ファカルティズ・コラム
2017年03月21日
真の「価値」と、その構造
新規事業の企画にしろ、既存の事業戦略やマーケティングの見直しにしろ、「顧客価値」をしっかり考えるのが重要であることは論ずるまでもないでしょう。
しかし、「その商品・サービスが顧客に提供する価値とは?」という問いに対し、なかなか「真の価値」と呼べるものが出てこないのも事実。
その度に、「それは本当に顧客にとっての価値ですか?」と再度問うことも多いです。
そうして価値について議論する中で見えてきたことがあります。
それは、「価値には構造がある」ということ。
具体例で考えてみましょう。
ここにある自動車がある。そしてそのクルマは「高性能のエンジンを積んでいる」ものとします。
では、この「高性能のエンジンを積んでいる」事実は、顧客にとっての「価値」と言えるでしょうか?
はい、言えます。
しかし、それはそのクルマの仕様(spec)であって、高性能のエンジンそのものが顧客にとって「うれしい」わけではありません。
エンジンが高性能だと、顧客、ユーザーは何がうれしいのでしょうか。
それはたとえば、「加速が良い」であったり、「燃費が良い」でしょう。
ただ、これらも「価値」であることは確かですが、まだ機能(function)レベル。
「加速が良い」や「燃費が良い」という機能があると、顧客は「何ができるようになる」のか、あるいは「何をしなくてよくなる」のか、もう一段深掘りしてみましょう。
そう考えると、「追い越し時にストレスを感じなくてよくなる」や「ガソリン代を節約できる」という具体的な便益(benefit)が見えてきます。
この「顧客が得る具体的benefit」こそ、真の顧客価値と言えるのではないでしょうか。
つまり、価値(value)という概念は、
————————————
benefit(便益)
↑
function(機能)
↑
spec(仕様)
————————————
という3階層でとらえるべきだと思うのです。
specとfunctionを合わせて「機能的価値」、benefitを「意味的価値」と呼び、製品開発などに応用している事例もあるようです。
そして以前のエントリーでも述べたように、真の顧客価値と言えるbenefitは、「○○ができるようになる」「○○をしなくてよくなる」という2つの視点で考えるとわかりやすいでしょう。
さて、あなたの会社の事業・商品・サービスは、どのようなspecを有していますか?
そしてそのspecによって、どのようなfunctionを持っていると言えますか?
で、そのfunctionがあることで、顧客はどのようなbenefitが享受できるのか、具体的には顧客は何ができるようになったり、何をしなくてよくなるのでしょう?
そのbenefitを、真の顧客価値を提供できるのが、あなたの会社の事業・商品・サービスしかないのであれば、それこそが「差別化」できているということ。
反対に競合でもそのbenefitが提供できているなら、今一度差別化戦略を考え直すべきでしょう。
また、これは事業・商品・サービスの新規開発や差別化戦略だけの話ではありません。
時には、そのbenefitに企業自身が、あるいは顧客が「気づいていない」場合もあります。
たとえばPowerPointは、「プレゼンソフトとして」使われるだけでなく、「柔軟性の高いワープロソフトとして」も使われていますが、Microsoftは元々それを意図して開発したわけではありません。
もし、自分たちが、あるいは顧客が気づいていない提供価値(benefit)が自社の事業・商品・サービスにあることが見えてくれば、それはセールストークを含むプロモーション戦略に活用できます。
さらに言えば、この提供価値とは、私たちひとりひとりの「仕事」にも応用できます。
あなたやあなたの部署はどのようなspecで、どのようなfunctionを有しているのでしょう。
そしてそれは誰に対してどのようなbenefitを提供しているのでしょう。
提供できるspecがあるのに、提供できていないfunctionやbenefitがあったりしませんか?
これは「仕事の意味」を考えることであり、それによって業務フローや仕事の進め方を見直すことにも繋がります。
そしてそれこそ、巷で言うところの「働き方改革」の一環とも言えるはずです。
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