ファカルティズ・コラム
2010年04月22日
マスメディア不要論に反論する
「マスメディアはもはや不要」
と言う人がいます。それも結構な数。
論拠はだいたいこんな感じ。
◆テレビのニュースや新聞など見なくてもネットで情報が取れる。
◆Twitterの方が情報も早く、メディアの主観が入らないから事実がわかる。
◆スポンサーや国家権力に阿(おもね)ったメディアの偏向報道は酷い。
◆報道だけでなく、テレビのドラマ・バラエティなども低レベルで見る価値無し。
確かに同意できる部分もあります。
(ただ、ここでは「ネットの情報も現時点では新聞社・通信社などのマスメディアが発信地になっているものがほとんどなのですが」というツッコミは置いておきます)
だから私が気になるのは、こうした主張の論拠の正しさではありません。
私が気に入らないのは、こうした『マスメディア不要論』を唱える方から臭ってくる、「オレって優秀で、時代の先端を走っている」というある種のエリート意識なのです。
この手の方々は、「今は情報は与えられるものでなく、自分で取りに行くもの」「自分でも情報を発信しないと、有益な情報も集まらない」と宣う傾向にあります。
うんうん、私も研修などで同様のことを言いました。
ただ研修の相手は、一流企業で今後会社を引っ張っていくことが期待されている方々なわけで。
何を言いたいのかというと、
「情報が与えられるのを待つ」ことは悪いことですか?
「国民全員が能動的に情報発信すべき」と本当に思いますか?
ということです。
もっと具体的に言えば、私は「自分で情報を取りに行くのがメンドクサイ人は、新聞やテレビから与えてもらえば良い」し、「情報発信したくない人に無理にブログやtwitterなんぞを勧めなくても良い」と言いたいのです。
世の中には様々な人がいます。
技術的/経済的な理由でパソコンが使えない人は大勢います。
また、性格的に自分から情報発信することが嫌な人もたくさんいるのです。
事情、都合、趣味嗜好、人それぞれですよね。
そうしたアタリマエの事実があるにも関わらず、『マスメディア不要論』の方々は、
「これからは○○しなきゃ」( ̄ー ̄)ニヤリッ
としたり顔で語っているように思うのです。
「そんなことはわかってて言っている」のであれば、なおさら「オレって優秀で、時代の先端を走っている」ということをアピールしたいだけではありませんか?
今後のあるべき姿はそうなのかもしれない。
そしてあなたはできているのかもしれない。
しかしだからと言って、それを一般化し、ましてや他人に押しつけるのはやめてほしいのです。
さて、そして私はそうした方々を非難したいだけではありません。
情報の受発信を能動的に行うことは素晴らしいと思いますが、こと受信に関しては、「能動的なだけでは損をする」ということもわかってほしいのです。
マスメディア不要論、特に「新聞なんかいらない」という方は「新聞は自分に不要な情報にもお金を払うのが無駄」と言います。
しかし私は逆に聞きたい。
「あなたは本当に自分に必要な情報が何かを知っているのですか?」
そう、必要な情報だと自分が思っているもの「だけ」が必要な情報とは限らないのです。
私は新聞が他のメディアに対して絶対的に優位な点は、その『紙面の面積』にあると思っています。
一目で膨大な情報のインデックスが概観できるのは新聞だけです。
必要だと思っていない情報も、否応なしに目に飛び込んできます。
そうした「一見不要な」情報が、実は有益な情報だった・・・こうしたケースは誰も否定できないでしょう。
私自身探していた情報とは全く無関係の記事から、仕事のヒントをもらったことは何度もあります。
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以前これを主張した時、「大画面テレビは新聞より面積がデカい」と反論してきた人がいたので、「小さな画面で見ている人は無視かい!」とお約束のツッコミをしておきました(笑)
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時間がないときは確かに必要な情報だけを(たとえばRSSリーダーなどを使って)ザッとチェックすることも必要でしょう。
しかし時には選り好みせずに『情報のシャワー』を浴びることも必要だと思うのです。
それに適したメディアが新聞やテレビなどのマスメディアです。
先に述べたように新聞やテレビに頼っている人が少なからずいる以上、マスメディアはそう簡単に無くなりません。(ただ、淘汰は必要だと私も思います)
であれば、あるものは賢く使えばいいのです。
『マスメディア不要論』などという不毛な論陣を張るよりも、
「テレビとソーシャルメディがどう融合したら面白くなるのか?」
とか
「iPadを新聞を補完するメディアとしてとらえるとどんなビジネスチャンスがあるのか?」
なんてことを考えた方が前向きだし、確実に面白いと思いますよ?
さきほど「時には選り好みせずに『情報のシャワー』を浴びることも必要」と言いましたが、twitterで数千人をフォローするというのは、まさに情報のシャワーを浴びているわけですね。
このようにマスメディアに近い特性も持つtwitterは、既存マスメディアとネットメディアの架け橋となる可能性を秘めていると思います。
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