KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2018年09月11日

アウトプット筋力を鍛えるクロシング

円谷 竜悟(Tsubu)
製造会社勤務

クロシングを始めた私の動機は2つあります。
一つは「インプットメタボに対する危機感」から。

当時の私は寝起きのまどろんだ目でニュースを携帯でチェックし、新聞を斜め読みしながら支度を整え、移動や食事の合間にSNSをチェックする。空気を吸うように情報に触れていく。

このように書くと大量に情報をインプットして勉強熱心に見えるかもしれませんが、実のところ目にするのは興味ある分野のみで、世界観は広がりません。情報を巡るだけで深堀りして考えることもないので翌日にはすっかり忘れてしまいます。

その割にインプットできない環境にさらされると飢餓感が襲い、不安でたまらない。

内田樹氏が『修行論』でこのように述べています。

人はものを知らないから無知であるのではない。
いくら物知りでも、今自分が用いている情報処理システムを変えたくないと思っている人間は、進んで無知になる。自分の知的枠組みの組み替えを要求するような情報の入力を拒否する我執を、無知と呼ぶのである。
(内田樹『修行論』より)

この言葉に出会ったときは衝撃を受けました。無知だったんだ。
我が身を顧みれば

  • 興味ある情報しか見ない
  • インプットしているときに満たされる知的好奇心に突き動かされているだけで他の情報と関連づけたり、自身との体験と結びつけたりしない
  • 読むだけで自分の考えをアウトプットすることもない

ただただ情報を消費する日々。これは食事が情報に代わっただけの、インプットメタボではないか。

「男は黙ってサッポロビール」が一世を風靡した時代は過去。いくら知識があっても、深い考えを持っていても、アウトプットしなければ存在していないのも同然。そういえばSNSで発言していない人はフォローされていてもどのような人物だったか思い出せなくなっている。ということは自分も。

しかし、どうやって。アウトプットの仕方がわからない。危機感を感じながらも打ち手がないまま情報を消費していく、そんな日々が続いていました。

もう一つの動機には、「人生の後半に対する不安感」がありました。
会社員として20年弱。気が付いたら不惑の年に差し掛かっていました。定年制度が続くなら会社員としての、そして平均寿命としての、折り返し地点に差しかかっていました。

食わず嫌いで自身の可能性を閉ざしてしまっていないか
人生の価値を高めるために十分に努力してきたか
社会に貢献するために自分がもっとできることはないか

このままの生き方でよいのか。うすぼんやりとですが人生の後半に対して漠然と不安感を抱えていました。

そんなときクロシングを知りました。
次第に熱くなっていくぬるま湯に入りながら、なんとかしなくては、とぼんやりと考えている、そんな心境のときに。直感が働き、まず行動、ということで申し込みました。

クロシングを始めて2年と少し。続けてきて、大きな効果として感じているのは、引き出し能力が大きくなったことです。

クロシングでも配信されている楠木 建氏は『戦略読書日記』でこのように述べています。

理屈っぽくいえば、センスとは「文脈に埋め込まれた、その人に固有の因果論理の総体」を意味している。平たくいえば、「引き出しの多さ」。優れた経営者はあらゆる文脈に対応した因果のロジックの引き出しを持っている。しかもいつ、どの引き出しを開けて、どのロジックを使うかという判断が的確、これもまたセンスである。経験の量と質、幅と深さが「引き出し能力」を形成する。
(楠木 建『戦略読書日記』より)

もちろん楠木氏のいうレベルには到底至っていませんが、クロシングを始めた頃を振り返ると、確実にこの引き出し能力が高まっていることを実感するようになりました。

その秘訣はクロシングのカリキュラムにありました。

クロシングは毎月、次のカリキュラムで進行しています。

  1. 3つの講演の配信、視聴
  2. 各々の講演の感想の掲載
  3. 感想のシェアとディスカッション(発見のディスカッション)
  4. 3で再設定したテーマでディスカッション(創発のディスカッション)

私なりにこのカリキュラムで効果を感じたポイントを3つに絞ると、

(1)自分が選ぶコンテンツではないこと

(2)様々な視点や視座を知る機会があること

(3)段階を得て俯瞰して物事の本質を捉える力をつけられること

にあると思っています。

(1)自分が選ぶコンテンツではない

前述したとおりインプットメタボは、自分の興味のある分野しかインプットしない傾向があります。

効率的な情報収集の意味では必要かもしれませんが、自分の知らない世界観に触れたり、価値観が揺り動かされたりすることは滅多にありません。意識的にせよ無意識的にせよ自分の関心領域内で情報を取捨選択しているからです。

クロシングを1年続ければ単純計算で36講演です。
それもコンテンツは夕学五十講からテーマに合わせて選ばれるため安心感があります。時間は限られますので、せっかくなら良質なコンテンツに触れたい、という欲求にも応えてくれます。

クロシングのラインナップ
https://keiomccxing.com/movie/listing/sekigaku_archive

自分の意思だけでこれだけ多彩な講演を探し出し、視聴できるでしょうか。少なくともクロシングに出会う前の私はできていませんでした。普段の自分なら選ぶことのない講演もあります。毎月3講演がリリースされ、2週間以内に感想を書く、という(なんとなくやれそうな)カリキュラムのお陰で自分なら二の足を踏んでしまう講演にも取り組むことができます。

(2)様々な視点や視座を知る機会がある

甘いスイーツを食べた後にフルーツを食べると、とても酸っぱく感じたことはありませんか。これは味覚が影響を受け、相対的に酸っぱく感じるからです。3講演を視聴していると、これと似たような現象が生じます。直前に視聴した講演の影響を受けた状態で次を視聴するため、単独で視聴した時とは違う切り口に気づくのです。
夕学五十講で受講した講演を、後にクロシングで視聴したときにも同じ現象が起きます。同じ講演でありながら、まったく新しい視点で印象に残るのです。

クロシングにはさらに感想のシェアやディスカッションがあります。視聴するだけではすぐに忘れてしまうのですが、そのつど講演内容を何度も思い出し、記憶がどんどんと強化されていきます。

参加者による感想のシェアと発見のディスカッション以降の活動により、講演間と参加者間で相互作用があります。それにより一人で講演内容を聴講しただけでは得られない発見や気づきがもたらされます。

ただ、インプットメタボはアウトプット筋力がないため、自力ではなかなか意見を出せないものです。しかしクロシングは他の会員の皆さんが思い思いに感想をシェアしてくれるので、それが呼び水となって、鈍い筋力も反応します。

呼び水をきっかけに自分の意見を出す。それが他の参加者の意見を誘発する。また自分も意見を出す。。。そうしていくうちに意見が数珠のように連なっていきます。この相互作用でアウトプット筋力がメキメキと鍛えられていきます。

(3)段階を得て俯瞰して物事の本質を捉える力をつけられる

クロシングは感想、発見のディスカッション、創発のディスカッションと段階で進行します。

次の段階に進む間に自分のなかで内なる対話が行われ、自然に自分自身の考えが沸き上がってきます。他の参加者の意見に触発されて、抽象化されたテーマでのディスカッションができるようになってきました。回数をこなしていくと次第に思考癖がついていて、脳がどんどんと活性化されていきます。

仕事で新規事業の相談を受けることがありますが、この思考癖が大いに役に立っていますし、役に立てているという実感が、自分自身への信頼感を醸成し、自信も持てるようになりました。

このように、私がクロシングで感じている効果を感想として述べてきました、
私は特にディスカッションによってアウトプット筋力も鍛えられてきていることを感じていますが、毎月配信される講演を視聴するだけでも、相当視野が広くなると思います。

一回一回の積み重ね、1秒1秒の積み重ねが10年後の自分を創っています。皆さんも小さな一歩を踏み出してみませんか。クロシングのサイトでお会いしましょう。

講座詳細:クロシング

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