ファカルティズ・コラム
2009年09月18日
“市場シェア”の考察(2)
「市場シェアはどのくらいを目指すべきなのか?」
前回に引き続き、この問いについて考えてみたいと思います。
まずは目安として、前回お約束した「クープマン目標値」をご紹介しましょう。
【クープマン目標値】
1.独占的市場シェア・・・73.9%
→絶対安全かつ市場をほぼ独占した状態
2.相対的安定シェア・・・41.7%
→3社以上の競争関係においてトップを取り、安定的に利益を確保できる状態
3.市場影響シェア ・・・26.1%
→トップでなくとも市場に強い影響を与えられる状態
4.並列的競争シェア・・・19.3%
→各社横並びで熾烈な競争を繰り広げている状態
5.市場認知シェア ・・・10.9%
→競合や顧客に広く認知されているが、市場への影響力はほとんど無い状態
6.市場存在シェア ・・・ 6.8%
→完全に「その他」扱いで、なんとか生き延びている状態
皆さん、これを見てどう感じましたか?
「ああ、並列的競争シェアである我が社は、確かに熾烈な競争をしてるな」と思われた方、また「だから一般的に『40%のシェアを目指せ』って言うんだな」と思われた方もいるかもしれません。
しかし、「でも業界によって一概にこれが正しいと言えないのでは?」と思われた方もいるはずです。
確かにその通り。
つまり『市場特性』を加味して考えなければ、単に「○%のシェアを目指せ!」という尻叩きの道具にしかならないわけですね。
さて、ここで注意すべきポイントが3つあります。
そのひとつが『相対シェア』。
たとえば自社が45%のシェアでトップの場合、「相対的安定シェアだから安心」と言えるかどうかは、競合他社のシェアによって違ってきます。
第2位のライバルのシェアが44%の場合と15%の場合では、まったく状況は違ってくるのは当然です。
そしてそれ以上に重要なのは、市場における『プレイヤーの数』でしょう。
たとえば自動車業界(メーカー)には、日本市場においてどのくらいのプレイヤーが存在するでしょうか。
トヨタ・日産・ホンダ・三菱・マツダ・スバル・スズキ・ダイハツといった乗用車の他、日野やいすゞのようなトラック専門、そしてメルセデス・BMW・フォード・GM・ルノー・シトロエン・プジョー・アウディ・ポルシェ・フェラーリ・・・まだありますね(笑)
結構あるものです。
次に携帯電話のキャリアは?
ドコモ・au・ソフトバンク・ウィルコム(PHSのみ)・イーモバイル(データ通信のみ)とかなり少なくなります。
では、外食産業は?
駅前の食堂や港町の居酒屋まで入れれば、それはもう星の数ほどのプレイヤーが存在します。
約5000億円の売上でトップに座るマクドナルドでさえ、外食産業全体では2%のシェアしかありません。
しかしマクドナルドが「その他」扱いのプレイヤーかと言えば、誰もそんなこと思わないはずです。
もうお気づきでしょう。
そう、市場シェアを語る際の3つ目のポイントであり、最も重要なのが『市場の切り方』、つまりカテゴライズです。
マクドナルドは確かに外食産業全体ではシェア2%ですが、ハンバーガーチェーンという市場の切り方をすれば、ダントツの約75%、つまり独占的市場シェアなのです。ちなみに第2位がモスバーガーの15%ですから、相対シェアの観点からもいかにマクドナルドが一人勝ちかがわかります。
自動車業界にしても、トヨタのシェアは業界全体では約30%ですが、乗用車という切り方では約48%。相対的安定シェアと言えます。
さて、これらを踏まえて最初の問いに答えるとすれば・・・
「『市場シェアはどのくらいを目指すべきなのか?』を考えるためには、まず『どのようなカテゴリで戦おうと思っているのか?』、つまり市場の切り方を明確にすることが先決だ」
となります。
前回例として出したビール業界で言えば、「ビール系飲料全体か? 第3のビール市場か? それとも麦が主原料のリキュール市場か?」といったことを決めなければなりません。
つまりそこでは「市場を細分化して考えるべきか否か」、そして「細分化した際の市場の成長性はどうか」という議論が終わっていることが大前提となります。
そこまで終わっていて初めて、プレイヤーの数とその強さを自社と比較し、クープマン目標値のどのあたりを狙うべきかを考えるべきなのです。
マクドナルドを例に取れば、相対的安定シェアをどこで狙うのかを以下のように考えることができるはずです。
(1)外食市場全体で狙うのか?
→これは不可能。
(2)ハンバーガーチェーン市場で狙うのか?
→既に独占的シェアなので検討の必要なし。
(3)ランチ市場で狙うのか?
→コンビニもライバルとなるので厳しいが検討の余地あり?
(4)カフェ市場で狙うのか?
→この分野が伸びているとしたらねらい目では?
(3)(4)では市場規模の算出も必要となりますが、こう考えることはマーケティングの要諦であるターゲットドメイン検討の第一歩でもあるはずです。
あなたの会社の『本当にシェアアップを狙うべき市場』はどこですか?
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