学びの体験記
2010年12月14日
社会人として学び続ける意味
加 島 弘 敏
東京ガス株式会社
今、思うこと
あと半年弱で50歳になる。「えっ、いつの間に…」というのが偽らざる実感である。そんな私がひとりの人間として今、思っていることは「持続的に成長し、社会に貢献し続ける人間でありたい」ということである。
社会人として成長していくためには、3つの学びが重要だと考えている。
一つ目は、仕事そのものを通じて学ぶべきことを整理・抽出し、自分の血肉とすること。
二つ目は、社会人として必要なOS(論理的思考力やコミュニケーション力など)やアプリケーション(マーケティングやアカウンティングなど)を充実・強化させるために、外部の教育機関などを通じて体系的に勉強すること。
三つ目は、地域社会や家族と真剣に向き合い、仕事とは違った論理・行動原理を学ぶことで、人としてバランスの取れた成長をすること。
これまでの社会人生活を振り返り、全ての時期でこれらのことをバランス良く実践してきたわけではない。しかし、常に「学ぶ」ことを意識してきたことも事実である。そこで、年代別にどういったことをやってきたのか、主に上記の一つ目と二つ目について振り返ってみたい。ひとつの事例として参考になれば幸いである。
20代~30代前半…仕事を通じて大いに学んだ時期
入社後、経理、営業企画、調査研究など、様々なジャンルの仕事を担当させていただいた。それぞれの仕事内容が自分にとって新鮮で、また、職場にも恵まれ、多くのことを学んだ。この時期、「1職場1レポート」の課題を自分に課し、その職場で実践したことや提言などをA4×10枚程度にまとめ、自分なりのその職場への恩返しとした。このレポートは、今も私の手元にあり、折に触れて読み返すことで、初心を思い出している。
また、社会保険労務士や宅地建物取引主任者等の資格を取得したのもこの時期であった。仕事上の必要性があってチャレンジしたのではないが、業務に直接関係しない分野にも目を向けなければならない、という意識があったのだと思う。
30代後半…会計・財務漬けの日々
全社の予算編成の仕事を担当するようになったことが、私の学びにとって、大きなターニングポイントになった。全社にまたがる厳しい仕事をする、という責任感と、アカウンティングやファイナンスの知識・スキルが不足しているという実態認識から、私は、片っぱしからセミナーや講習会に出かけ、また読書を通じて勉強した。簿記2級は、それがひとつの形として結晶したものだとも言えるだろう。
この時期、仕事の実務とプライベートの時間を投入した学びとで、会計や財務にどっぷり漬かったことは、自分にとってとてもよかった。専門性の柱を1本、打ち立てることができたからだ。
40代~…広がる学びのジャンル
部下を持つようになり、チームとして業績を上げることが期待される立場になって、学ぶべきジャンルも変わってきた。それまでは、自分自身の知識・技能を磨いていればよかったのだが、今度はチームのマネジメント、引っ張っていくリーダーシップ、その基盤となるコミュニケーション力が重要になってきた。もともと経理など、定量的に物事を見る畑を歩んできただけに、戸惑いも大きかった。
そんな時、そういったことを体系的に学べる場があるということは、大変心強かった。日々、試行錯誤でやっていることが、理論的にはどうなのか、また、勉強したことを現場で実行してみたらどうなるのか、学びと実践のサイクルを回す日々が続いた。これを全て独力でやらなければならない状況だったらどうだろう、と想像するとゾッとする。
慶應MCCとのお付き合いは、2005年度から始まったが、まさに私にとって、コミュニケーション系やリーダーシップ系の講座が充実していることが、とてもありがたかった。また、講座の運営がインタラクティブであることも魅力だ。講師と受講生、そしてラーニングファシリテーターが一体となって場を作りあげていく。
40代も後半になり、幅広い情報を取捨選択し、本当に必要なものだけを身につけ、発信する必要性を感じたことから「編集術」を1年かけて学んだり(それでもまだ入門段階だが)、ヒト・モノ・カネのうち、「ヒト」に関するスキルを深めるために「心理学のワークショップ」にこれまた1年通ったりしている。これらは、自分の中では学びの応用編、または発展系と位置づけている。
そしてこれから
私は、学ぶことが自己目的化しては意味がないと思っている。冒頭の繰り返しになるが、「持続的に成長し、社会に貢献し続ける人間でありたい」という自分の目的を叶えるものかどうか、という基準で、限りある時間を学びに費やしていきたいと思う。慶應MCCは私にとって頼りになるベースキャンプだと考えているので、いろいろ他の場所に学びの武者修行に出かけることもあると思うけれども、帰ってきた時には温かく迎えていただければ大変ありがたく思う。
そして、私が30代前半までは存在しなかった、このような学びの場ができ、成熟していることについて、今の若い人たちを本当にうらやましく思う。自らのビジネスパーソンとしての器量を大きくするためにも有効に活用し、沈滞感漂う日本経済の活性化の一翼を担っていただければと願っている。もちろん私も頑張ります。
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