KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2015年07月30日

適正値を見極める

以前からお話ししているように、昨年秋から肉体改造(ダイエットとは言いたくない(笑))に取り組んでいます。
その甲斐あって、約9ヶ月でピーク時から比較すると体重は約16kg、体脂肪率も約10%落とすことができました。
ブカブカになった服を買い換えるコストが高くつくのが問題ですが。
で、体重については目標(設定したときは無理だと思っていたのですが)をクリアしたので、これ以上減らすのをやめようと考えています。
今後は「体重は維持しつつ、体脂肪率をもう少し落とす」ことにしました。
なぜならば、私は「痩せる」こと自体が目的ではなく、「健康かつ見栄えの良いカラダ」を手に入れることが目的だからです。
そのためには、現在の体重が私の考える「適正値」なのです。


では、ここで考えてみてください。
◆あなたがランチに支払うお金は、どのくらいが「適正値」ですか?
◆あなたが担当する事業の売上高の「適正値」は?
◆スターバックスの店舗数の「適正値」は?





「価格は安い方が良いに決まってる」
「売上は(際限なく)伸ばすの当然」
「店舗数は増やさなければならない」
私たちは、こんな呪縛に縛られていないでしょうか。


「本当は、どのくらいが『ちょういい』のだろう?」
これを今一度、自分に、あるいは会議の場面で問いかけてみるべきではないでしょうか。
「機能は多ければ多いほど良いに決まってる」
そうして日本の携帯電話はガラパゴス化し、家電メーカーは凋落しました。
そして「シンプル イズ ベスト」を掲げたアップルやダイソンが市場を席巻しました。
しかし、これまた「シンプルであれば良い」と考えては危険です。
「適正値はどこか?」 これを常に問いかけるべきでしょう。
なぜならば、時代とターゲットによって、適正値は異なるからです。


そしてそれは家電の機能だけではありません。
生活用品や飲食店に電話代など、全ての商品/サービスの「お値段」にも適正値はあります。
決して「安い方が良いに決まってる」わけではないのです。
WTP(Willingness To Pay)、要するに「顧客が喜んで支払う価格」こそが適正価格です。
ベンツは高いから売れるのです。
プレミアムビールも高いから私たちは買うのです。たとえ原価は普通のビールとさほど変わらないとしても。
事業の売上高や小売店の店舗数にしても、「無限に伸ばす(増やす)」ことなど、理論上不可能です。
それなのに私たちは「右肩上がりでなくてはならない」、と思い込んでいないでしょうか。
いや、「思い込んでいる」というより、「疑問すら感じていない」と言った方が正しいかもしれません。
「この事業の売上高は、増やさずに維持しよう」
「新規の出店はこれで打ち止め」
もちろんこれらをちゃんとやっている企業もありますが、それにしても多くは「売上が落ちてきたので仕方なく」だったりします。
もう一度言います。
「適正値はどこか?」 これを「常に」問いかけましょう。


では、どうやって様々な「適正値」を見極めるのか?
売上高や店舗数であれば、それは市場規模や競合企業の質と量で考えれば良いでしょう。
販売価格であれば、ターゲット顧客のニーズや懐具合と、競合商品の価格設定から考えることになります。
ただ、ひとつだけ注意しなければならないのは、競合となる企業や商品とは、単にお互いが競合として認識している「顕在的競合」だけではない、という点です。
カンの良い方はお気づきの通り、ポーターの5フォースにおける「既存の競合」だけでなく、「市場に新規参入してくる競合」と、「自社の商品の代替となる競合」も、売上高や店舗数、そしてWTPを考えるためには考慮する必要があります。
そしてもうひとつ、すべての「適正値」を検討するときに考えるべきことがあります。
それが「そもそもの目的は?」です。
先ほど私はこう言いました。
「私は「痩せる」こと自体が目的ではなく、「健康かつ見栄えの良いカラダ」を手に入れることが目的だからです」
「そもそも、この事業は我が社ではどのような位置づけだったっけ?」
「そもそも何のために店舗は存在するのか?」
「我が社はそもそも何を目指しているんだ?」
「そもそもお客様は何を得たくてこの商品を買ってくれている?」
こうした「目的/理由/意味/意義/位置づけ」を徹底的に考えましょう。
そこから気づくことが必ずありますから。

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