KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2007年10月05日

理論を学ぼう

私はビジネススキルの講師ですが、この“スキル”は“技能”と和訳されます。
つまりはツールの使いこなし方を含め、具体的なテクニックを学ぶことでスキルアップをはかっていくわけで、セミナーや研修に参加された方々もそれを期待しています。
しかし、本当にスキルアップのためには具体的テクニック「だけ」を学べばいいのでしょうか。
確かにその方が「手っ取り早い」というのはわかります。
「とにかく明日からすぐ使えるテクニックを教えてくれ」というご希望も理解できます。
ですが、私はこう言いたいのです。
「テクニックだけでなく、理論も学びましょう」


どうも『理論』というと、なにか堅苦しくて面倒くさいというイメージを持たれる方が多いようです。
また、「要は抽象化したアカデミックな一般論でしょ? もっと具体論でないと仕事には使えない」という声も耳にしたことがあります。
しかし私は、理論を学ぶことには2つの大きな意味があると思うのです。
まず第1に、学ぼうとしている具体的テクニックに対する納得感・信頼感です。
たとえばコーチングのテクニックにペーシングやミラーリング(ここでは解説は割愛します)がありますが、これも人によっては「そんなテクニックで、本当に相手が一体感を感じてくれるの?」と疑問を持たれます。
しかしそのテクニックを学ぶ前段で、「実はマタラゾという心理学者が行った同調傾向の研究で~」と聞くと、「ああなるほど、確かに肉親や夫婦って仕草や話し方が似てるなあ」となり、すんなりとこれらのテクニックを受け入れて実践することができるのです。
この心理効果、確かに理論という権威付けによるハロー効果なのですが、テクニックを習得するためには「変に疑わずに愚直に実践する」ことが何より大切ですから、スキルを学ぶためには非常に効果的なのです。
そして2点目が、テクニックの応用性が高くなるという点です。
『理論』を辞書でひくと、「科学研究において、個々の現象や事実を統一的に説明し、予測する力をもつ体系的知識(三省堂提供「大辞林 第二版」より)」と説明されています。
重要なのは、この中の“予測する力”です。
単にテクニックだけを学んだ場合は、この“予測する力”が弱くなり、その結果として“応用する力”も弱くなってしまうのです。
もう少し具体的にお話ししましょう。
テクニックは、「こういう時はこうするとこうなる」という形で説明されます。つまり具体的なシチュエーションとともに、その使い方を学ぶわけです。
しかしこの具体的シチュエーション、当然ながらビジネス現場のあらゆるシチュエーションを網羅することはできません。
そうなると、説明された以外のシチュエーションにおいて、実は同じテクニックが有効であるにもかかわらず、それに気づかない、ということが起こる得るのです。(もちろん自分の頭で考えて、応用できる方もたくさんいらっしゃいますが)
これは本当に「もったいない」ことです。
ところが具体的なシチュエーションと併せて、それを抽象化した形、つまり理論として説明されれば、「とするとああいう場面でも有効なのでは」と考えやすくなるのです。
以上の観点から、ぜひ理論も学んでください。
堅苦しいと毛嫌いせずに、たとえばそういう本やネットの情報も読んでみてください。
意外と楽しく、「へぇ~」というネタも多いですよ(笑)

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