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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2007年05月28日

プロフェッショナルのキーワード『頼』

 プロフェッショナルとは?
    「次の依頼が来るってことです」
     (鈴木成一 装丁家)
先週のNHK『プロフェッショナル』は、「この人がデザインすればヒットする」とまで言われている、装丁家の鈴木成一氏が登場しました。
冒頭のヒトコトは番組のラスト、撮影スタッフからの問いに答えたものです。
「次の依頼が来る」ということは、仕事の評判を聞きつけて「ウチもお願いします」という新規オーダーが来るというケースもありますが、それにしてもまずは以前の依頼元から、「またお願いします」というリピートオーダーが来るのが前提となるでしょう。
私はこの「次の依頼」、全ての仕事において“プロ”を定義した、ひとつの真理であると感じましたし、自分自身の仕事をこの言葉で振り返ると、身の引き締まる思いでした。


さらに鈴木氏は、「頼まれるからやる」というのを基本スタンスとしています。
これは別に傲慢という意味ではなく、「相手の期待と信頼にこたえる」ことがプロとしての前提条件だと考えていることの表れです。
さて、私は鈴木氏の発言を聞いていて、ひとつの共通点を見つけました。
それが『頼』という文字です。
訓読みすれば、「たよ(る)」「たの(む)」となるこの文字こそ、プロフェッショナルのキーワードではないでしょうか。
『信頼』の類義語に『信用』がありますが、後者が「信じて用いる」という上下関係をニュアンスとして含むのに対し、前者は「信じて頼る(頼む)」という対等な関係を見ることができます。
「頼られて、頼まれてこそプロ」と言えるのではないでしょうか。
加えて鈴木氏は、「自己表現なんて考えてませんよ」とまで断言します。
装丁家という“アーティスト”であるにも関わらず。
私はそこに、「自分の評価を決めるのは他者であり、自己満足はプロとしてタブー」という姿勢とメッセージを感じます。
ここまで自分に厳しいからこそ、プロとして信頼され、依頼が次々に来るのでしょう。
私は講師という別の畑の人間ですが、プロとしての今後の指針が見えてきたような気がします。
番組中、ある編集者ができあがった表紙のデザインを見て言った言葉。
私もこうした言葉をいただけるように、今後ともインストラクション・スキルとコンテンツのバージョンアップを継続していくことをここにお約束します。
「いやあ、想像通り、想像以上のものができましたね」

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