KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2007年09月22日

その仕事は何のために?

今回は、先月のエントリー『他者への仕事の頼み方』の具体例と言えるお話です。
昨日ある駅でこんなシーンを見ました。
駅のホームを掃除する男性。そこに電車が到着し、大勢の乗客が降りてきました。
ところがその男性は意に介さず、狭いホームで掃除をし続けています。そのため人の波がそこでつかえてしまい、電車から降りられない人がいる(そしてもちろん乗ることができない人もいる)ため、電車もなかなか発車できません。
その男性がホームの反対側に少し寄るだけで、その状態は解消されるのです。しかしそれでもまだ掃除を続けようとします。
不思議な光景でした。
なぜ彼は乗客の邪魔をしてまで、掃除を続けようとするのでしょう?


もしかしたら、彼の方が乗客達に対して「仕事の邪魔だ」と思っていたのかもしれません。事実、乗客が人の波の中で彼にぶつかった時、彼は何度も舌打ちをしていました。
さて、そもそも『ホームの掃除』という仕事は、何のために行うものなのでしょうか?
それは、「乗客に気持ちよく駅を使ってもらう」ためではないでしょうか。
つまり『ホームの掃除』とは、「乗客に気持ちよく駅を使ってもらう」ための手段であって、決してそれ自体が目的ではないはずです。
彼もそれが認識できていれば、昨日のように乗客の邪魔をするという「目的に反した行為」はしなかったはずです。
まさに『本末転倒』。
しかし私はそれは彼1人に問題あるとは考えていません。
仕事の与え方にも問題があるのです。
仕事の内容とやり方を教える時に、なぜその仕事の意味も併せて説明しないのでしょうか。1分もかからないはずなのに。
仕事を与える立場の人間は、「そんなわかりきったことを…」と思いがちです。
しかし、その「わかりきったこと」がわかっていない人は、思った以上に多いのです。
考えてもみてください。本当に全員がわかっているのなら、企業の行動指針やコンプライアンス部門は不要のはずです。
今一度、ご自分の仕事は何のためなのかを考えてみてください。
そして誰かに仕事を与える時には、その仕事の意味も説明してあげてください。

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