ファカルティズ・コラム
2008年03月27日
『知っていても使えない』人たち
昨夜見ていたクイズ番組。クイズそのものを楽しむと言うよりは、所謂“お馬鹿タレント”の珍解答を楽しむという、あの番組です。
この番組の是非をここで語るつもりはありませんが、私は珍解答に爆笑しつつも、司会の島田紳助氏のコメントに、何度も「さすが!」と唸らされました。
その中でも、特に私が「なるほど!」と膝を打ったコメントがあります。
番組はいくつかのコーナーに分かれているのですが、チームでペアを組み、あるセットになった言葉を考える(たとえば「ナポレオンのロシア遠征を題材にしたトルストイの小説は?」という問いに、ふたりで「『戦争』と『平和』」と順番に答える)というコーナーで、意外(と言っては失礼ですが)に、お馬鹿タレント達が健闘したのです。
そうしたら島田紳助氏が、あるお馬鹿タレントにこう言いました。
「やっとわかったわ。お前ら(正解である言葉を)知っとんねん」
「でも出てけーへんだけやねん。だからペアで、もうひとりがきっかけ作ってくれたら答えられるねん」
「つまり問題と答が繋がらんだけやねん」
「ああそういうことか!」
そう私は思いました。
ここでのキーワードは『繋がり』、つまり『関連』です。
お馬鹿タレント達は、知識として知っていることであっても、設問とその知識を「関連づける」ことができないため、苦し紛れの珍解答をしてしまうのです。
同番組の別のコーナーでは、そのお馬鹿タレントにフリガナのふっていない設問を読ませ、同じチームのメンバーが解答する、ということをやっていました。
その問題の一つで、お馬鹿タレントのひとりが、「カミとユズ、両腕を覆っているのは?」と出題したところ、ある解答者が「袖!」と瞬時に正解を答えました。
つまり出題者は『袖(ソデ)』を『ユズ(柚)』と誤読していたわけです。
もちろん“漢字の知識”の差が笑いのポイントなのですが、ここではもうひとつ“関連づける力”が、ビジネススキル的には重要なポイントになります。
解答者は、「両腕を覆って」という内容から、「身につける→服→柚と似た漢字で服に関係する字」と、順を追って関連づけ、『袖』にたどりついたと想像されます。
ところが出題者は、漢字を記号としてのみとらえているため、『袖』とつくりの同じ『柚』と短絡的に考えて誤読し、「腕を覆って」という重要な要素を関連づけて考えられなかったのです。
これはつまり『類推力』の問題です。
皆さんの周りにも、「言われたことはできても、ほんの少しでも違う状況では、全く対処できない」人はいませんか?
「なんでそんなこともできないんだ?」
「ちょっと考えれば、前に教えたことで応用できるだろう」
その嘆きは理解できます。
確かにその本人にも問題はあります。類推力が欠けているのですから。
我々全員も他人事だと思わずに、「わからない時には、わからない部分だけでなく、その周囲もしっかり見る」ということを肝に銘じるべきでしょう。
そしてそれら周辺情報を、「自分の知っている知識に照らし合わせて、わからない部分を思考停止せずに考え抜く」ことを意識して習慣化しなければなりません。
しかし、こうした状況は、その本人だけに責任があるのでしょうか。
仕事の進め方を教えてはいても、異なる状況へも対処できるように教えていますか?
「そのくらい自分で考えなきゃ」というご意見はもっともですが、類推力が欠けている人間には、それをいきなりやれと言うのは酷というものです。
「自分ができることは人にもできる」というのは、大きな勘違いなのです。(これ、私自身も犯しやすい過ちと自覚しています)
ですから、仕事を教える時は、応用まで言及してください。
もちろん異なる全ての状況を網羅することは不可能ですから、「で、たとえばこういう時には、こうやり方を変えてみると上手くいく」というように、ひとつだけでも別の状況への対処を教えましょう。
要は、「やり方はひとつでなく、状況に応じて臨機応変にやる必要がある」ことを、理解させられれば良いのです。
そしてそれに加え、前述の「わからない時には、わからない部分だけでなく、その周囲もしっかり見て、自分の知っている知識に照らし合わせて、わからない部分を思考停止せずに考え抜く」ことを指導してあげてください。
また、単に「こういう時はこうしろ」と伝えるだけでなく、状況と対処方法の関連性も伝えてあげてください。
「こうしたらこうなるだろ? するとつぎにこうなる。だからこうした方が~」と、因果関係で説明するのも良いでしょうし、「これをやる理由は3つある。まず~」と明確に切り分けて説明しても良いでしょう。
理由や背景が説明されていないから、機械的に仕事をせざるを得なくなり、結果異なる状況に対処できないばかりか、そのための類推力も向上しないのです。
「教えたのにできない」のではなく、「教えたことを別の状況に関連づけられない」だけであり、それははっきり言って教えた側にも問題があります。
自分が楽をし、組織にも貢献させ、そして相手を成長させるためにも、知識や仕事の教え方にも配慮してください。
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新入社員を部下に迎える方も多いでしょう。
私自身も来週から新入社員研修の仕事がスタートします。
お互いに、“使える人材”を増やすために頑張りましょう!
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