夕学レポート
2005年04月20日
伝えたいという心が力の源泉 「芸術の力」千住博さん
ニューヨークにアトリエを構え年間300日を海外で過ごす千住博さん。今回の帰国はわずか一週間だそうです。一昨日ミラノから帰り、昨日は名古屋、週末には福岡、東京でも分刻みのスケジュールをこなすとのこと。そんな多忙な中にあって「今回はこの講演を中心に予定を組みました」と言っていただきました。感謝の気持ちで一杯です。
慶應義塾の塾監局の応接室には、千住さんに寄贈いただいた絵画が飾られています。日吉の大イチョウをモチーフにしたその絵を見る度に、「いつか夕学に来て欲しいなあ」と思っていました。間に立っていただいた多くの皆さんのご尽力もあって、念願がかないました。そして期待に違わぬ素晴らしい講演になりました。
「芸術とはコミュニケーションである」という言葉から講演ははじまりました。内面から沸き起こるイマジネーションを他者にどう伝えていくか、そのための創意工夫のプロセスが芸術活動であり、「伝えたい」という想いの強さこそが、優れたアートを産み出す源泉だそうです。
千住さんは自らの経験と豊富な美術史の知識を織り交ぜながら、「伝えたい」という想いを込めて語りかけてくれました。まさに「芸術の力」を体感した2時間でした。
控室でも印象に残るお話を聴くことができました。千住さんは、日本画の新しい可能性を拓くという開拓者としての使命を強く意識され、さまざまなフィールドに野心的に挑戦されています。「日本画というと保守的な世界というイメージがありますが障害はないのでしょうか」などという愚問を投げかけたところ、「真ん中を歩んできたからこそ、新しいことができるのです」とのご返答。東京芸大大学院で日本画を専攻し、現在も旺盛な創作活動を続けている“日本画の保守本流”という自負があるからこそ新たな挑戦ができるのだそうです。それは「新たな挑戦は決して伝統を壊すことではなく、日本画本来の素晴らしさを世界中に人々に伝えることに繋がるのだ」という信念を強く感じさせてくれるお話でした
最後に千住先生のこれから活動をいくつかご紹介します。
5/29まで福岡アジア美術館で「千住博展」が開催されています。大徳寺聚光院別院の襖絵全77枚を鑑賞できる初めての機会だそうです。
9月には「愛・地球博」のフィナーレイベントのアートディレクターをされるそうです。あっと驚く企画だそうですが、こちらはまだ公開はされていないみたいです。乞うご期待。
それと、「千住博美術の授業 絵を描く悦び」(光文社新書)は絶対のおすすめです。
京都造形芸術大学での講義を本にしたそうですが、ビジネスパースンが思わず膝をたたきなくなるような珠玉の言葉が一杯です。特にキャリア論に関心のある方は是非お読みください。
講師紹介:https://www.sekigaku.net/member/detail.asp?NO=1&ID=248
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