KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2007年03月15日

自分のことを棚に上げよう

思考力やコミュニケーション力は、何か知識を憶えたら身につくというものではなく、トレーニングを通して文字通り「身に付ける」ものです。
これらは速く走るということと同じ“スキル(技能)”ですから、私の講座や研修ではトレーニングの場としての演習を大事にしています。
そして、その演習は「ただやるだけ」ではあまり効果は望めません。
重要なのは、その演習を振り返り、「何ができていて何ができていなかったか」「そしてそれはなぜか」「今後はどのようなポイントに気をつければいいのか」等をしっかりと省察することです。
しかし、この作業をひとりで行うのはなかなか難しいのも事実。
そこで“他者から評価してもらう”ことが、効果的・効率的と言えるのです。


そこで、私の講座や研修では、何度も『相互評価』を行っています。
宿題や個人演習の成果を隣の人と見せあいっこして、「この点は考えてないの?」「ここはこう考えることもできるのでは?」と質問やアドバイスをもらう。
グループ演習の成果を発表して、「なぜそう考えたの?」「少し論理の飛躍があるのでは?」と質疑応答やツッコミ合いをする。
そうすれば、「ああ、確かにそうだ」「う・・・考えてなかった」と自分の考えの甘さを反省したり、「なるほどね、だとするとこういう点も考えられるな」と新たな気づきが触発されたりするわけです。
このプロセスこそが、『学び』において重要だと私は考えます。
実は私自身、受講生の方からの質問やツッコミから、多くのことを今も学ばせていただいてます。
そうして日々講義のコンテンツや私自身を、バージョンアップさせているのです。
そしてこうした『相互評価』の場において、私が必ず“ルール”として説明することがあります。
それが「自分のことを棚に上げて質問やアドバイスをする」ということ。
自分や自分のグループの、演習のプロセスや結果がどんなに酷いと思っていても、他者にはそれを棚に上げて遠慮無くツッコむ。これが必須です。
人は、自分の悪い点は意外とわかっていません。ところが、他人の悪い点ならすぐ気づきます。
自分の“癖”を、他人から言われて初めて気づいたことがありませんか?
逆に、他人の“癖”がやたら目について、気になったことはありませんか?
思考やコミュニケーションは、習慣によって形成されます。
悪い習慣が身についていれば、それは自分では気がつかない悪い癖として定着してしまうのです。
だからこそ、相互評価で「他者から指摘してもらって気づく」必要があるのです。
その大切な指摘を行う時に、自分に自信がないからといって遠慮して言わなかったらどうでしょう?
相手は自分の“悪い癖”に気づくことができなくなり、貴重な『学び』の機会を無駄にしてしまうのです。これは相手にとっても失礼なことです。
ですから、どんなに自分自身や自分の解答に自信が無くても、それはいったん棚に上げて相手に対して遠慮無くツッコまなければなりません。
確かに日常の場面では、相手との人間関係を考慮してツッコまない方が幸せな場合もあるでしょう。ですが講座や研修なら、全員が学ぶために来ているという共通認識があるはずですから、本来もっとツッコんでもいいはずです。
さあ、皆さんもこれ以降参加する講座や研修で相互評価の機会があれば、大いに「自分のことを棚に上げた」ツッコミ合いを行ってください。
「桑畑という講師がこんなこと言ってたから」と言っていただいても結構ですから(笑)

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