KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

学びの体験記

2012年06月12日

仕事人のメジャーリーグで学ぶ

飯島 崇史
明星中学高等学校 教頭

 2009年の11月頃私はマスタリーコースへの参加を決意した。今でも思い出すと冷や汗をかく。私は私立の中高一貫校の国語の教師であり、ビジネスや産業とは全く無縁の仕事をしている。そんな私が・・・ついて行けるのか、と思っていたからだ。

 さらに”慶應義塾”と”丸の内”この2つの名前は重い。「さっそうとスーツを着こなす人」「ばりばり英語が話せるとか・・・」「経済やマネジメントのトップクラスの世界」そんな人ばかりだろうな敷居が高いなぁなんて思っていた。

 自然、スタッフの方への質問も「何も知らないので民間会社の人に迷惑でないですか?」最初のうちは言い訳の枕詞のようにこの言葉を繰り返していた。入学の相談や面談をしながらも”KEIO MCC”の文字を見るたびにちょっと場違いかな、なんて思っていた。

 そんな迷いの中いよいよMCCでの学びが2010年3月にスタートをした。1講座目の『ロジカルシンキング(現:人を巻き込む説明力-理解と共感を得る伝え方)』。「SWOT分析」に代表されるマトリクスとロジックツリーの作り方や考え方はシンプルな上に汎用性が高い、「すごい!」。フェルミ推定は、仮説から導き出す結論が思考に大いに活用できる、「おもしろい!」。

 2講座目の 『協奏チーム・コミュニケーション』。組織はいかに相互の共感性を高めるかの必要性を学んだ。例えば「PDCAサイクル」で組織を無機的に管理するのではなく「DLAP」という概念を併用すれば組織はエネルギーを増し、構成するメンバーはかなり有機的に結びつける。この考え方は現在の仕事をするうえでも大変生きている。新しいことは実際にやってみることでそこから何かを学ぶことが大事。そうすることで、自然と失敗にもポジティブになれる。

 3講座目は『強い組織をつくるリーダーシップ』。本当のリーダーシップとは「効力感をつくる」ことであり、様々なケースからのつくり方をケースメソッドで学んだ。講師の先生の神業のように卓越したファシリテーションの手法からも楽しく、仲間と学びあえた。この講座が終わる頃にはMCCスタッフの方への口癖がだいぶ変わってきた。「大学時代の勉強がこれくらいおもしろかったら」と。

 4講座目の『現場の求める新・人材マネジメント(現:部下を育てるマネジメント)』。こちらは仕事人が抱える問題点と正しい解釈からのマネジメントを学んだ。圧倒的な情報と知識の量。本当に自分でも驚くほどの広範囲な知識を得ることができ、一挙に世界が広がった気がした。

 5講座目の『エナジャイズ・アサーション(現:リレーションシップを高める自在会話力)』は、実はこのネーミングに知的興味を誘われていて、開始前から受講すると決めていた講座だった。その期待通り。相手にずばっと言うことの手法を「DESC法」に学んだ。シンプルだが奥が深く、その分難しさがある。相手に伝えるということは自分の腹を決めることでもあるんだなとも思った。

 そして最後の6講座目『リーダのための仕事哲学(現:人と組織を動かすリーダー哲学)』。仕事人としてどんな哲学を持つか。学びの集大成にふさわしいテーマだ。私は、今まで随分と自分の感情に根ざした思いをしっかり相手に伝えてこなかったんだ。「感情的に議論すること」を避けるあまり「感情に根ざして議論すること」を避けてきた。この2つは似て非なるもの。だからこそ「毎日の仕事を通じて自分が本当に何をすべきであり、またしたいのかその自問自答を繰り返し自分の哲学を磨く」という言葉は重く圧巻だった。

 これらの珠玉の6講座を通じて「自分の情動を磨き、きちんと相手に伝えて議論する」ことでもっと世の中に役立つ良い仕事をしようと本心から思えた。さすが慶應。福沢諭吉翁の「学問のすすめ」に代表される教えの神髄を今に伝えているなぁ。そしてやっぱり「丸の内」、ここは仕事人のメジャーリーグ。ここの場で学ぶことは重かった分このコンテクストが大切なのだと感じた。

 ありきたりでなく講師の先生方、スタッフの方、受講生との話やディスカッションをすることは本当に楽しかった。講座が終わった後の自主勉強会を開いたり、別の形で自”酒”講座で学びを深めたり、Facebookでつながったり、自分の中にいろいろな行き詰まりを感じていた2年間を経て、いろいろな意味で世界が広がった。その他にも書ききれない学びの特典が満載!だから「MCCは学びのデパートや」(ってテンション上がって、ちょっと古めですが)と実感している。

 最後の頃の口癖は3代目。「(企業ではないが)学校でも学んだことがめちゃくちゃ毎日の仕事に生きています」。
 2年を経てあんなに迷っていた決断をした自分が今は少しは誇らしく思える。

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