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ファカルティズ・コラム

2013年06月07日

何”感”を煽るべきか

先月のエントリー『橋下発言とその論評に欠けている視点』でも取り上げた橋下発言。
まだまだ炎上は収まらず、次の参院選への悪影響も懸念されています。
最近読んだネット上のコラムでは、以下のように論評されていました。
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橋下さんは「危機感を共有したい」と言う。
これは多くの経営者も同じで、「社員と危機感を共有したい」と言い、組織の危機的な状況を伝え、社員の奮起を促す。
しかしこれは橋下さんと同様、間違ったやり方だ。
なぜならば、危機感を共有すると社員は我が身を守るために逃げ出すからだ。
だから共有すべきは、ビジョンなのだ。
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いかがでしょうか。
なかなか頷ける主張だと私も思います。
しかし、「本当にビジョンを共有するのが”正解”なのだろうか?」とも思うのです。




そもそも、「危機感を煽る」の反対は何でしょうか。
そう、「期待感を煽る」などが該当します。
このふたつの違いは、前者が煽っっているのが『マイナスの感情』であるのに対し、後者が煽っているのが『プラスの感情』である、という点です。
先のコラムは、「ビジョンを語り(共有し)、期待感というプラスの感情を煽るべき」と主張しているわけですが・・・
さて、プラスの感情とマイナスの感情、あなたならどちらの感情を煽られた方が、やる気になりますか?
私は、これは個人差があるだろうと思っています。
たとえば、
「○○をやると、こんないい事があるよ!」
と言われて、
「そうか! それはやらない手はないな!」
となる人もいれば、
「ふーん、でも面倒くさいし、別に今のままでも大きな問題はないし」
となる人もいます。
しかしそんな人でも、
「○○をやらないと、こんな困った事になるよ!」
と言われると、
「そうか! それはさすがにやらないとヤバいな!」
となったりします。
つまり、期待感やワクワク感、優越感といった、プラスの感情を感情を煽られた時に、こちらが望む行動を取ってくれる人もいれば、その反対に危機感や焦燥感、劣等感など、マイナスの感情を煽られた方が行動に繋がる人もいるということです。
「子供も部下も褒めて育てる」と言いますが、褒められると「これでいいんだ」と安心して、成長が止まってしまう人もいます。
プラスの感情を煽るか、それともマイナスの感情を煽るか。
これは相手によって、使い分けるべきものなのです。
私見ではありますが、「プラスの感情を煽った方が動く」のは、効率より効果を重んじ、ドラスティックな変化によるハイリスク・ハイリターンを好む、上昇志向の強いタイプと考えます。
それに対し、「マイナスの感情を煽った方が動く」のは、効果より効率を重視し、手の届く範囲の改善によるローリスク・ローリターンに満足する、現状維持志向の強いタイプではないでしょうか。
そう考えると、外資系やベンチャー企業のトップはビジョンを語り、お役所や大企業のトップは危機感を語るのは、あながち間違っているとは言えないはずです。
深読みかもしれませんが、橋下さんは日本国民を現状維持志向と考え、危機感を共有しようとしたのかもしれません。


さて、この「プラスとマイナスのどちらの感情を煽るか」は、別に国や企業のトップに限った話ではありません。
あなたが動かしたい人、上司・部下・社内関連部門・顧客は、プラスとマイナス、どちらの感情を煽った方が動くタイプですか?
それを考えてください。
危機感を煽らないと動かない現状維持志向の上司に、長期的なビジョンを語って「のれんに腕押し」になっていませんか?
また、期待感や優越感を煽った方がどんどん自分で動く部下に、細かくダメ出しして、せっかくのやる気を削いでいませんか?
「相手に応じて対応を変える」のは、人間関係においても、また組織的な活動のためにも基本であり、そんなことは誰しもわかっているはずです。
しかし私たちは、どうしても「自分がこうだから」で無意識的にこの視点が欠けてしまう。
だから今一度、「何”感”を煽るべきか?」と考えた上で、効果的な伝え方をしてみませんか?

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