ファカルティズ・コラム
2007年02月05日
“考え抜く”習慣をつけよう(2)
前回のエントリーでは、“考え抜く”ために意識すべき『4つの疑問符』のうち、「Why?」について解説しました。
今回は「Why?」と同様、“深く考える”ための疑問符である「True?」についてお話しします。
(2) True?(ホント?)
まずは以下の某新聞の広告コピーをご覧ください。
『今年も大学入試で出題数ダントツNo.1!』
大学入試を控えた受験生やその父兄の立場でこの広告を見ると、どう思われますか?
「やっぱり○○新聞を取った方がいいのかなあ」
と思われましたか?
そう思われたあなた。「もう少し深く考えましょう」と言わせていただきます。
この広告、『今年も大学入試で出題数ダントツNo.1!』という事実しか書かれていませんが、真に言いたいこと(メッセージ)が、『大学に合格したいのなら○○新聞を取ってください』であることは明白です。(ちなみに広告では、このように“客観的事実のみ述べてメッセージを想起させる”、という手法はよく使われます)
ここからは論理展開の基本である演繹法を使って考えてみましょう。
演繹法とは、観察事項(情報)をなんらかのルール(一般常識や法則等、論理の拠り所となる前提条件)に照らし合わせて結論を出す論理展開です。
では、『今年も大学入試で出題数ダントツNo.1!』という情報(観察事項)から、『大学に合格したいのなら○○新聞を取ってください(取るべき)』というメッセージ(結論)を成立させるためには、どのような前提条件(ルール)が必要でしょうか。
そう考えていくと、ここでは『出題される記事を事前に読んでおけば受験に有利(問題で正解を出しやすい)』という前提条件が見えてきたはずです。
このルールに『今年も大学入試で出題数ダントツNo.1!』という観察事項を照らし合わせると、確かに『大学に合格したいのなら○○新聞を取るべき』という結論は成立します。
しかしながら、この一般常識に見えるルール、これってホント(正しい)でしょうか?(True?)
確かに新聞を読むことが受験に不利には働かないでしょう。しかし、『出題される記事を事前に読んでおけば受験に有利』と本当に言えるのでしょうか? 「なんとなくそんな気がする」程度ではありませんか?
読んだ記事が出題され、覚えていたため、白抜きされていた「ここに入る4字熟語は何か」という設問で正解を出せた、ということが無いとは言えません。ですが、「タマタマ読んだ記事が出て」「タマタマ覚えていて」「タマタマ白抜き部分を答える設問だった」というラッキーな事態はそう起こるとは考えられません。毎日の新聞記事の膨大な情報量を考えれば、宝くじで1億円当てるのとどっちが確率が高いでしょうか。
また、国語の試験で「筆者の言いたいことを100字以内で述べよ」という設問であれば、記事を覚えている意味はほとんどなく、新聞を読む時間を問題集を解く時間に使った方がいいくらいです。
いかがでしょう。
これが「True?」の使い方の一例です。
別の例もひとつご紹介しましょう。
「彼の血液型はA型だ」という情報から「彼はきっと几帳面な人だ」という結論を出すのは、「A型の人は几帳面」という前提条件(一般論というルール)に照らし合わせているからですね。
ですが、この前提条件もまた何の科学的根拠もない胡散臭いものです。
それなのにこれを疑おうともしない人の、なんと多いことでしょう。
(いや別に血液型診断のような他愛もないものに目くじら立てる必要はないのですが(笑))
他者が言ったこと(メディアの情報も含む)を鵜呑みにせず、どんな前提条件でそういうことを言うのかを考えてみる。
前提条件が見えてきたら、それを「ホント?」と疑ってみる。
演繹法の前提条件は、一般論や常識の場合も多いですから、それを疑う。
これもやはり“自分の頭で考える”ということに他なりません。
もし全ての人がこうして“自分の頭で考えられる”ようになれば、「人にだまされる」という悲劇もかなり減ると思うのですが。
前回の「Why?」と併せて、この「True?」も、“深く考え抜く”ための呪文として、ぜひ意識して活用してみてください。
ところで今回ネタとして取り上げた某新聞の広告。
別に私は、この新聞社を貶したいわけでも糾弾したいわけでもありません。
そこのところ誤解のなきようお願いします。
実は・・・自戒を込めてカミングアウトすると・・・
私も高校3年の時、この広告を見てこの新聞を取るようになった過去を持っているのです(笑)
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