ファカルティズ・コラム
2009年07月24日
「俺はデキルヤツ」と勘違いしている人に対処する
世の中には、「他人がどう言おうが気にしない」という人がいます。
これは一見カッコイイかもしれません。
たとえばシアトルマリナーズのイチローなども、この姿勢で自分のスタイルを貫き、日米でスーパースターになりました。また、選手時代から一貫して「オレ流」を貫く落合監督もそうでしょう。
しかしイチローや落合監督ほどの人物ならいざしらず、我々はそれで良いのでしょうか?
イチローや落合監督がこの姿勢を貫けるのは、結果を残しているから、つまり成果を出しているのだから、そのプロセスに対しては口出ししてくれるなということでしょう。
逆に考えれば、成果を残してもいないのにプロセスに口出しするな、というのは単なるワガママでしかないとも言えます。
皆さんの周りにも、とてもそうは見えないのに「俺はデキルヤツ」と勘違いしている人はいませんか?
この手の人々は、『成果を出していないのに出している』と思っているタイプと、『成果を出していないことは自覚しているが、本当は出す力はある』と思っているタイプに分けられます。
前者は周囲からの期待値に対して、本人の成果に対するハードルが低いことの現れです。
ではなぜハードルを低く設定してしまうかといえば、「自身の能力を過小評価している」ケースと「環境的にこの程度の成果でも仕方がないと考えている」ケースが考えられます。
どちらにせよこのタイプには、期待値をできるだけ定量化して伝え、少し高めのハードルに挑戦する意義を説いていくしかないでしょう。
私の職場での人材マネジメントの基本である“ストレッチ”や、多くの企業が行っている目標管理制度は、これを意図した仕組みです。
さて、やっかいなのは後者のタイプです。
このタイプ、往々にして「俺はまだ本気出してないだけ」と考えています。
成果を残せないことを人のせいにしていないだけまだマシ(笑)とも言えますが、その原因を自分のモチベーションだけに求めてよいのでしょうか。
いや、実はそのモチベーションの低さを他者に転嫁していることも多いはずです。
だからマネジメントの立場として、成果に対する評価をキッチリ行うだけでなく、少なくとも『プロセスに対する評価に真摯に耳を傾けさせる』必要があります。
そもそもプロセス、つまり「仕事のやり方」について、自己評価は不可能です。
「自分のことは自分が一番わかっている」というのは幻想に過ぎません。
これは別に“悪いところ”だけではありません。
人間は自分の“良いところ”も、全て把握しているわけではないのです。
ところが人は自分を正当化しようとしますから、褒めてくれる人の声にしか耳を傾けない人もいます。
「私は褒められて伸びるタイプです」と本気で言う困った人はあなたの周りにいませんか?
これが部下や後輩ならまだ矯正の余地がありますが、なまじ権力があれば、これは“裸の王様”を生む要因にもなってしまいます。
そんな“裸の王様”に率いられた組織の将来は・・・
さて、話しを戻しましょう。
こうした「俺はまだ本気出してないだけ」と勘違いをしている人に、『プロセスに対する評価に真摯に耳を傾けさせる』には、どうすればよいのでしょうか。
私は、まず最初にやるべきは『変わることの重要性を認識させる』ことだと考えます。
「今のままの自分で問題ない」というのは間違いであることを伝えるのです。
「強い者が生き残るのではなく、環境に対応して変化した者が生き残る」というダーウィンの言葉にもあるように、人も「変わるか、さもなくば死ぬか」を選択するしかありません。
しかし「変わる」と言ってもこれは『変身』することではありません。ダーウィンの言葉の通り『進化』、今の言葉で言えば段階的に少しずつ『バージョンアップ』していけば良いということも併せて認識させるべきです。
そして次に「変わりたかったら他者からの評価を聞くしかない」ことを伝えましょう。
ちなみにイチローや落合監督にしても、最初からプロセスに対する評価に耳を貸さなかったわけではありません。誰よりも優れた成果を出してから、つまりプロセス部分を確立したと確信できて初めて「オレ流」を貫けるようになったのです。
また、彼らも今の自分に満足しているわけではなく、常に試行錯誤しながらバージョンアップを行い続けています。
そうした話しも絡めつつ、前々回のエントリーでお話ししたストーリー・テリングを使って、あなた自身の具体的な体験談で語ってあげると共感が得られやすいでしょう。
そうして聞く耳を持ってもらったら、プロセスに対する評価とアドバイスをすれば良いのです。
またその時には、『良い部分も必ず伝える』ことと、一方的な評価とアドバイスだけでなく、『一緒に考える』ことも意識してください。
ところで、一人の人間がその状況によって『成果を出していないのに出している』と『成果を出していないことは自覚しているが、本当は出す力はある』と思っているタイプになることもあります。
実際私がそうでした(笑)(汗)
本当に困ったヤツだっただろうと、今では思うことができます。
こんな私が考えを改めたのは、それでも我慢強く評価・アドバイスをしてくれた上司や同僚のおかげです。
だから気づけました、「評価してくれる人は敵ではなく仲間だ」と。
今さらながら・・・ありがとうございました!
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