あ!うっかり飲んでしまいました!前にTVで見た茶道 Tea ceremony みたいで、やってみると案外難しいですね~」
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「お参りの方法はYou Tubeで予習してきました。お金を入れて手をパンパン!と叩いてお辞儀をするんですよね?」
「惜しい!手をパンパン、と叩くのは神社 Shrine、つまり神道の考えなんです。さきほどヒンズー教のお話が出ましたが、神道は同じく多神教です。八百万の神といって、万物に神様がいるという考え方です。「神様は普段神社の奥深くで眠っていらっしゃるから、パンパンと手を叩いて、来たことを知らせる」のだと、私は子供のころに聞きました。だから神社には大きな鈴があるところもあります」
「面白い!玄関チャイムみたいですね」
「一方、お寺には御本尊となる仏像が目の前にありますから、手を叩いて起こす必要がないのです。なのでここではお賽銭を入れたら Throw change in the offering box、目をつむり、合掌して頭を下げ、静かに祈りを捧げます」
「よく見たら、日本人の参拝客はお財布からコインを探していますね。お賽銭用に何か特別なコインが必要なのですか?」
「ごろ合わせなのですが、お賽銭ではよく5円を使うんですよ。ご縁、Good Relationship という意味なので。なければ他のコインでももちろん大丈夫ですよ。海外のコインでもきっと神様は受け取ってくださいます!」
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「参拝客が小さい紙を見ながら盛り上がっているようですが、、、何をしているのですか?」
「おみくじ fortune-telling paper です。箱の中から棒を一本取り出して、そこに書いてある番号の引き出しを開けると、大吉や凶といった占いが書いてあるんですよ。こちらのお寺は英語の説明文もあります。」
「面白そう!私もやってみます。えーと・・・やった!大吉です!旅先で幸運に恵まれる、と書いてあります。嬉しいなぁ。でもこれ、凶が出たらとてもショックですね。」
「その場合は、境内の木の枝におみくじをくくりつけるんです。凶運を置いていくことが出来るんですよ。ちなみに明治神宮のおみくじは、ご祭神の明治天皇と昭憲皇后が和歌の名手だったこともあり、和歌に載せたメッセージが書いてあるので興味深いですよ。」
* * * * *
「あれはなんですか?煙があがっているところに人がたくさん群がっているようですが・・・」
「香炉、Incent Burner ですね。あの煙を身体の悪いところに浴びると、その箇所が治ると言われているんですよ。やってみますか?」
「では、時差ボケがまだ酷いので、頭に浴びてみます。あとはこれも・・・」
「? iPhone に煙をかけるのですか?」
「祖母の写真です。最近膝が痛いというので、日本には来れなくても、せめて写真に煙を浴びさせてあげようと思って。」
「なるほど!では、せっかくだからお守り lucky charm を買うか、絵馬 votive tablet を書いてみてはどうですか?」
「お守り?絵馬?」
「お守りには色々な種類があります。学業、健康、恋愛、長寿・・・それぞれのお寺や神社でオリジナルのデザインがありますから、お土産に買っていかれる方も多いですよ。絵馬は、お願い事を書いて、お寺に奉納します。」
「仏様や神様へのお手紙みたいですね。では絵馬を書いて、旅の思い出に、長寿と健康のお守りを祖母に買って帰ることにします」
* * * * *
いかがでしたでしょうか?今回ご紹介したやりとりは実際の会話のごく一部で、海外からの旅行者にとって、お寺・神社は見たことがないものだらけの Wonderland なのだそうです。
年末年始に訪れる際には、ぜひ外国人の目線で、興味深く観察してみてくださいね。そして、慣れない参拝で困っている外国人旅行者を見かけたら、どうぞ声をかけてお手伝いしてあげてください。きっと素敵な旅の思い出になると思います。
- 山内 久未(やまうち・くみ)
- 慶應丸の内シティキャンパスで2年間ラーニングファシリテーターとして多くのプログラムを担当。退職後、約2年間の勉強生活を経て2015年春より通訳案内士(通称:通訳ガイド)として日々奮闘中。
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