ファカルティズ・コラム
2008年03月06日
ブルーレイは本当に勝ち組か?
既報の通り次世代DVDの覇権争いは、ソニーを中心としたブルーレイが、東芝を中心とするHD-DVDに勝利する形になりました。
VHS対ベータの時に苦汁をなめたソニーが、リベンジしたとも言えるでしょう。
さて、次世代DVDの規格争いに関する論点としては、
1.記憶容量
2.性能(読み出し・書き出し速度)
3.生産コスト
4.ソフト数
があるわけですが、1.と2.に関しては、どちらかが撤退せざるを得ないような圧倒的差別化は、今後の技術革新を考慮すれば難しいと言えます。
東芝は3.の生産コストの優位性をユーザーメリットとしてアピールしていたわけですが、技術的なコスト優位性はスケールメリットで相殺可能ですから、大きな差別化にはなりません。
結果膨大なソフトを持つワーナーがブルーレイのみのソフト供給を打ち出したことで、4.の部分で圧倒的な差がつき、大勢が決してしまいました。
ゲーム機業界において、スクエア(現スクエア・エニックス)がファイナルファンタジーの最新作を、従来の任天堂のマシンからソニーのプレイステーションに移すことで、プレイステーション一人勝ちの状態になったことを思い出したのは、私だけではないはずです。
ソニーは今回も、ソフト供給元を味方につけて勝利したわけですが、これでソニーが勝ったと考えるのは早計でしょう。
なぜならば、ブルーレイ(ソニー)は「次世代映像メディア勝ち抜き戦の1回戦に勝利しただけ」に過ぎないからです。
今回の規格争いは、映像を中心とした大容量データを格納する『お皿』同士の戦いでした。
しかしデータの“容れ物”は『お皿』だけでしょうか?
確かにCDやDVDという『お皿』は持ち運びできますし、街のショップで購入・レンタルするには便利です。これからも無くなることはないでしょう。
ただ、こうした『お皿』がメディアに占める割合は、今後急速に低下することが予想されます。というか、既にそれは進みつつあります。
「CDの売上低下と反比例して上昇するネット音楽配信」がそれです。
著名アーティストが、新曲をCDでなくネット配信に限定して発売するケースも、もはやニュースにもならないほど一般的になっています。
こう書くと、「ああ、ブルーレイの次の相手はネットね」と思われるかもしれませんが、私は少し違う考えを持っています。
『ブルーレイの次の対戦相手は、ハードディスクかフラッシュメモリー』
ではないでしょうか。
現に家庭用のDVDレコーダーも、DVDドライブはは市販/レンタルソフトの再生専用で、録画はほとんどハードディスクしか使っていない方も多いはずです。
ソフトの購入やレンタルは不要で、映画やドラマはテレビの録画で十分であれば、地デジのハイビジョン放送を受けられるチューナーさえ付いていれば、今までのハードディスク内蔵DVDレコーダーで、DVD以上の画質を楽しむことが可能です。
そしてブロードバンドの普及と技術革新が進めば、ソフトはネット配信の方が主流になるかもしれません。
音楽の世界で起こっていることが、映像の世界では起こらないと考える方が不自然です。
違いはデータの容量「だけ」ですから。
考えてみれば、ネット配信も元のデータはハードディスクに格納されています。
さらに言えば、ブルーレイという『お皿』に映像データを書き込むのも、ハードディスクからなのです。
ネットは、(言い方は悪いですが)単なるデータを流す土管です。
土管が太くできれば、遠いところでも大量の水(データ)をあっという間に手に入れられます。
そしてリアルな土管と異なり、ネットという土管はどんなに太くしても物理的には細い線のままです。
つまり、モノとして物理的に所有することに意味を感じなければ、物理的に遠く(配信会社のハードディスク内)にあろうが、手元(ブルーレイという『お皿』)にあろうが、利便性はほとんど変わらない環境が近い将来実現するのです。
また、一般の人の知らない(見えない)ところで、ハードディスクやフラッシュメモリも着実に技術革新で進歩しています。
iPodクラシックは、今やあの大きさで140GB(ブルーレイは現時点で最大200GB)のハードディスクを搭載し、iPodシャッフルはクリップサイズで2GBのフラッシュメモリーを搭載して5800円です。
既に「持ち運び可能」という差別化ポイントも、『お皿』だけのものではないのです。
『お皿』よりもデータの書き換えが容易な、これらハードディスクやフラッシュメモリが、ネットという土管を味方につけても、本当にブルーレイは勝ち組で居続けられるでしょうか。
さて、今後もこの「終わり泣き勝ち抜き戦」から、目が離せそうにありません。
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