夕学レポート
2006年11月06日
「資産インフレ時代の運用哲学」 藤巻健史さん
藤巻健史さんの弟さんで夕学にも登壇していただいたことがある藤巻幸夫さんが、鈴木敏文会長に請われて、IYグループの衣料品部門大改革に奮闘中であることはよく知られたところです。実は、お兄さんである健史さんが、それに一役買うべく、自らCMモデルに志願したという逸話があるそうです。破れをガムテープで修繕した紙袋を両手に提げて、さえない姿で歩く健史氏が、イトーヨーカ堂の服を着たとたんにファッショナブルに変身していくという案で、モデルのみならず企画も健史氏が考案したものとか。話題沸騰間違いなしであったであろう、このCM案、残念なことに幸夫氏によって「丁重にお断りをされた」とのことですが、そこは仲の良いフジマキ兄弟。CMはかないませんでしたが、健史氏をモデルにするという案は実現しました。
夕学五十講に現れた藤巻健史氏は、ロンドンストライプの紺のスーツに薄紅ストライプのクレリックシャツ。ネクタイも見事にコーディネイトされた鮮やかな赤色というオシャレな装いでした。一式を、幸夫氏がイトーヨーカ堂商品からコーディネイトし「全部で4万800円也!!」とのこと。
会場は一気にリラックスした雰囲気に変わり、「つかみはOK」とばかりに講演ははじまりました。
藤巻さんの主張を一言でいうと「日本経済は資産インフレがはじまろうとしている。だからこそ、長期固定で借金をしてでも、土地や資産を買うべきだ。それが5年先をみた資産運用哲学であり、私自身が実践している資産運用方法である」ということです。
講演では、この主張の根拠となる持論について、持ち前の早口で流れるように説明してくれました。特に、バブルとは何だったのかという復習の中で解説してくれた「フロー(物価や収入)の動きとストック(資産価格)の動きは必ずしも連動はしない」という事実は印象に残りました。
バブルの本質とは、資産価格の上昇と消費者物価の安定が同時に起きていたことだそうです。つまり、すべてのモノの値段が上がる「インフレ」ではなく、資産価格だけがあがる「資産インフレ」だったということです。フロー(物価や収入)の動きとストック(資産価格)の動きは必ずしも連動はしないにもかかわらす、フローのデータを根拠にストックの動きを予想することは必ずしも正しい行為ではない。逆の動きが起きておかしくはないというのが藤巻さんの考えです。
この数年はデフレ論が花盛りでした。すべてのモノの値段が下がるデフレ経済下の資産運用は、できるだけ借金をしないこと、可能な限り現金を持つことがなによりのリスクヘッジです。しかし藤巻説に立つと、たとえデフレであろうとも、資産(土地や株式)の値段が上がるのならば、そこに投資をすべきだ。という逆説もあり得ることになります。
藤巻さんは、「いまこそ、その時代だ」と自信満々に主張されました。
私は、金融はズブの素人なので、藤巻説が正しいのかどうかを論評するは出来ませんが、講演を聴きながら、自分が、数年前にマンションを買い換えた時のことを思い出しておりました。二つの不動産業者がそれぞれに「いち押し」ですすめる二つの物件で迷った時に、意思決定の決め手になったのは「実は私もこのマンションに住んでるんです」という営業マンのひと言でした。
「実践をしている人間の言うことが一番説得力がある」
自分の買い換えが、買い時・売り時に適合していたかどうかは別として、改めてそのことに気づいた次第です。
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