KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2009年12月24日

女子校で戦略論の講義

メリークリスマス!
とお約束の挨拶で始めさせていただきましたが、これが本年ラストのエントリーとなります。
皆さんにとって今年はどういう年でしたか?
少しだけ光が見えてきたとはいえ、デフレも止まるところを知りません。
政権交代も流行語大賞を取るほどの重大ニュースでしたが、内閣支持率の急落を見ても、国民にとってまだプラスにはなっていないようです。
社会人教育の業界もご多分に漏れずなかなか厳しい状況ですが、私個人としては2冊目の著書の上梓やコンテンツの拡充など、なかなか充実していた1年だったように思います。


まあ反省点も多々あるわけですが(笑)


そんな私の今年のトピックのひとつが、『初めて学生さん対象に講義を行った』ことです。

とはいえ仕事でやったわけではなく、娘の通う中高一貫の女子校で高校一年生を対象とした進路指導の一環で協力させていただいたのです。
そして私が選んだテーマは『夢をかなえる戦略』。
「女子高生に戦略論?」と思われるかもしれませんが、「戦略とは差別化」「戦略とは選択であり、やらないこと(捨てること/諦めること)を決めること」という戦略論の基本は、人生においても重要な示唆を与えてくれますから。
もちろん戦略論をそのまま語ってもみんな寝てしまうこと確実(笑)ですから、
◆ただ夢を見る・語るのではなく、夢の“その先”と“かなえ方”の両方を考えよう。
 →戦略のヒエラルキー(いわゆるミッション・ビジョン・バリュー)の応用。
◆夢にたどりつくまでの「他人と違う道」を見つけよう/切り開こう。
 →まさに差別化の話。
といった内容にかみ砕いて、私のこれまでの人生における選択や手段も交えてお話しさせていただきました。
また、最初に“夢”を
(1)睡眠時に生じる、ある程度の一貫性をもった幻覚体験
(2)将来実現させたいと心の中に思い描いている願い
(3)現実とかけはなれた考え。実現の可能性のない空想
という3つの定義で説明し、(3)を(2)に前進させ、さらにそれを実現させるためには、行き当たりばったりでなく戦略が必要になることを述べました。
そして彼女たちに「(2)だと言える夢がある人?」と問いかけたのですが、手を挙げたのは数名でした。(まあ、恥ずかしくて手を挙げなかった人もいるでしょうが)
そして前述のように戦略の話に入ったわけですが、私はその後こう言いました。


「先ほど手を挙げなかった人、なんにも心配することはありませんよ」


夢を持ち、それに向かって努力するのは素晴らしいことですが、だからと言って全員が明確な夢を持たなくてもいいはずです。
ハローワークの視察で、そこを訪れていた若者に「君達は夢はないのか。まずちゃんと夢を描いてから職を探さなきゃ・・・」と言っていた某首相経験者は、そんな単純なこともわかっていなかったわけです(笑)
「就職は結婚のようなもの」とよく言われますが、夢を描いてからそれを最短距離でかなえるために計画を立てるのは、「結婚相手を決めてから、どうやってお近づきになろうかを計画する」ことと同じです。
まあそうやって結婚できた人もいるでしょうが、その人にしてもそこまで様々な異性と付き合ってきているケースがほとんどでしょう。
そう、夢を拙速に決めずに色々な経験をしてみて、そして進路を決めたって何の問題もないのです。というか、そちらの方がよっぽど健全だと思うのです。
だって寄り道や道草は楽しいですし、寄り道の中から最短経路では見えなかった「本当になりたい自分」が見つからないとも限らないではないですか。
ところが多くの大人達は「夢を持て」と子供達をなかば脅しているわけですね。
これは大人達が「楽をしたい」からではありませんか?
『夢をかなえる戦略』というタイトルでありながら、本当に私が彼女たちに伝えたかったメッセージはこれでした。
「今、夢がなくても焦る必要なんて無い」
「興味のあることにはどんどんチャレンジして経験しよう。本をたくさん読もう」
「そして夢がはっきり見えてきたら、戦略的にそれをかなえよう」


おかげさまで、誰一人居眠りすること無く私の話を聞いてくれました。
教室を出るとき、何人かが「めっちゃ面白かったです!」と声を掛けてくれました。
またその後のアンケートでも、
「夢は自分のためではなく、世の中のため人のためにかなえるものだということを忘れてはいけないと思いました。自分の個性を活かして自分にしかできない仕事をできるようになりたいです」
「具体的に自らの仕事での経験をもとに話をしてくださいましたが、これからの勉強にも通じると思いました。夢に向かって一直線というだけではなく、これからの高校生活や大学でいろいろな寄り道をしてみようと思いました」
といった嬉しい反応があったようです。
私にとっても本当に良い経験になりました。


お子さんの進路で悩まれている方も、そして自身のキャリアについて悩まれている方も、年の瀬のこの時期、今一度夢について考えてみてはいかがでしょうか。
それでは、良いお年をお迎えください。
来年もよろしくお願いします。

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