ファカルティズ・コラム
2013年03月22日
説明の『顧客』は誰か
昨日は私の担当講座『ビジネスプロフェッショナルの説明力』の最終回でした。
最終回は大プレゼンテーション大会。
6つのグループに分かれ、与えられたテーマで15分ずつ発表します。
これまで学んだ「アタマとココロの両方で納得できる」説明ができるかどうか。
ロジカルかつ共感性の高いプレゼンの腕を競います。
彼らのアウトプットはとてもレベルの高いものでした。
もちろん課題はそれぞれあるものの、格段にスキルアップしていました。
その後投票で最優秀チームを決め、最後に私からクロージングの言葉を贈ります。
私が最後に話したのは、「説明の『顧客』は誰かを考えてください」ということでした。
「講座の初回でお話ししたように、説明のゴールは『人が動く』ことです」
「あなたの説明にアタマとココロの両方で納得し、あなたが望む行動をとってもらうこと。それこそが『説明が成功した』と言える状況です」
「だから動いてほしい相手、つまりターゲットを明確にしなければ、説明の内容、そしてそのその伝え方も考えられるわけもありません」
「しかし、『誰』という観点において、説明の『ターゲット』だけでなく、『顧客』も明確にしてほしいのです」
さて、説明の『顧客』とはだれを意味するのでしょうか。
これは、説明によってターゲットが動き、その結果として恩恵を受ける人、つまり『受益者』を意味します。
トップに対する販促策の提言が受け入れられて、その結果商品の売上が伸びた企業や、その商品を買った顧客。
情報システムの商談で提案が通り、その結果システムが受注できたシステムベンダーや、そのシステムによって業務が効率化できたエンドユーザー。
要するに提案や提言が通ったことで『喜ぶ人』、それが説明の顧客です。
しかし、顧客とはそれだけではありません。
実は『喜ぶ人』の陰で『泣く人』、つまり説明の『受益者』でなく『被害者』が必ずいます。
これもまた、負の『顧客』なのです。
あなたの販促策の提言が通ったことで、お金が回ってこなくなり売上が落ちてしまった商品の担当者がいるかもしれません。
あなたの提案が通ってシステムが導入されたために、かえって仕事が増えてしまった部署があるかもしれません。
モノゴトには必ず二面性、正と負、プラスとマイナスの側面があります。
「万人が喜ぶ」も「百害あって一利無し」も、どちらもありえないのです。
しかし私たちは、どうしても自分の行動を正当化しがちです。
それはほとんどの場合において悪意はなく、「これが本当に良い」と思っているからです。
しかし、前述したように、どんなモノゴトにも二面性がある。
提案や提言も同じ。「だれも泣かない提案や提言」など存在しないのです。
だからこそ、「これを提案しよう」と思った時に考えてほしいのです。
「これは誰が喜び、誰が泣く提案なのだろう?」と。
つまり、「これは本当に提案すべきことなのだろうか?」を考えること。
その結果、「あまりに被害者が多いからからダメだな」となるのであれば、それは大きな被害を未然に防いだことになるはずです。
また、被害者が明確になれば、
「どうやったら被害を最小限にできるか」
「被害者の救済方法も提案に入れられないか」
を考えることもできるはずです。
そして被害者の存在を認識し、それでも受益者の方が多い(好影響の方を優先すべき)、と考えたら、堂々と提案すればよいのです。
説明の『顧客』、あなたも説明したいことがある時、一度は考えてみませんか。
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