2019年02月18日
戦略とは選択である
『イミテーション・ゲーム』という映画を観ました。
以前から気にはなっていたのですが、昨年、大学時代のサークル仲間の忘年会で勧められ、AmazonのプライムビデオにあるのをKindleにダウンロードして出張の新幹線の車中で鑑賞しました。
本作品は、第2次世界大戦でドイツ軍の暗号「エニグマ」を解読し、連合軍を勝利に導いた数学者、アラン・チューリングの半生を描いた実話です。
チューリングを演じるのは、名優ベネディクト・カンバーバッチ。
同性愛者であり、またASD(自閉症スペクトラム障害)であったチューリングの孤独と苦悩を巧みに演じています。
※註)当時はASDの概念はありませんでしたから、あくまでも「そのように描かれている」ですが。
しかし、私が最も考えさせられたのは「究極の選択」のシーンでした。
チューリングたちイギリスの暗号解読チームは、ついにエニグマの解読に成功します。
そしてドイツ軍の通信から、世界中のドイツ軍の位置や作戦を把握します。
その中で、今まさにドイツ軍の潜水艦が、一般市民の乗った輸送船団を襲おうとしていることを知ります。その船には、チームの一員の兄も乗っていました。
今すぐ軍に連絡を入れれば助けられる!
しかし電話に飛びついたメンバーに、チューリングは「やめろ、電話をするな」と命じます。
なぜか?
それは「暗号を解読されたのをドイツ軍に知られないため」でした。
確かにドイツ軍の作戦は筒抜けですから、それを出し抜くことは可能です。しかし、それによって暗号が解読されたことが知れてしまえば、ドイツ軍はまた暗号を変えてしまう。
そうしたら、また解読のやり直しとなり、戦争の終結が延びてしまう。
また、全ての作戦に対応するだけのリソースもありません。
だからチューリングは軍に解読が完璧に成功したことを連絡するのを止めたのです。
ドイツ軍に知られないレベルで、特に重要な場面のみ軍に知らせ、また作戦を提案する。
そうしてノルマンディー上陸作戦は計画され、成功し、戦争の終結を早めました。
反対に言えば、「わかっている情報に目をつぶり、犠牲を黙認」したのです。
チューリングは先の場面で「その船団には沈んでもらおう」と言います。その後に「本当に…ごめん」と付け加えて。
彼のこの決断に「なんて非道な」と言うのは簡単です。
しかし、結果的に彼らのおかげで戦争の終結は2年早まり、1400万人の命が救われたと言われています。
重要なのは目先の人助けではない。
この戦争に勝利すること、そして戦争を早く終わらせること。
そのためには解読した情報に「優先順位」をつけなくてはならない。
それがどんなに辛い作業であり、苦しい決断だとしても。
チューリングと彼のチームはそれを徹底させたのです。
さて、ここまでの「究極の選択」ではないにしても、私たちは日々「選択」しています。
ランチのメニューにしても、仕事上のトラブルへの対応にしても、選択肢は必ず複数有り、その中から否応なく選択を迫られます。
あなたは「決める(選ぶ)のに時間がかかる」タイプですか?
決断を人任せにすることが多くはないですか?
「決められない(選べない)人」は、優先順付けの判断基準が決められない人だと思います。
「あれも大切だし、これも大切」と様々な人や目的に配慮したいのはわかりますが、それで判断が遅れてしまうことのリスクやデメリットも考えるべきです。
「八方美人」ではいられないのです。
だから「この人には泣いてもらおう」「この顧客はあきらめよう」といった『割り切り』が必要です。
そして割り切るために必要なのが、優先順位付けの判断基準となる目的の優先順位付け、つまり「モノサシ」です。
チューリング達はこれが「戦争を早く終わらせる」だったわけですね。
…あなたが明日決めなくてはならないのは何ですか?
…それを決めるためのモノサシは何ですか?
…ところでこの作品、あの「ボヘミアン・ラプソディ」との共通点が多いように思うのは、私だけでしょうか?
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