KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2020年06月02日

屁理屈に負けない!

またSNSでの誹謗中傷による痛ましい事件が起こってしまいました。
しかしそれだけでなく、コロナ禍に端を発したマスメディアやSNSでのフェイクニュースやヘイトスピーチにレスバトル。
そして家庭や職場での様々なハラスメント発言。
私たちは様々な形と場面で、心を削る批判や非難をシャワーのように浴び、目撃しています。
「なぜ自分が/あの人がそんなことを言われないといけないのか?」
そして時には、誰かの発した言葉に安易に乗せられ、デマを拡散したり誰かを理不尽に非難したりもしてしまいます。
そうした誰かを傷つけ、踊らせる発言。
その多くは『屁理屈』です。
herikutsu.jpgのサムネイル画像






私たちは自分を守るために、そして社会を少しでも平穏で楽しいものにするために、それら理不尽な屁理屈に負けない力を養うことが必要です。
また、自分自身が悪気無く屁理屈を使い、誰かを傷つけることもできれば避けたいもの。
何か少しでも役に立てることはないだろうか?
ということで前置きが長くなりましたが、そんな私のお節介から一冊の本が生まれました。
宣伝くさくて恐縮ですが、Amazonの紹介文を載せます。
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屁理屈に負けない! ――悪意ある言葉から身を守る方法
パワハラ、モラハラ、マウンティング、SNSでの炎上、フェイクニュース、世論誘導etc。 他人を否定し、ダマし、丸め込もうとする言葉が蔓延する現代社会。
しかし、そんな「『悪意ある言葉=屁理屈』のカラクリ」を見抜ければ、無駄な議論で消耗し、傷つき、言いくるめられることもなくなる。
本書は慶應社会人ビジネススクールの人気講師が、論理的思考の基礎から「わら人形論法」「誤った二分法」「権威論証」など16種類の屁理屈の手法、見抜き方、実践的防衛テクニックまでわかりやすく解説。
攻撃的な言葉から身を守り、生産的なコミュニケーションへと導く、これからの時代の必修科目となる一冊。
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この本を通して、少しでも誰かが辛い思いをすることから解放され、笑顔になるために役立つのであれば、こんなうれしいことはありません。
またそれだけでなく、誰かの屁理屈に乗せられること無く、自分の頭で考えて判断を下すことが日常的にできるようになれば、それは仕事にも役立つはずです。
具体例で考えてみましょう。
コロナ禍への対応としての在宅勤務での会議、あるいは研修でZoomやWebex、Teamsなどを活用している人は爆発的に増えています。
その中でも、大人数からグループ討議にシームレスに移行できるブレイクアウトセッションなどの機能面、そして使い勝手や軽さから、圧倒的シェアを誇るのがZoomです。
私もリモート講義の視点からいくつかを使ってみましたが、正直Zoomを越えるWebミーティングシステムは無いと考えています。
しかし、企業の中にはこのZoomを使用禁止にしているところが多いのも事実。
その理由は、Zoomのセキュリティ面での問題です。
しかし、セキュリティの脆弱性はWindowsのアップデート頻度を見ても、全てのソフトウェアの宿命であり、Zoomも度重なるアップデートで対応しています。
ではなぜ、Zoomが敬遠されるのか。
それは創業者であり現CEOでもあるエリック・ヤンが中国人(正式には中国系アメリカ人)であることに起因しています。
確かに米国と対立を深めている中国という国(正確には中国共産党)は、世界の政治・経済的リスクの大きな要因であることは事実です。
しかし、ファーウェイのような中国に本拠地を持つ純然たる中国企業ならまだしも、トップが中国出身者とは言えれっきとしたアメリカ企業であるZoomに、同レベルの中国リスクがあるとは考えにくいです。
しかし本件に限らず、「国としての中国」と「中国出身者」を十把一絡げにして敬遠したり、批判する人や組織が多い。これが現実です。(「中国」を「韓国」に変換しても同じです)
こうした「だから中国人は」とか、「だから女は」「だからゆとりは」のように、個々の別人格を十把一絡げにした批判。
それが『連座の誤謬』と呼ばれる屁理屈です。
この連座の誤謬は、「ネトウヨ」「ブサヨ」「アニオタ」のような蔑称、つまりレッテル貼りとセットで使われることも多いので、誰しも使った経験があるはずです。
先のZoomの例のように、連座の誤謬は私たちの目を曇らせ、正しい判断を阻害します。
そして連座の誤謬だけでなく、私たちは様々な屁理屈を悪気無く使っており、それはコミュニケーションだけでなく、思考・判断にも悪影響を及ぼしています。
だからこそ、それを自覚し、注意する必要があるのです。
それもまた、私が今回の本を書いたひとつの理由でもあります。

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