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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2018年08月03日

例の「生産性がない」問題について

「ねえねえ岡村あ」
「はい、なんでしょう」
「『生産性』ってなに?」
「…」
「ボーっと生きてんじゃねーよ!!」


…はい、NHKで絶賛放映中の『チコちゃんに叱られる』風に始めてみました。
しかしこの番組、妙な中毒性があります。「中の人」まで明らかにしていながら、「永遠の5歳児」チコちゃんがカワイイし、頼りがいがある。
久々の「大物感」のあるキャラクター誕生ですね。
さて、本日は賛否両論(と言っても体感では1:9ですかね)を巻き起こしている某議員の発言について。
このブログではイデオロギーについては扱わないと決めているので、別の視点から考えてみたいと思います。
そう、このブログらしく、ビジネススキルとしての「主張の構成力」や「読解力」について。
productivity.png






さて、絶賛炎上中の某議員の週刊誌での発言ですが、「全文を読めばおかしなことは言っていないことがわかる」と言う人がいます。
えーと、主張の内容は置いておいて、文章としては「酷い」のヒトコトですね。
通常タイトルとは「言いたいことをヒトコトで表したもの」のはずですが、よくよく読むと「支援の度が過ぎる」でなく、「多様性を認めたら切りが無い」が本来のタイトルのはず。
実際「支援の度」と言うなら支援の内訳を目体格にする必要があるはずで。
まあ、タイトルで目くらましし、極端な例を用いた典型的な「他者をミスリードする」文章です。
ビジネスでこれをやると「詐欺まがい」になります。
そしてことさらに取り上げられている「生産性がない」という一節。
ここでチコちゃんに再び登場してもらいましょう。
「『生産性』ってなに?」
「…」
「ボーっと生きてんじゃねーよ!!」
この文章においては「子供を作る」。それを生産性という抽象的、かつなんとなく社会や産業をイメージする言葉を使って表現しています。
「だって生産しないじゃん」
はい、「その超狭い定義においては」ね。
そして「子供を作らない(作れない)」こと(人)が、社会にとって「価値が無い」と感じさせるように、これまたミスリードしているわけですね。


そもそも、「生産性」とは?
辞書を引くと「生産過程に投入される生産要素が生産物の産出に貢献する程度」と説明されていますが、シンプルに表現すると、
生産性=アウトプット÷インプット
です。生産性とは割り算で算出されるのです。
具体的に「アウトプット」とは工場の生産量/企業の売上高/出したアイデアの数など、要するに人や組織が生み出す「成果」を意味します。
そして「インプット」とは、成果を出すために使われる時間/コスト/人数のこと。
だから「生産性を向上させる」とは、
・今と同じ成果(ex: 生産量)を、より少ない時間で生み出す
・今と同じ時間でより大きな成果を出す
ことを意味します。
「働き方改革」もまた、労働の生産性向上を目指しているわけですね。
ここでお気づきでしょうか。
そもそも生産性が「高い」とか「低い」という言い方はしますが、一般的に生産性が「ない」とは言いません。
人や組織が「何も生まない」ことはないからです。
そう、これもミスリードです。
さらに、生産性とは社会的に見て「子供をつくる」ことに限定するのは無理があります。
社会への貢献の仕方は、もっと多様なのは明らかです。
…どこまでミスリードしたいのでしょうか(笑)


ということで、「文章構成力」の観点で、某氏の主張が「酷い」ことはおわかりいただけたかと思います。また、某氏を擁護する方々の「読解力」の低さについても。
反面教師にしましょう!

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